【現代病?】優柔不断な人が増えている理由 ~行動経済学の視点で考えてみた~
■「優柔不断な人」が、優柔不断であるワケ
「これをやれば確実にうまくいくのか?」
「なんか決め手に欠けるんだよな……」
「理由はないけど、なんか違う気がする」
最近、優柔不断な人が増えている。
優柔不断とは、グズグズして、なかなか物事を決められないことだ。決断力が乏しいことを指す。アレヤコレヤと考えてしまい、「もう少し環境が整ったら」「もう少し心の準備ができてから」と、何事もすぐに決断できず先送りする人が「優柔不断な人」だ。
行動経済学には「確実性効果」という言葉がある。ある現象が起こる確率が0%もしくは100%に近づくほど敏感に反応する心理作用のことだ。
ある社長と部下のやり取りを読んでもらいたい。
「これをやれば確実にうまくいくのか?」
「確実にうまくいくか、と言われればそうは言い切れません。しかし3ヵ月かけて調査したわけですから選択肢は限られています」
「なんか決め手に欠けるんだよな……」
「社長、問題は山積みです。このまま経営改革を先送りすると、さらに深刻な状況になっていきます」
「君たちのアイデアはよくわかった。よく練り上げられているとは思う。しかし理由はないけど、なんか違う気がする」
「社長……」
これでは部下はやる気をなくすだろう。
このように「確実性効果」とは期待通りになる確率が60%から80%になることよりも、80%から90%、もしくは90%から95%へと上げることのほうに執着する心理作用である。
確実性が高まれば高まるほど、実は行動するよりも確実性をアップさせたいという欲求が働いてしまうわけだ。
よって、優柔不断でなかなか意思決定できない人は、「100%正しい選択」「リスクゼロの決断」をしたがる。しかし「100%正しい選択」は現実的に存在しない。必ずどこかで妥協するより他ないのだ。しかしわかっていても「よりよい選択」があるに違いないと妄想を膨らませてしまうのは「確実性効果」が働いているせいだろう。
■優柔不断な人が陥る「選択のパラドックス」
マズいのは、迷ってばかりいて、吟味・評価する対象をどんどん増やしてしまう人だ。IT技術が発達した現在、情報は簡単に手に入るようになった。
選択肢をいくらでも増やせるから、いつまでも「より良い」選択肢を求め続けることができる。「悩む余地なし」という状態にはなかなか到達しない。まさに「確実性効果」というバイアスは、高度情報化社会が生みだした悪しき産物と言えるだろう。
そして選択肢を増やせば増やすほど、どの選択肢も選べなくなってくる現象を「選択のパラドックス」と言う。
超少子高齢化時代になり、多くの企業が社員教育に力を入れるようになった。わが社もそろそろ本腰を入れて教育に投資しようと決めたまではいいが、どんな研修機関、どんな教育ツール、どんな講師がいいのかと悩み、情報収集に明け暮れる。しかしやればやるほど、よけいに決断できなくなっていく。
読書でも同じ。ダイエットでも同じ。どんな本を読めばいいのか、どんなダイエットが自分に合うのかと自問自答し、探してばかりいると次第に意思決定できなくなっていく。
「近くに塩ラーメンの美味しい店があるよ」
「あ、それだったら私、味噌ラーメンの美味しい店も知ってるよ」
「塩ラーメンも美味しそうだが、味噌ラーメンもすごく旨そう。うーん、悩む」
「ネットで検索すると、まだ他にいい店があるかも」
「あ、ここに醤油ラーメン専門の店もあるよ。醤油も捨てがたいよねェ……」
このように高度情報化時代になり、手軽に情報収集ができるようになって、優柔不断な人が増えている。多くの人の決断力が落ちているのだ。
情報はあればあるほど迷う。そして後悔する確率もアップする(選択しなかった事柄のほうが後になってよく見えるため、後悔する確率が上がるのだ)。
「優柔不断な人」が情報収集を始めると、止まらない。意思決定するのに情報収集は重要だ。しかし一定の期限を設定し、その期限が来たら強制終了させるようにしよう。そうでないと頭が「根腐れ」して、優柔不断の度合が高まっていく。優柔不断は現代病だ。