「水のノーベル賞」受賞の沖大幹教授。その受賞理由とは?
水のノーベル賞「ストックホルム水大賞」とは?
水のノーベル賞とも称される「ストックホルム水大賞」は、水に関する傑出した業績を称える国際的な賞。2024年、東京大学大学院工学系研究科の沖大幹教授(59)が受賞者に選ばれた。
この賞は、水の持続可能な利用、水資源管理、環境保護、衛生など、水に関する様々な分野で成果を上げた科学者、官僚、研究組織などに贈られる。
沖教授は、仮想水貿易やデジタル河川マッピング、水循環における人間活動の影響に関する研究によって、同賞を受賞。推薦委員会は、「水文学、気候変動、持続可能性に関する理解を大きく前進させた」と評価している。
水、気象、人間の活動の相互関係を明確に
沖教授の研究は、かつて水、気象、人間の活動が別々に考えられていた時代に革新をもたらした。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第1次評価報告書の模式図では、大気と陸地での水のやりとり(降雨や蒸発)は示されているが、川は示されていない。実際の地球の水の動きを表現したものではなかった。
「地球上のどこにどれくらい雨が降り、それがどれくらい蒸発し、どこへ流れていくのか。それらがどう変動していくのかが知りたかった」(沖教授)
世界の主要河川の流量をまとめ、大気、河川、海洋を結びつけた数値モデルを開発。水は循環する資源として議論すべきであり、水が空間的に偏在していることや時間的に偏在していることが水不足の主な原因であると指摘した。
さらに自然の水循環に、貯水池への貯留、灌漑取水など人間活動を組み込んだモデルを開発し、気候変動による水循環の変化、人の生活への影響を予測できるようにした。
こうした研究により、水、気象、人間の活動の相互関係が明確になり、統合的な気候変動対策が可能になっている。
会見で沖教授は「自然の法則と人間社会のしくみの両方を理解できるのが水の研究の面白さだ」と語った。
今後はモデルに人口分布データを織り込み、より影響のわかるものにしていきたいという。