石倉デジタル監の著作権侵害疑惑について
「石倉デジタル監、画像を無断使用 個人サイト、”不注意だった”」というニュースがありました。「個人ブログで有料画像素材のサンプルを無料で使っていたのに対して素材提供会社役員がツイッターで公然と質問した」という話です。
最初、透かしの入った画像を使用していたという話をツイッターで見て、電子透かしの話かと思いましたが、そうではなく、画像上に企業名が薄く書かれている方の「透かし」でした。現在、当該ブログはメンテ中になっていますが、過去の状態については、他のニュースサイト等で見られます。素材販売会社のURLや画像のID番号がそのまま入ったものまであり、いくらなんでもいい加減過ぎないかという印象です。
「デジタルは素人」の報道→報道は切り取りであり実はデジタルリテラシに富む凄い人とネット世論が移り始めたタイミングでの、この事件は正直残念です。官庁の事務方トップとしては、デジタル技術の細かい話の専門家である必要はなく、テクノロジーの社会への影響に関する大局感がある人がふさわしいと思いますが、その点での資質すら心配になってきました。
ところで、一般的に言って、ウェブサイトの画像素材の著作権侵害に関する裁判例のほとんどがおそらくは一般の方が想像するよりも厳しい判決になっています。
たとえば、2015年に、複数のウェブ素材提供会社が原告となり、法律事務所を被告とした裁判例があります(判決文)。いかにもよくありそうなウェブ画像素材(裁判資料)を購入なしに使用したという事件です。裁判所は、ウェブ制作者がそれなりの経験があることを根拠に、著作権侵害を十分に認識しながら複製等を行ったとして(過失だけではなく)未必の故意を認定しました。要は、著作権侵害を積極的に避ける注意義務があるということです。損害賠償金額は原告あたり最大でも20万円弱とそれほどでもなかったのですが、被告は法律事務所であることから、レピュテーション面のダメージは少なくなかったのではと思います。
今回の件が訴訟問題になることはおそらくないとは思いますが、ブログを閉鎖しても過去の侵害行為の損害賠償の責は負います。そして、多くの場合、「不注意だった」は正当な抗弁にはなりません。追記:なお、画像素材販売会社はツイッターで「利用規約違反」と指摘していますが、利用規約に従うことで著作物の利用を許諾する(著作権をライセンスする)という建て付けなので、実際には著作権侵害となる可能性大です。そして、故意の著作権侵害は少なくとも形式的には刑事罰対象です。