ソウルの景福宮で2度のスプレー落書き騒動 好きな歌手の名前を…「若者に厳罰を」「警備ザル」の大批判
韓国旅行に行ったことのある方なら、多くの方が訪れるであろう景福宮(キョンボックン)。
重要な文化財でもあるこの地が現地若者による「スプレー落書き騒動」に見舞われている。現地メディア「eトゥデイ」は「韓国の文化財に対する無差別な損傷が相次ぐ中、警察は厳格に処罰する方針を打ち出した」と報じるなど、騒然とした雰囲気となっている。
事の発端は、12月15日夜だった。赤と青のスプレーで複数のメッセージが書かれていた。
「ウィルムプ・ティビー」
「映画は無料」
「聯合ニュース」は前者について「政府の取り締まりでサービスが終了した違法動画共有サイトを意味しているようであるため、報復性犯行や背後関係、具体的な関連性を確認する方針」 と報じた。
容疑者の模様はCCTV映像に収まっていた。暗い服を着た人物が景福宮の壁の前をうろついており、通行人が通り過ぎるとスプレーを取り出して落書きを始めた。その後、スマホで証拠写真を撮る姿も捉えられた。
12月17日の朝から、この落書きに対する修復作業が始まった。マイナス12度の気候のなか、文化財庁は化学薬品処理やレーザー洗浄など多様な方法で洗浄を行い、現地各メディアは「復旧には最低1週間かかる見込み」と報じた。なにせ重要な文化財だ。作業員たちは厳しい寒さのなか、手袋や帽子、耳栓を着用。鉄筋の構造物を建ててテントを張り、砂袋で固定して作業場を組み立てた。
しかし問題はこれで終わらない。作業最中の17日夜、その現場で再び落書き事件が起きたのだ。赤色のラッカースプレーで英語と韓国語が混在した落書きだった。
最初の犯行からわずか40時間後に別の落書きが発見されたのだ。
「Mutta チョ・ヒュイル※」
「TEEN TROUBLES」
と書かれていた。※カタカナ部分はハングル文字にて。
国内のインディーズロックアーティストの名前と2022年9月に発表された同アーティストのアルバム名だった。
12月18日、ソウル警察庁は「双方の事件の容疑者の身元がほぼ特定された」と発表した。初日は男女各1人、翌日は男1人で、容姿や落書きの内容・目的も異なるため、関連性は低いと判断。前者は文化財管理法違反の疑いの適用を検討中とし、後者は器物損壊の疑いで捜査が進められた。
結局、双方の事件の容疑者は19日までに身柄を拘束された。
まず、2件目の容疑者である20代の男性が自首した。定職に就いていないこの男性は、ファンとして歌手の音楽を宣伝したかったという動機で犯行を行ったと述べた。しかし自分のブログにこういった書き込みを行い、物議を醸している。
「ファン心からやった。申し訳ないと思っていない、ただのアートだ」。
最初の事件の容疑者の二人組(カップル)も相次いで逮捕された。まず19日午後7時8分に、17歳の男性容疑者を自宅で、 続いて16歳の女性容疑者も近隣の住宅で7時25分に逮捕。
二人は「違法な映像共有サイトに関する落書きをするとお金をもらえる」という知人の提案を受けて犯行に及んだと供述している。実際に落書きは男性のみが行い、女性は現場にいただけだという。
韓国メディアは「実刑有力」と報じる
韓国警察側は捜査中から「財物破損と文化財保護法違反の疑いで逮捕状を申請する」と厳しい姿勢を見せていた。現地メディア「SBS」は弁護士のコメントを引用し「実刑が宣告される可能性があり」と報じている。
韓国の文化財保護法第92条第1項は「指定文化財を損傷、窃取、隠匿するか、その他の方法で効用を害する者は3年以上の有期懲役に処する」と規定。実際に2017年9月、40代の男性が蔚山市蔚州郡彦陽邑城の城壁と周辺学校などに赤いスプレーで落書きを行った事件では、1審で懲役2年が宣告されている。
一方、文化財庁は今後、被告人に修復費用を請求する案も検討中だという。国内では「再発を防ぐために、10代であっても厳しい処罰を」という意見が出ているという。
警備態勢も批判の対象に
それらと同時に…同日の同場所での第2次犯行を防げなかったことに対し、政府管理部門や警察側の監視・警備の怠惰も指摘されている。
現場付近は防犯カメラがなく、容疑者の逮捕が難しいことを認識していたのであれば、少なくとも修復中は再犯や他の模倣犯の防止のために24時間監視するべきだったが、それもせずに2次犯行を防げなかった。
修理作業は基本的に石粉が少しも削れないように、文字一つに溶剤スポンジを人が数万回から数十万回ゆっくりと付けたり剥がしたりして修復する高度な作業。当然、2次犯罪が起きれば国庫支出のカネと時間が多くかかることなる。この点の責任追及もこれから行われていく見込みだ。