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北朝鮮VS韓国のW杯アジア予選は取材できない?中継もない!? 29年ぶりの南北戦は一体どうなる

金明昱スポーツライター
15日に平壌で行われるW杯アジア2次予選で韓国と対戦する北朝鮮(写真:ロイター/アフロ)

 10月15日に朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の平壌で行われる2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア2次予選。北朝鮮の相手は韓国だ。

 ”南北対決”が平壌で行われるのは、1990年の「南北統一サッカー大会」以来29年ぶりのこと。

 グループHで共にここまで2戦2勝の勝ち点6。この試合が首位決戦とあって、両チームにとってはとても大事な戦いとなる。

 ただ、この試合が一筋縄ではいかないのは、現在の南北関係からして、ある程度は想像できるだろう。

 それに試合開催を前にして、通常とは違う雰囲気の中で行われることが、筆者も現地に行く準備をしていたことからも分かってきた部分が多い。

 9月23日に北朝鮮は韓国との一戦を平壌の金日成競技場で行うことを発表していた。アジアサッカー連盟(AFC)も予定通りに試合が行われることを確認している。

 さらに私がAFCの担当者とのメールのやりとりをしていたが「北朝鮮で試合は確実に行われる」とはっきりと伝えてくれていた。

 そうなるとあとは現地に行く準備をするだけだった。綿密な打ち合わせのもと、11日に出発して北京で1泊し、12日に北京から空路、平壌に入る予定だった。

 14日の前日に両チームの公式練習と会見を取材し、15日の本戦の取材と準備を進めていたのだ。

北朝鮮対韓国の試合が行われる予定の金日成競技場は人工芝だ(筆者撮影)
北朝鮮対韓国の試合が行われる予定の金日成競技場は人工芝だ(筆者撮影)

 それこそ、いつも国際試合が行われる通りのサッカーの取材ができるということで、何も問題はなかったはずだった。

 だが、最終的に現地に入るビザが発給されないことが判明し、平壌行きを断念せざるを得なくなった。仮に旅行会社を通した北朝鮮ツアーで現地に入ったとしても、試合観戦もできないことも確認できた。

 つまり、海外メディアの取材と外国人の観戦はできないということだった。この目で試合を生で見るのは不可能になったわけだ。

 その理由については正直、わからない。おおよその予想としては、現在はそこまで良好とは言えない南北関係が起因している、としか考えられない。

韓国メディアは入れず中継もなしか

 筆者同様に困っているのは韓国側だ。今回、パウロ・ベント監督が選んだ代表メンバーやスタッフは、もちろん現地入りする。

 韓国の選手たちは北朝鮮に行くのはほとんどが初めてで、その分、緊張状態は他国の非ではないと思う。だが、試合が始まればそんな緊張感もどこかに吹き飛ぶかもしれない。

 いま問題なのはメディア現地入りとテレビの中継だ。

「こんな機会はめったにない」と北朝鮮での取材を楽しみにしていた韓国のサッカー担当記者に話を聞くとこんな話だった。

「10社ほどが抽選で現地入りできるそうなので、自分も行けるかどうかわかりません。それに北朝鮮からいまだに招待状(ビザ)が来ておらず、本当に現地に入れるかわからない」

 韓国代表の試合結果を伝えるのに重要な役割を果たすメディアも入れないかもしれないという。

 それにこの試合を韓国で放送しない可能性もでてきているという。記者やカメラマンが入れないとなると、同じく韓国テレビ局も同じ扱いとなる。

 そのことについてAFC担当者に聞くと「韓国側のメディアに入国許可が下りていない状況で、現地で取材は困難な状況です。もしかすると試合の中継も最悪の場合、なくなると思います」と話していた。

 もちろん韓国代表サポーターも現地入りは無理で、金日成競技場に集まるのは、北朝鮮国民だけになる可能性が高い。

 韓国代表にとっては、それこそ“完全アウェー”という状況になるだろう。

今年1月、UAEで行われたアジアカップで北朝鮮代表を応援する応援団。韓国戦ではどんな応援が見られるか(筆者撮影)
今年1月、UAEで行われたアジアカップで北朝鮮代表を応援する応援団。韓国戦ではどんな応援が見られるか(筆者撮影)

東京Vの李栄直が韓国戦に出る予定

 ただ、残念で悲しいのは、こうした歴史的な一戦を見られる人が少ないということだ。

 純粋にサッカーを現地で観戦したいというファンもいただろうし、個人的にもW杯アジア予選の真剣勝負が見られるのを楽しみにしていた。

 この試合のために平壌を訪れる韓国代表FWのソン・フンミン(トットナム)やFWファン・ウィジョ(ボルドー)、スペインでプレーするイ・ガンイン(バレンシア)が、どんなプレーを見せるのかも見てみたかった。

 さらにユベントス入りで話題になった北朝鮮代表FWハン・グァンソン、東京ヴェルディでプレーする在日コリアンの李栄直も北朝鮮代表に選出されたが、アジア屈指の実力を誇る韓国を相手にどれくらい対抗できるのかも知りたかった。

 それでも現地には当然、AFCのスタッフが入るという。試合前後の情報を得る手段はあるが、メディアに携わる立場としては現地の熱を伝えられない悔しさが今も残る。

 今月7日、東京ヴェルディの李栄直が成田を経つ前、「奮闘してくる」とメールで伝えてくれていた。

 始まる前から多少のゴタゴタがあったとはいえ、サッカーの試合をすることに変わりはない。両チームの健闘を祈るばかりだ。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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