【岐阜/関】鬼の落としモノとは?「多々羅」の地名と鬼の関係に迫る
はらぺこライターの旅人間です。今回は岐阜県関市に鬼が落とした大きな石があると聞き、その場所まで探しに行ってみました。
関市と言えば、刃物の生産で知られる「世界三大刃物産地」の一つ。
そして到着したのは多々羅(たたら)という場所。
「たたら」と言えば、ジブリ映画『もののけ姫』で「たたら場」として、女性たちが武器(石火矢)の材料である鉄を作っていたシーンで登場していました。
バス停近くに案内があったので読んでみると…
「タタラとは、足で踏んで風を送る道具で、このタタラを用いて和鉄製錬法をタタラブキとして、略してタタラと呼んだ」「多々羅は鉱石に関係した言葉で、昔この地域に鉱山があったと思われる」と。
鬼伝説のある地には産鉄地や製鉄地が多いとされていますが、気になりますね。
では、「鬼が落とした大石」へ…
バス停のある県道沿いから大石は見えていましたが、近くで見ると本当に大きい。
伝説とは言え、こんな大きな石を…。
ところで、どんな伝説があるのか?
「鬼が落とした大石」の前には案内板もありますが、ここには「QRコードで読み取れるカード」が自由に取れるように設置されています。
ここでは「昔から伝わっている物語」が紹介されています。とっても丁寧で、きっちり管理されていて、地元愛を感じます。
ちなみに、スマホでQRコードを読み取ると「武儀町のむかし話」に♪
鬼が落とした大石の話
むかしむかし、武儀の山奥に一匹の鬼が住んでいたそうな。山には何日も雪が降り続き、食べ物がなく…おなかをすかせた鬼は、ふらふらと里へ下りて来ました。
ところが、空腹のあまり鬼は倒れてしまい、子供達にとお願いをしたのです。
「何か食べ物を持ってきてくれ」
子どもたちは、鬼がかわいそうになり家に帰り、わずかばかりの芋を持ち寄るが、鬼はあっという間に食べてしまいました。
そして、鬼はもっと食べ物をせがんだのだとか。
すると子供達が…
「食べ物を持ってきたら、おらたちの頼みも聞いてくれるか?」
「その腰についている、ピカピカしているモノをおくれ」と。
鬼は「この石は、わしのお守り。やるわけにはいかん」
「ただ、石の力を見せることはできるぞ」と。
それを聞いた子どもたちは、また家に帰り芋や栗を持って来ました。
そして、お腹いっぱいになった鬼は…
「さあ、この石の力を見せてやる」
と言って、石をつけたまま谷川を飛び越えます。手をたたいて喜ぶ子供達を見て「あの山から向こうの山までも飛べるぞ!」と。
御館野の山から、向かいの山をひとっ飛びに越えました。
その時、鬼は大切な石を落としてしまいます。
慌てた鬼は周囲の山を見廻しましたが、何処に落としたの分からず、鬼は泣き泣き山奥へ帰って行ったそうな。
それから、鬼の姿を見かけた人は一人もいないという。
そんな昔話が残っています。
この昔話に登場する鬼は、どちらかと言えば怖く悪い鬼のイメージではなく、とっても人間味があるように感じますね。
そして、この石の正体も気になります。何なんでしょうか。
最後に。製鉄と鬼の関係
鬼の伝説には、様々な解釈がありますが…
例えば、渡来人は高度な金属精錬技術を持ち、これに目を付けた都の勢力が兵を派遣し支配下に置いた話を正当化したもの。これが鬼退治の原型といった説があります。
逆に、高度な技術を持つ渡来人が集団で山賊化して鬼と呼ばれたという説も。
また製鉄の際には…
片足でたたらを踏むので、その片足は高温でボロボロに。片目で火の様子を見続けるので片目は視力が落ち、肌は赤く荒れ、その形相は鬼のように見えたとも…。
更に、鉱山のあるところに鬼伝説が多い理由として、鉱脈を秘密にし、近寄らせないために鬼の存在を作り上げた。また、閉鎖的で近隣住民から誤解を生じたとも。
もちろん、諸説様々。
いずれにせよ、製鉄と鬼の関係性は、とっても奥が深そうです。
鬼の大石
場所:岐阜県関市中之保多々羅
地図(外部リンク)