仙太郎さんの大ぶりな「若あゆ」は、求肥と蜂蜜それぞれの甘味が活きた食べ応え
さて、端午の節句が終わると和菓子屋さんに姿を見せ始めるのが「鮎」。若鮎、登り鮎、稚鮎、香魚など名称はいくつかございますが、いずれも夏の始まりを告げる和菓子の一つ。
こちらの鮎。ことのはじまりは調布という、岡山県の銘菓のひとつでもある、カステラ生地で求肥を包む縦長のももしくは長方形の和菓子という説がございますが(実際お菓子の構造的には鮎も調布に分類されることも)、その調布が、鵜飼でも有名な京都や岐阜県、愛知県といった関西・東海地方を中心に広まり、かつては6月に解禁されていあ鮎釣りにあわせて販売されるようになりました。
今回ご紹介するのは京都の名店「仙太郎」さんの若あゆ。
17,8cmはありそうな大ぶりの鮎。漁が解禁されるあたりの鮎の大きさはだいたい18cmほどと聞きますので、なかなかリアルなサイズ感。手に乗せるとよくわかるのですが、お腹の部分がふっくら、そして柔らかく、力を籠めれば跡がついてしまうのではないかというほど。
美味しそうな焼き色の皮には、可愛らしい顔の焼き印ときゅっと織り込まれた尾びれがよく映えます。こちらの焼き印と折り目も、ひとつひとつ職人さんが手作業で施しておりますので、お店だけではなくそのお菓子それぞれによってほんの少し顔つきが異なるというのも鮎菓子を楽しむポイントのひとつ。
まだ温かい、むしろ熱いままの薄いカステラ生地に求肥をのせ、手早く織り込む。しかも気温が上昇し始めた季節に、鉄板の前で作業なさるというのはとても大変な仕事かと。
仙太郎さんの若あゆのきりりと結ばれた口元と、お腹の一本線が、深い苔色と白いお腹の境目のようで、お店ならではの特徴ですね。
蜂蜜の甘みと、その風味を活かすようなもち米の味わいを際立たせた求肥が印象的。噛むほどにもち米そのものの甘味が増すのは、やや粒感を残した求肥ありきかと。滑らかでつるりとした求肥のところもあれば、仙太郎さんのようにやや素朴なところもあって、その差が個々の拘りともいえるのでしょう。
小麦粉や求肥に使用されている糯米、甜菜糖などを国産でまかなうことにこだわる仙太郎さん。
カステラ生地と求肥というのは通年美味しく感じられる組み合わせですが、鮎を模したお菓子で季節を感じるのもまた一興ですね。
こちらは仙太郎さんの店舗だけではなく、オンラインストアでも購入可能です。