若者が集まらないと悩む担当者がすべき3つのこと。
若者支援分野において、対象となる若者と接点を持つために必要な行動を「アウトリーチ」と表現する。周縁(アウト)に届く(リーチ)することだが、これが非常に難しい。
行政、民間に関わらず、毎年、「プログラムを作ったのですが誰も集まりません」という相談を受ける。プログラム内容についてよさそうなものもあれば、これはどうだろうかといものもある。しかし、そもそもプログラムが存在する情報が当人に伝わっていない、または、伝わっていても参加するほどの訴求力を持たないのだろう。
いつも言われて言葉に詰まるのが「プログラムに誰も参加されないということは、やはりやる気やモチベーションがないということなんですよね」と、改善余地が過分にあるにもかかわらず、いきない問題が個人の内面に矮小化されることだ。
先日公表した調査(ダウンロードフリー)から、無業の若者と出会うにあたり、当事者側が実際にどう情報にあたっているのかがわかった。アウトリーチの具体的手段として何が必要なのか、3つのポイントがある。
1. メディアには積極的に露出する
官民を問わず、過度にメディア露出を避ける機関はあるが、就労や就学に向けて行動をする場合に集める情報として本、新聞、テレビなどをあげている若者が40.7%存在する。インターネット検索が24.6%なので、思った以上に紙媒体をアテにしていることがわかる。同分野のNPO団体を見ても、プロモーション/ソーシャルプロモーションを積極的に行っているところと、ほとんどしていないところにはっきりわかれる。広報担当をおいているところは稀かもしれないが、「出会う」ことが難しい以上、アウトリーチ策としてメディア露出はプログラム内容や支援の質をあげること以上に力を入れなければならない。
不登校、引きこもり、中退経験者など社会でつまずいた方の支援をしているNPO法人キズキのように、徹底的にウェブマーケティングを行い、実践しているケースもあるが、「みんなスマホを使うからホームページは必要だよね」くらいの気持ちでウェブサイトを設置しているだけでは、人通りのない通りに自動販売機を設置して電気代を使い続けるようなものだ。
2. 周囲の関係者にアプローチする
保護者や家族、友人などに相談をすることから始める若者は39.0%と多く、まずは信頼できる関係者によい情報がないかをたずねている。若者支援分野ではよく関係機関のネットワークの重要性が語られるが、それは若者のニーズに関係機関の連携によりこたえていくことが理念であり、そのなかに「アウトリーチ」も含まれているが、積極的に出会いの機会を作り、確度を高めているわけではない。
ただ、保護者向けのセミナーなどはかなり頻繁に開催されており、その意味から周辺関係者へのアプローチを積極的に行っている機関はかなりある。なかなか若者に直接情報を届けることが難しい場合で、使えるリソースが限られているのであれば、若者ではなく周辺の関係者にそのリソースを選択と集中を持って投下するという戦略もありえる。
3. 外観を充実させる
今回の調査結果でもっとも驚きであり、勉強不足/経験不足であったのは、若年無業者が就労や就学に向けてアクションを起こすとき、実にその半数(50.1%)が「建物を見に行く」という行動をとっていたことだ。建物の近くまで行き、そのプログラムや施設がどのような場所にあり、本当に相談しやすい環境なのかを確認しにいっている。
新居を探す場合も、通常は徹底的に物件を見て回るが、それと同じくらい慎重に慎重を重ねて相談に行く。数ヶ月から数年も悩み、迷っていたのであれば、「よいプログラムなので参加しよう」とはいかない。正直、外観があまりにもひどいということは別にして、実際に建物の近くまで来てどうしようか考えている若者がここまで多いとは予想もしていなかった。その意味で当調査はとても参考になった。
当該調査の事業検討委員のひとりである株式会社アムの岡本佳美さんの提言も、ここに触れられているので引用紹介する。