もう「Google Glass」には誰も関心を寄せない? 急速に萎んだ開発者の意欲
米グーグルが2012年に発表し、今も様々な議論を起こしている眼鏡型ウエアラブル端末「グーグル・グラス(Google Glass)」は、急速に開発者の支持を失いつつあり、この状況が続けば消費者市場で成功できない恐れがあると、英ロイター通信や米ウォールストリート・ジャーナルなどが伝えている。
「おたく」の雰囲気がするニッチな製品
グーグル・グラスはかつて、スマートフォンに次ぐ次世代の情報端末と注目を浴びた。
だが、ここに来て多くの開発者が対応アプリの開発を断念しており、スマートウォッチなどのほかのウエアラブル端末に関心を寄せつつあるという。
例えば、米ツイッターは1カ月前にグーグル・グラス用アプリの開発を中止した。
写真/ビデオ共有アプリ「パス(Path)」は他のウエアラブル端末向けアプリの開発に注力することを決めた。スポーツ番組向けサービスの「スーズ(Thuuz)」もグーグル・グラス用アプリの開発を中止したという。
それは、主に以下の3つの理由による。
(1)いまだ価格が1500ドル(約17万円)と高額であること
(2)プライバシー侵害への懸念から社会に受け入れられていないこと
(3)この2つが要因となって、消費者のユーザーがあまりいないこと
また米IDCのアナリストは、これらに加え、「おたく」のような雰囲気がグーグル・グラスをニッチなものにしていると指摘している。
ウォールストリート・ジャーナルによると、結局のところ開発者は多くのユーザーがいるプラットフォームに集まるという。
グーグルは、すでに数万人がこの端末の早期導入プログラムに参加していると説明しているが、ロイター通信は、あるゲームアプリ開発会社幹部の話しとして、2億台程度の販売実績がなくては、市場が存在するとは言えないと伝えている。
一向に発売されない一般消費者向けモデル
グーグル・グラスは現在、「エクスプローラー・プログラム」と呼ばれる早期導入プログラムの参加者を対象に販売されている。同社は、1500ドル支払ってプログラムに参加した人を「グラス・エクスプローラー(探検者)」と呼び、追加料金なしで改良モデルを提供するなどして、意見を募っている。
今年はこのプログラムの募集枠を広げ、期間限定で一般販売も行ったが、まだ本格的な消費者向けモデルの発売には至っていない。同社共同創業者のセルゲイ・ブリン氏はかねて2014年に一般販売が始まると述べていたが、現時点で、最も有力な発売時期は来年と見られている。
そうした中、開発者は、グーグル・グラス向けアプリの開発プロジェクトを一時中断したり、廃止したりしている。ロイターが取材した16社の企業のうち、9社がすでに開発を断念した。さらに3社は消費者向けプロジェクトから法人向けプロジェクトに切り替えたという。
グーグル・グラスは業務用などの特定用途向けの端末として成功できる可能性があるが、近い将来、消費者市場で成功できる見込みは薄いと、多くの開発者は考えているという。
法人市場に活路見いだせるか?
一方で、グーグルはこの端末を法人市場に売り込もうとしている。同社は今年、法人の採用促進を狙ったプログラム「Glass at Work」を開始した。これにより、現在は米ボーイングや、ヤム・ブランズ傘下のタコベルなどで試験運用が始まっている。
ロイターによると、このほか米国の19の病院では外科医が装着するコンピューターとしてグーグル・グラスが使われているという。
消費者向けグーグル・グラスのアプリ開発企業に対しては、ベンチャーキャピタルが投資を取りやめるという事例も少なくないという。すでに多くの新興企業は、事業閉鎖したか、法人向けアプリ、あるいはほかのウエアラブル端末向けアプリへと事業転換したとロイターは伝えている。
(JBpress:2014年11月18日号に掲載)