ドワンゴ対FC2の侵害訴訟においてサーバーが海外にあっても日本の特許権の効力は及ぶとの知財高裁判決
サーバーが海外にあることを大きな理由として日本の特許権が及ばないとした、(2022年)3月のドワンゴ対FC2の特許権侵害訴訟の地裁判決(関連記事1、関連記事2、関連記事3)は特許業界およびネット業界に衝撃を与えました。理屈から言えばそういう解釈になってもしょうがないのですが、実質的には、ネット関連発明で日本でどんなに強力な特許権を取得していても、サーバーを海外におけば回避できると言っているの等しいからです。ついにパンドラの箱が開いてしまったかという印象でした。
しかし、本日付のドワンゴのニュースリリースによると、7月20日付けで「特許発明の実施行為につき、形式的にはその全ての要素が日本国の領域内で完結するものでないとしても、実質的かつ全体的にみて、それが日本国の領域内で行われたと評価し得るものであれば、日本の特許権の効力を及ぼし得ると判断」した知財高裁の判決があったそうです。判決文は現時点ではまだ公開されていません(公開されしだい改めて解説記事を書く予定です)。
なお、注意して頂きたいのですが、この知財高裁判決は、冒頭の地裁判決の控訴審の判決ではありません(そんなに早く控訴審が終わるわけがありません)。これは、同じドワンゴ対FCによるものですが、2018年に地裁判決が出ていた別の特許権侵害訴訟の控訴審です(関連記事)。こちらの訴訟でも当然に海外サーバーでの実施に日本の特許権は及ぶかという点(域外適用)は争点になっていたのですが、充足論の段階において、FC2のシステムの構成がドワンゴの特許権の技術的範囲に属さないという結論が出たため、域外適用について議論するまでもなく、ドワンゴ敗訴という判決になっていました。
要するに、今回判決があった控訴審では、ドワンゴはこの充足論の問題と域外適用の問題の2つのハードルを越えられたことになります。
冒頭で触れた3月に地裁判決があった方の2回目の訴訟も控訴されていますので、同様の結論になる可能性もあります。詳細は判決文を見ないと何とも言えないですが、「実質的かつ全体的にみて、それが日本国の領域内で行われたと評価し得る」(たぶん、日本のユーザーが発明の効果を享受できるということだと思いますが)のであれば日本の特許権の効力は及ぶというのは妥当な考え方のように思えます。