新型コロナワクチン接種で後遺症が4割減少 国内外の研究結果が出そろう
新型コロナワクチンは国際的に広く接種されてきました。以前ほど高い感染予防効果が持続するわけではありませんが、重症化予防効果はしばらく維持されるため、半年~1年程度接種していない場合、追加の接種がすすめられます。また、感染前にワクチンを接種することだけでなく、後遺症発症後にワクチンを接種することで、症状を軽減するというデータもあります。
新型コロナ感染後の後遺症
新型コロナに感染した後、咳や倦怠感などの罹患後症状(後遺症)が続くことがあります。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によると、もっとも新しいデータでは感染者の16%が12か月を超えて症状が持続していると報告しています(1)。
ウイルスの断片が体内に留まって、それが薪(まき)の燃えさしのようにくすぶっている状態などが考えられています(2、3)(図1)。
症状は多彩で、疲労感・倦怠感、咳・痰、息切れ、胸痛、動悸、脱毛、集中力低下(ブレインフォグ)、頭痛、抑うつ、味覚・嗅覚障害、下痢、不眠などさまざまです。
特に、入院を要するような中等症以上の場合、後遺症が月単位以上で続くことがあります(4)(図2)。実際に私の患者さんでも、感染後半年が経過しているものの、通勤電車で咳が出ると悩んでいる人もいます。
感染前にワクチンを接種する意義
さて、後遺症に関して過去発表された複数の研究結果を統合したデータがJAMA Internal Medicineというトップジャーナルで発表されています(5)。
新型コロナ感染後、何らかの後遺症症状が3か月以上続いている約86万人のデータを解析したものです。
これによると、女性、高齢者、喫煙者、肥満、入院を要した新型コロナ、喘息や糖尿病などの基礎疾患の存在が後遺症のリスクを増加させることが示されています。
この中で、新型コロナワクチン接種者では感染後の後遺症リスクが43%減少していたことが確認されています(図3)。
また、厚生労働省研究班においても、新型コロナ感染前にワクチンを接種していた人は、未接種者と比べて後遺症の割合が約25~55%少ないことが示されています。このデータは、国内では最も大規模なものとなります。
後遺症を発症した人に対するワクチン接種
新型コロナワクチンを接種すると、体内の炎症の引き金になる「サイトカイン」という物質が暴れくくなるとされています。
新型コロナの後遺症を発症した人に対して新型コロナワクチンを接種する研究がすすめられています。体内に残存したウイルスタンパクに効果的にはたらくのではないかというロジックです。
先日、後遺症を発症した83人の被験者において、新型コロナワクチンを接種することで後遺症の症状が有意に軽減したというデータが報告されました(6)(図4)。
ただ、後遺症の治療としてのワクチン接種の研究は被験者数が少なく、強いエビデンスがあるとは言えないため、もう少しデータの蓄積を待つ必要があります。
まとめ
現在新型コロナ病棟に入院されてくる患者さんの中には、ワクチン未接種あるいはワクチン接種を途中でやめてしまった人も多数おられます。
高齢者、基礎疾患がある方、肥満の方などは新型コロナ肺炎を発症すると重症化リスクが高いため、9月20日から始まる「秋開始接種」でXBB.1.5対応1価ワクチンの接種を検討ください。
(参考)
(1) Montoy J, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2023; 72(32): 859-865.
(2) Peluso MJ, et al. Trends Immunol. 2022; 43(4): 268-270.
(3) Marshall GD Jr. Asia Pac Allergy. 2023; 13(2): 77-84.
(4) Global Burden of Disease Long COVID Collaborators. JAMA 2022; 328: 1604.
(5) Tsampasian V, et al. JAMA Intern Med. 2023; 183(6): 566-580.
(6) Nayyerabadi M, et al. Int J Infect Dis. 2023, DOI: 10.1016/j.ijid.2023.09.006.