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ひと足早い春と出会う。山口県・周防大島でおいしい旅をする

寺田直子トラベルジャーナリスト 寺田直子
人気のジャムズガーデンでは「完熟イチゴを使った「春いちごフェア」開催中/筆者撮影
島を一望にするとっておきのスポット嵩(だけ)山展望台。頂上まで車で行ける/筆者撮影
島を一望にするとっておきのスポット嵩(だけ)山展望台。頂上まで車で行ける/筆者撮影

周防大島への春旅を薦めるのには理由がある。2018年10月22日、島と本州を結ぶ大橋に貨物船が衝突。それにより送水管が破断し40日間にわたって島全体が断水した。現在は復旧され日常生活は戻っているが、断水中に派生したレジャー客のキャンセルや出荷物の生産調整など経済的な損害はいまだ多くの島の人たちに負担を与えている。県や周防大島町も復興キャンペーンを行ってきたが、話題に上がりにくくなった今だからこそ観光で地元に貢献してもらいたいと思うのだ。温暖な気候の周防大島は梅や河津桜がすでに見頃で春の気分満開。広い島なのでレンタカーを借りて1泊してまわることをお薦めする。

島のいたるところに柑橘の畑が広がる「みかんの島」。これは昨年12月に撮影/筆者撮影
島のいたるところに柑橘の畑が広がる「みかんの島」。これは昨年12月に撮影/筆者撮影
周防大島のゆるキャラ「みかキン」「みかトト」を手にする椎木町長も「本当にいい島ですよ。ぜひおいでませ!」とアピール/筆者撮影
周防大島のゆるキャラ「みかキン」「みかトト」を手にする椎木町長も「本当にいい島ですよ。ぜひおいでませ!」とアピール/筆者撮影
「よつぼし」イチゴをたっぷりのせたスイーツピッツアはインスタ映え必至。奥はさわやかなのど越しのマーマレードジンジャー/筆者撮影
「よつぼし」イチゴをたっぷりのせたスイーツピッツアはインスタ映え必至。奥はさわやかなのど越しのマーマレードジンジャー/筆者撮影

周防大島は山口県のみかん生産量の90%をになう「みかんの島」だ。みかん狩りの季節は秋だが品種によっては今が旬のものも。たとえば「せとか」。ジューシーで甘味のある2月下旬~3月上旬とまさに今がシーズン。また、イチゴも今が収穫の季節。観光スポットとしても大人気の手作りジャム&マーマレード専門店「瀬戸内ジャムズガーデン」では併設のカフェで春いちごフェアを開催中。「よつぼし」と呼ばれる品種のイチゴは中も真っ赤でそれを使ったスイーツピッツアや贅沢スムージーなどこの時期限定のメニューが登場。ぎりぎりまで完熟させたイチゴは島内で収穫されるからこそのおいしさと驚くほどの甘さ(詳細はコチラを参照のこと)。

島内12店舗が独自のレシピでみかん鍋を提供する/筆者撮影
島内12店舗が独自のレシピでみかん鍋を提供する/筆者撮影

1月に開催されたニッポン全国鍋グランプリ2019で「審査員特別賞」を受賞したのが「みかん鍋」。焼きみかん、地魚つみれ、みかん胡椒を使用する、しめにみかん雑炊を作る。これが鍋のルール。焼いた丸ごとのみかんに一瞬、「えっ!」となるが魚介の出汁とみかん胡椒のピリリとした辛味がマッチング。しめのみかん雑炊のビジュアルもまたうるわしい。島内のレストランなどで提供するのは11月1日~3月31日の期間。周防大島に来たら味わいたいご当地鍋だ。3月9日にはみかん鍋を囲んで行われるユニークな鍋婚活イベントも開催され、現在参加者募集中だ。

たちばなやのラーメン。いりこだしのアッサリなのにコクあるスープが絶品/筆者撮影
たちばなやのラーメン。いりこだしのアッサリなのにコクあるスープが絶品/筆者撮影
レトロ(?)すぎる「たちばなや」の店内に一瞬ひるむがぜひトライを/筆者撮影
レトロ(?)すぎる「たちばなや」の店内に一瞬ひるむがぜひトライを/筆者撮影

最近はテレビでも紹介され知名度が出てきているのが「たちばなや」。いりこだしを使ったラーメンがおいしい。しかし、この店をユニークにしているのが店構え。レトロというか実に老朽化したたたずまいなのだ。のれんが出ていなければ営業しているとは思えないほどの風貌(笑)。そんなたたずまいで島民に愛され続け、変わらぬおいしさのラーメンを提供している名物店。存在感ありすぎる店と絶品ラーメンをぜひ味わってほしい。

Re:seto人気のメニューのパエリア。瀬戸貝が入るのが特徴/筆者撮影
Re:seto人気のメニューのパエリア。瀬戸貝が入るのが特徴/筆者撮影

海を眺めながらおしゃれなランチを、というときにはぜひRe:setoへ。カップルやグルメなマダムなど地元でも人気のレストランだ。テラスからは美しい瀬戸内の海を一望。近海で獲れるムール貝のような瀬戸貝を含めたシーフードたっぷりのパエリアやダッチ・ベイビー・パンケーキなどセンスあるメニューが選べる。大人気の店なので予約をぜひ。

磯の香りが楽しめる「和牛ヒレ肉の生ウニと岩のり添え」/筆者撮影
磯の香りが楽しめる「和牛ヒレ肉の生ウニと岩のり添え」/筆者撮影
潮騒の音が聞こえるほど。目の前に眠たげな瀬戸内海の水平線が広がる/筆者撮影
潮騒の音が聞こえるほど。目の前に眠たげな瀬戸内海の水平線が広がる/筆者撮影

もうひとつの地元で支持されるレストランが「クレスト・オブ・ザ・ウェイヴ立岩」。名前から洋食のイメージだがオーナーシェフは京都で修行を重ねた料理人。地元をはじめ厳選した食材を使ったオリジナリティあふれる会席メニューを提供。「和牛ヒレ肉の生ウニと岩のり添え」は磯の香りを楽しんでもらいたいと考案された一品。波の音が聞こえるほどのロケーションとあわせて堪能したい。

人気の「はちみつナッツのワッフル」とはちみつ、ミルク、コーヒーが三層になった「ハニーカフェコンレチェ」/筆者撮影
人気の「はちみつナッツのワッフル」とはちみつ、ミルク、コーヒーが三層になった「ハニーカフェコンレチェ」/筆者撮影

若き養蜂家による心地のいい空間が「カサハラハニー」。「国産天然蜂蜜100%」にこだわったはちみつは季節ごとに味わいが異なりファンも多い。ショップも兼ねたカフェはのんびりとお茶を楽しむファミリーや女性客でにぎわう。メニューはもちろんはちみつを使ったスイーツ&ドリンク。サクッ、カリッ、とろんと歯ごたえと風味が楽しめる「はちみつナッツのワッフル」は定番の人気商品。島の花から採取されるはちみつは小瓶もありおみやげに買って帰るのもおすすめ。

茶がゆとひと手間かけた品が並ぶ「せとうち つなぐキッチン 郷の家」の朝食/筆者撮影
茶がゆとひと手間かけた品が並ぶ「せとうち つなぐキッチン 郷の家」の朝食/筆者撮影
田舎の家ステイ体験が新鮮。食イベントなども随時行っている/筆者撮影
田舎の家ステイ体験が新鮮。食イベントなども随時行っている/筆者撮影

周防大島にはリゾートホテルから温泉旅館、民宿、ゲストハウス、キャンプ場など宿泊施設は充実する。1日1組(グループ)に1軒貸しをするのは「せとうち つなぐキッチン 郷の家」。地元出身の女性オーナーによる古民家でまさに島の暮らしそのもの。基本1泊朝食付きとなり、人数が集まれば事前予約で夕食も追加リクエストが可能。オーナーはスパイスの達人。島の魚や野菜本来のうまみを活かしつつふわりとかすかにエスニックな風味を感じさせる料理はとてもおいしい。薪でわかすリアル五右衛門風呂もユニーク。のんびりくつろいでしまう。

人懐こい笑顔と明るさでゲストに愛されるよねこさん/筆者撮影
人懐こい笑顔と明るさでゲストに愛されるよねこさん/筆者撮影
ログよねこの朝食の例。無農薬みかん、カサハラハニーなど島の食材が登場/筆者撮影
ログよねこの朝食の例。無農薬みかん、カサハラハニーなど島の食材が登場/筆者撮影

観光スポット「道の駅 サザンセトとうわ」向かい奥というロケーションにあるのは「農家民宿 ログよねこ」。みかん栽培や畑を持ち、さらに狩猟免許も持ちジビエなども仕留めるというパワフルなオーナーよねこさんがもてなす一棟貸しログハウスだ。宿泊は1泊大人4名まで。朝食や夕食はすぐ近所に住むよねこさんが通ってきて作ってくれる。修学旅行生も受け入れていてログハウス内には思い出の写真がぎっしり。断水時は給水所まで毎日往復、自費で購入したタンクに大量の水を運搬しては来島者や地元の方たちにトイレを開放し続けたよねこさん。周防大島を元気にする女性のひとりだ。

島の奥に島影が並ぶ瀬戸内ならではの風景がきらめく/筆者撮影
島の奥に島影が並ぶ瀬戸内ならではの風景がきらめく/筆者撮影

このほか周防大島は民俗学者、宮本常一の生まれ故郷であり、周防大島文化交流センターには貴重な資料が保管されている。また、明治時代、ハワイへ周防大島から多数の人が移民として海を渡っている。そのつながりからハワイ州カウアイ島との姉妹関係を締結、今も交流が続くほか、日本ハワイ移民資料館には当時の資料が展示されている。グルメやレジャー、文化&歴史探訪などじっくりめぐってこそ楽しめるのが周防大島の魅力だといえる。

3月1日からは復興応援として料金が半額になる宿泊券の販売・第二弾が開始される「がんばっちょるけー!周防大島」。初回は販売開始から7分で売り切れたほどの人気ぶりだった。コンビニの端末で購入可能なのでぜひ入手して活用してもらいたい。

※データ、状況は取材当時のものです。島特有の事情、季節によって営業内容など異なることがあります。

<データ>

(社)周防大島観光協会公式サイト

スオウオオシマドットコム

周防大島町ホームページ

トラベルジャーナリスト 寺田直子

観光は究極の六次産業であり、災害・テロなどの復興に欠かせない「平和産業」でもあります。トラベルジャーナリストとして旅歴40年。旅することの意義を柔らかく、ときにストレートに発信。アフターコロナ、インバウンド、民泊など日本を取り巻く観光産業も様変わりする中、最新のリゾート&ホテル情報から地方の観光活性化への気づき、人生を変えうる感動の旅など国内外の旅行事情を独自の視点で発信。現在、伊豆大島で古民家カフェを営みながら執筆活動中。著書に『ホテルブランド物語』(角川書店)『泣くために旅に出よう』(実業之日本社)、『フランスの美しい村を歩く』(東海教育研究所)、『東京、なのに島ぐらし』(東海教育研究所)

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