幾度の困難を乗り越え、ウジエスーパーのエコ-ガニック。低炭素杯2014年「環境大臣賞グランプリ受賞」
小売り業界における食料ロス・廃棄取り込み
平成20年のリサイクル法の改正で、食品小売りにおける廃棄量リサイクル率は45%と制定された。とはいえ、これをクリアするのは非常に難しく、地方のスーパーにおいてリサイクル率をみると10%程度、平成25年度の食品小売りにおける発生する廃棄量を見ると、25年度は、むしろ1%増加している。
廃棄の問題は、今後、環境問題、倫理観、そして経済的にも避けては通れないと言われている。その一方、現状、なかなか廃棄量を減らし、その上、リサイクルすることは難しい。国の制定した45%という数字を達成するには並大抵ではないのだ。そんななか、リサイクル率64%を達成したスーパーが宮城県にある。その名は、ウジエスーパー。昨年、見事、低炭素杯2014年、環境大臣賞グランプリを受賞した。
そこで今回、ウジエスーパーの吉田芳弘さん、ウジエクリーンサービスの菅原亜希子さんにスカイプでお話を伺うことになった。
写真が下手でごめんなさい・・・
''食品廃棄率45%にたちはだかる法の壁'''
吉田芳弘さん
「地域のスーパーでリサイクル率は、通常10%しか満たないのが現状です。これまで目の前のごみがなくなれば良しとされ、魚のあら、食肉の脂分、天ぷらの廃油は、専門業者に買い取って頂くことが当たり前だったのです、この状態のままで本当に良いのか、考えあぐねました。しかしその一方で、リサイクル法、つまり国が提示した45%を達成するには、仕組み・企業努力・リサイクルシステムがないと不可能な数字でもあったのです。何とか、経営効率を踏まえ、一石一鳥ではなく、一石二鳥、いや一石三鳥にならないといけないと思ったのです」
この考えのきっかけとなったのが、平成18年3月1日 障害者特例子会社「ウジエクリーニングサービス(民間企業)」を始められたことが大きい。
「その当時、まだ地産池消、6次産業、農工商連携などと言った言葉はなかったのですが、ローカルな農村地帯で、疲弊していく地域を何とか活性化できないかと思いました」
その結果
ウジエクリーニングサービスの事業として
・障害者雇用
・リサイクル
・新しい価値を作る。
を盛り込んだ。
つまり
エコ プラス オーガニック合わせたて「エコオーガニック」
ウジエスーパーの独自にリサイクルループを考えられたのである。
とはいえ、法的な問題が立ちはだかった。
廃棄物への移動問題
廃棄物には一般廃棄物と産業廃棄物の2種類があり、食品小売業の廃棄物は一般廃棄物に属するとのこと。
「一般廃棄物は、市町村が管轄しております。廃掃法による法的規制があり、市町村をまたがって廃棄物を収集運搬することが出来なかったのです。まずは許可を取得し細々と登米市と栗原市でリサイクルを始めました」
ウジエスーパーは、宮城県内に30店舗あり、複数の市・町に出店している。一般廃棄物の法的規制により、登米市内にある自社所有の肥料工場 1か所にまとめることが出来ない。当然、45%以上クリアすることは、出来ない。
宮城県初の食品循環資源の再生利用計画の認定
しかし、その後、大きな転機が訪れる。
菅原さんの努力の甲斐もあり、ようやく平成22年10月、食品循環資源の再生利用計画の認定。つまり農林水産省、環境省の大臣の許可がおり、市町村をまたいで収集運搬が可能となったのだ。これにより一つの肥料工場に食品廃棄物を集めることができるようになった。これは、宮城県で初めての事である。
機械導入、しかしそこでも新たな問題
さていよいよ肥料工場の機械を導入したのが2010年2月。
半年もたたないうちに更なる試練が訪れる。
その年の夏、機械製造会社の民事再生、つまり倒産したのだ。
肥料を作るに際し、酸が付着するため、機械はさびやすく、ステンレスで出来ている。とはいえ、多額で購入した機械のメンテナンスは必要不可欠なのである。製造会社が倒産したことで、メンテナンスをしてもらえない。機械を設計した人などを探し、交渉し、東奔西走されたと言う。
次に問題となったのが菌床である。
既に、競売にかけられていたのである。
なんとか所有権を落とし、特許を取得し、守ったのである。
こうしてようやく肥料を作る環境が整ったのである。
'一日で廃棄物を十分の一の肥料にする 「無限」誕生
さて肥料について
吉田芳弘さん
「工場では、これまでにない方法をとっています。まず類まれな菌で、ある条件を整わせることで強制発酵させ、これまで1~2か月かけて完熟発酵させ肥料にしていたものを一日で、しかも廃棄物を十分の一の肥料にすることが可能となりました。食品スーパーは、毎日のように食品廃棄物が出ます。その一方で、従来だと1~2か月の熟成する期間が必要で時間をかけないと肥料に出来なかったのです。つまり長期廃棄物を置くことは、臭いの問題も出ます。しかし一日で肥料を作ることが可能となり、肥料工場は市内にあるのですが、臭いの問題も今のところ苦情はありません。スーパーは、365日営業のため、毎日、おのずと出る食品廃棄、それと共に365日、肥料が生まれ、このことから「無限」と名付けました」
他社には真似できない水平展開しにくいリサイクルと言えよう。
そして11年の震災。
ご承知の通り、宮城県でも被害が大きく、ウジエスーパーにおいても、大変な状況に直面した。しかしこの活動をあきらめず、ようやく製造することが実現した。
有機質肥料「無限」
現在、有機質肥料「無限」は今、地元農家さんが使用し、米や野菜の生産、そして地元のお酒や味噌となって販売されている。
平成21年「無限のぼり米」を販売。ウジエスーパーの本社はコメどころの登米市にあることから、昔から献上米の産地であった。そのことから「登る米」という意味を込めて名付けられた。農薬や化学肥料の使用を極力抑えた環境にも優しい栽培方法で育てられている。
毎年、秋になると店頭にて販売されている。
この他に、純米大吟醸原酒「恋のぼり」十割麹味噌「夢のぼり」がある。
無限の肥料を使って、カモミールのスキンケア「花密恋」が出来上がり、ウジエスーパーでも販売されている。
ウジエスーパーのこの取組みは、食品リサイクルにとどまらず、地域を生かした商品の提案、健常者と障害者が一緒に社会生活をともにするノーマライゼーションの実現も同時になされた。スカイプでのやりとり、送っていただいた沢山の資料を通し、困難に立ち向かい、あきらめない熱意と姿勢があってこそ実現したと痛感した。