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ジャッキー・チェン氏「中国共産党員になりたい!」、されど世間はささやく「あなたは審査に通らない」

西岡省二ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長
「中国共産党員になりたい」と語るジャッキー・チェン氏=中国中央テレビのHPより

 香港の映画俳優ジャッキー・チェン(中国名・成龍)氏(67)が最近、「(中国共産党の)党員になりたい!」と表明し、中国のインターネット上で話題になっている。チェン氏は近年、親中的な発言が目立つため、当局に近いメディアは歓迎する論調。ただ中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」上の書き込みには「私生活が乱れている」「ふさわしくない」「あなたは米国人ではないのか?」など、受け入れに否定的な意見が続出している。

◇「共産党は本当に素晴らしい」

 中国映画家協会が今月8日、ある座談会を北京で開いた。中国共産党創立100周年式典(7月1日)で習近平(Xi Jinping)総書記(国家主席)が読み上げた「重要講話」に関する学習会だった。

 その席で、同協会副主席を務めるチェン氏が次のように発言した。

「私はよく自分自身に言い聞かせるのですが、外国ではいつも『中国人であること』を誇りに思っています。党員であるみなさんがうらやましいですし、共産党は本当に素晴らしいと感じます。党が言っていること、約束していることは、100年ではなく数十年で必ず実現します。党員になりたい!」

 中国メディアの多くがこの発言を積極的に紹介している。中でも党機関紙・人民日報系「環球時報」の英語版は、この発言に、専門家の意見として次のような声を添えている。「香港のエリートたちは、中国共産党に対する客観的かつ合理的な理解を深めており、香港の立場を反省し、将来の発展を模索している」

 だが、微博上の書き込みには、一部に「チェン氏を支持する」という声がある一方、批判的にとらえる声が目立つ。「ふさわしくない」「あなたは米国人ではないのか?」「彼を入党させるな。党の純潔さと代表性をぶち壊してしまう」「審査が通るはずはない」……。

 特にチェン氏がかつて香港の有名女優とのスキャンダルなどで世間を騒がせたこともあり、「私生活が乱れすぎている」「もし入党させれば、必然的に歪風邪気(不健全な風潮とよこしまな気風)を助長する」など、違和感を表明する意見も多数みられる。

◇目立つ親中ぶり

 チェン氏は1954年、香港に生まれ、1961年から約10年間、中国戯劇学院で京劇や武術を学んで1971年に映画界に入った。「命がけのアクション」で観衆を魅了し、ハリウッドでも活躍して香港を代表するスターとなった。

 政治的な動きも活発だった。

 中国への返還前の香港では、芸能界に暴力団が暗躍し、有名俳優らが映画出演を強要させられるなどの事件が起きていた。チェン氏はこの事態を憂慮し、他の俳優や映画監督らとともに1992年1月、映画関係者の保護と暴力団追放を訴えるデモに参加した。返還後の1999年には、映画関係者ら約2000人の先頭に立って、海賊版VCD(ビデオコンパクトディスク)の取り締まりを求めるデモを率いた。

 その一方、近年は親中ぶりが目立っている。

 香港での反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」が持ち上がった際、チェン氏は中国人民政治協商会議(政協=国政助言機関)委員として、その旗振り役になっていた。昨年5月下旬には香港の芸能関係者や関連団体とともに「国家の安全の穴を塞ぎ、自由な創作活動と業界の発展を保障するものだ」として法制定を支持する声明を発表し、署名の先頭に名前を記した。

 こうした動きに対し、香港の民主派からは「香港の芸能人は、中国に反対すると中国の仕事がすべてなくなってしまう」「芸能人のほとんどは中国寄りの姿勢を表明しなければならない」と落胆する声が上がっていた。

ジャーナリスト/KOREA WAVE編集長

大阪市出身。毎日新聞入社後、大阪社会部、政治部、中国総局長などを経て、外信部デスクを最後に2020年独立。大阪社会部時代には府警捜査4課担当として暴力団や総会屋を取材。計9年の北京勤務時には北朝鮮関連の独自報道を手掛ける一方、中国政治・社会のトピックを現場で取材した。「音楽」という切り口で北朝鮮の独裁体制に迫った著書「『音楽狂』の国 将軍様とそのミュージシャンたち」は小学館ノンフィクション大賞最終候補作。

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