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茂野海人、出場停止明け→日本代表復帰への第一歩。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
午後練習後は大勢の記者に囲まれた(筆者撮影)。

 走っていた。茂野海人が走っていた。

 3月6日、東京・辰巳の森ラグビー練習場。日本代表を下支えするナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)の「2017年度第7回合宿」2日目の練習が公開される。

 現在スーパーラグビー(国際リーグ)の海外遠征中であるサンウルブズの国内残留組、前年の国内トップリーグなどでのプレーぶりが認められた代表候補生などが、実戦練習の合間の持久力トレーニングに取り組んでいる。息を上げる。その隊列には、前年のトップリーグで出場機会がなかった茂野もいた。

 以下、午前練習後の単独取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――このステージに、戻ってこられました。

「ありがたいです。試合にも出ていないのにこうして呼んでもらえて」

――このキャンプでの目標は。

「目標というか、とりあえず目の前のことをひとつひとつやりながら、結果的に代表とかに復帰できるようにとは思っています」

 2015年にニュージーランドへ留学し、オークランド代表としてITMカップ(同国の地域代表選手権)に出場。攻撃の起点となるスクラムハーフとして強いパスと強気のプレー選択が評価され、2016年には日本代表デビューを飾った。

 しかし、そのシーズン終了後の人生選択が辛苦を呼んだ。

 2016年度が終了したのち、茂野はそれまで社員選手として在籍していたNECを退団。トヨタ自動車へ移籍するが、前所属先から新天地へのリリースレター(移籍承諾書)が発行されず。当時はリリースレターがない場合は移籍後1年間、公式戦でプレーできないというルールがあった。2017年度の茂野が「試合にも出ていない」のは、そのためだった。

 プレーが叶ったのは、11月12日におこなわれたスーパーラグビー(国際リーグ)のレベルズとの国際試合(愛知・豊田スタジアムで36―21と勝利)や練習試合など、トップリーグと無関係のゲームのみだった。

 それでも茂野は、昨季終盤に「いいプレーをしていたら、(代表へは)自然と呼ばれると思います。2018年のトップリーグ。しっかりと試合出でてやるべきことをやって、2019年に出られるように頑張るだけです」と話していた。視線の先には、2019年のワールドカップ日本大会での日本代表入りがあるだろう(参考=公式戦出場停止中の茂野海人はいま、何を思っているのか。【ラグビー旬な一問一答】)。

――試合に出ていない間、日本代表の試合などはどうご覧になっていましたか。

「試合には出たいなと思いましたし、またああいうところへ出たいな、と」

――現在3シーズン目を迎えているサンウルブズには、スクラムハーフが3選手います。

「(選ばれた選手に)怪我がないことが一番だと思うので、プレーを見ていいところは吸収しながら、自分ではこうできるんじゃないかな…ということを見て考えながら、という感じですね」

――雌伏期間、日本代表のジェイミー・ジョセフヘッドコーチとのコミュニケーションは。

「いや、まったくです。(今回も)ジェイミーが選んでいるのか、堀川さん(隆延=NDSヘッドコーチ)が選んでいるのかなどは、僕の知るところではないので何とも言えないです。まだまだ、呼んでもらえていること自体がありがたいというところ(状況)。しっかりやっていくだけです」

――それでも、選出が叶った。以前伺った「いいプレーをしていたら、(代表へは)自然と呼ばれる」という言葉が思い出されます。

「いえいえ、まだ全然です。去年のサンウルブズのシーズンが終わった頃よりも、体重は6キロ、増えています。重さは上がったけど、その分、フィットネスは…。きょうはしんどかったですけど、徐々に…」

 NDSのメンバーは4月にニュージーランド遠征をおこなう。現地ではスーパーラグビーのクラブのアカデミーなどと対外試合を組む見通しだ。茂野にとっては、そこがアピールの場となろう。フィットネス練習が多い8日までのNDSキャンプで、状態を上げたい。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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