ゆず大福・団子・マーマレード…「廃棄果皮0(ゼロ)システム」で歴代初となる高校生が農林水産大臣賞受賞
2020年2月6日、第7回食品産業もったいない大賞の表彰式と、受賞者の事例発表会が東京都内の内幸町ホールで開催された。
7回目となる「食品産業もったいない大賞」は、食品産業の持続可能な発展を目指し、地球温暖化や省エネルギー対策、食品ロス削減などに取り組む組織や個人を広く発掘し、取り組み内容を世の中に広めることを目指している。
今回は、農林水産大臣賞1点、農林水産省食料産業局長賞3点、食品産業もったいない大賞審査委員会審査委員長賞5点が表彰された。
その中から、これまでの食品産業もったいない大賞で、高校生として初めての「農林水産大臣賞」を受賞した、石川県立翠星高等学校の発表内容を紹介したい。
農業の未来を変える「廃棄果皮0(ゼロ)システム」の構築と普及
2011年に、柚子(ゆず)の生産者が、ゆずの果皮の処分に困っていることをJA金沢市金沢柚子部会から聞き、ゆずマーマレードを製造・販売したことが、本プロジェクトのきっかけである。
果皮のうち、50%は食品加工会社に販売されていたが、残りの50%は廃棄されていた。だが、残り50%のうち、30%は可食部で、20%は加工すれば食べられることがわかった。
そこで、廃棄されていた50%の果皮を全て活用することで、柚子農家の収入増と後継者育成を目指し、本プロジェクトがスタートした。
柚子マーマレードの開発
2011年に開発した「ゆずマーマレード」は、2017年にJA金沢市金沢柚子部会で製造・販売し、飲食業者らに納品した。
柚子の生産者らも太鼓判を押した。
柚子のピール煮を開発、製造・販売
ゆずマーマレードに続いて、2013年、ピール煮を開発した。ピール煮は、果皮を砂糖で煮たもので、マーマレードよりも砂糖の含有量が低いが、製菓材料などに活用される。
開発したピール煮は、日本食品分析センターや石川県立大学で安全性を調べ、問題ないことが確認された。
その上で、2017年には「そのまま食べるピール煮」を開発、2018年には「金沢ゆず大福」のためのピール煮も開発した。
また、同じく2018年には、ピール煮を利用した「国造ゆず餡団子」を開発した。
食品だけでなく、アロマオイルの抽出にも成功した。
アロマデザイナーと共同で、「金沢ゆずキャンドル」や「金沢ゆず石鹸」を開発。
また、「加藤和紙」と共同で「ゆず和紙」なども開発した。
全国にも「廃棄果皮0(ゼロ)システム」を展開
石川県内だけでなく、地域おこし協力隊のネットワークを通して、36都府県に、この「廃棄果皮0(ゼロ)システム」を発信していった。
その結果、佐賀県の「河内晩柑」(かわちばんかん、文旦の一種)や、宮崎県の「へべす」(柑橘類の一種)、愛媛県の「甘夏」、埼玉県など、全国に同様のシステムを導入させていった。
年間460万円の経済効果と就農者1名増につなげた
本プロジェクトにより、ピール煮で年間240万円、アロマオイル年間220万円の収益が見込まれる。また、就農者も1名増加し、雇用につなげた。
今後は、廃棄の果皮をゼロにすることを目指していく。
また、柑橘類を生産する全国の生産地に「廃棄果皮0システム」を普及させていく。
翠星高等学校の発表を聴いて
筆者は、かつて広報責任者を務めていたセカンドハーベスト・ジャパンとして第一回食品産業もったいない大賞に応募し、農林水産省食料産業局長賞を受賞して以来、第二回以降も、毎回、食品産業もったいない大賞のプレゼンテーションを聴いてきた。
今回、農林水産大臣賞を受賞した、石川県の翠星高等学校の発表(20分間)は、これまでの70近くのプレゼンテーションの中でも突出するくらい、完成度が高かった。最初と最後の礼儀正しい挨拶、登壇者3人のきっちりとした役割分担、写真を多用してわかりやすく作ったパワーポイント、2011年からお世話になってきた生産者や関係者の方々の個人名を披露して感謝の意を示し、発表内容もほぼ暗記して、何度も何度も練習を繰り返し、当日の発表の場に臨んだことが、ビシビシと伝わってきた。
聴いている人たちも、真っ直ぐな気持ちと、迫力ある発表に、すさまじい刺激を受けたと思う。
今回登壇した3名の熱意と努力は素晴らしい。そして、長い間、それを支えてきた学校関係者の方々と、タッグを組んできた生産者や関係者の方々。
2011年からの9年間かけてのプロジェクトということで、おそらく、すでに卒業した生徒たちも貢献してきたと思われる。
すべての方に敬意を表したい。
全体を通して
毎回、全国的に知られていない優れた事例を掘り起こして下さっていて、主催者の公益財団法人食品等流通合理化促進機構はじめ、協賛者の農林水産省と後援の環境省と消費者庁には、とても感謝している。
今後とも、すでに知られている組織だけでなく、まだ知られていない宝を発掘し、広めて頂きたい。
第8回の発表を楽しみにしている。
注:発表者の内容に合わせ、「柚子」と「ゆず」の両方の表記を使っています。