「眼にコンタクト27枚」の衝撃 原因や予防法は?専門医に聞いてみた
7月18日、あるニュースが話題になりました。
目の中にコンタクトレンズ27枚、手術の日まで気づかず 英(CNN.co.jp 2017.07.18)
SNS上では、「ありえない、違和感とかいうレベルじゃなくて、痛いと思う」など気がつかなかったことへの不思議さを訴える投稿のほか、「怖い」「つけっぱなしで寝ることあるけれど大丈夫?」などの不安の声も上がっています。
筆者はコンタクトレンズを使っていないのでわからないのですが、確かに、「コンタクトがまぶたに入った」などの声を聞くことは少なくありません。そもそも、なぜコンタクトがずれるのか?危険はないのか?いろいろ疑問に思ったので、眼科の専門医に連絡をとり、聞いてみることにしました。
コンタクト まぶたに入って大丈夫?
答えてくださったのは、眼科専門医の諸星計(もろほし・けい)さんです。
Q 今回話題になった症例を聞いて、どのように感じられましたか?
正直、27枚って本当だろうか?と驚きました。通常ならさすがに気づくはずなので、もともとコンタクトの異物感を上回るような、何らかの眼の病気による症状があったのかもしれません。
Q 記事のようなことは、通常のコンタクトユーザーでも起こりうるでしょうか?
さすがに何年も、というケースは少ないと思いますが、私自身、コンタクトのフィッティング(レンズがぴったりあっているか)のチェックにこられた方を診察していた時に、上まぶたの裏にもう1枚コンタクトを見つけたことがあります。
その方はおそらく、コンタクトを外さずに寝てしまい、寝ている間にまぶたの裏にずれ、翌朝、外したと勘違いして新しいコンタクトをつけたのだと思います。
ハードのコンタクトレンズはズレたときにかなり痛みを伴うのですが、ソフトの場合は装着したときの異物感も減り、ズレても違和感につながりにくいと思われます。
Q コンタクトがまぶたに入るという話はよく聞きます。これは、なぜ起こるのでしょうか?
コンタクトがズレてまぶたの裏に入ってしまう大きな原因は、フィッティングが合っていないこととドライアイです。眼球の表面にある角膜のカーブ(曲率半径)にちゃんと合ったコンタクトを装着することが大切です。カーブだけでなく涙の量など様々な要素がありますので、定期的に眼の検査をうけ、きちんとフィットしているか調べていただければと思います。
また、コンタクトをしたまま寝ることは大きなリスクです。睡眠中は涙が少なくなりますので、コンタクトが乾いてズレやすくなり、まぶたの裏に張り付きやすくなります。さらに角膜に傷がつきやすくもなりますので、個人的に患者さんには「コンタクトしたまま寝るくらいなら徹夜で起きてた方がまだ良いくらい」と説明しています。
Q コンタクトがずれることは、視力低下などのリスクにつながることがあるのでしょうか?
角膜(車でいうとフロントガラス)に傷がつけば当然視力障害の原因になりますし、傷から感染が起きれば視力回復不能になるリスクもあります。実際にコンタクトの不適切な扱いによるアカントアメーバ感染などが増加しています。角膜の表面にはバイ菌を防ぐ「上皮」があるのですが、そこに傷がつくと感染が起きやすくなってしまいます。
ちなみに、良く「コンタクトレンズがずれると、眼球の裏にいってしまうのでは」と心配される患者さんがいるのですが、眼の構造上、そうしたことはありえません。
Q 今回の記事のような事態を防ぐために、どのようなことに気を付ければよいでしょうか?
当然ですが、コンタクトは毎晩、寝る前に外すこと。そして、外したコンタクトを確認することです。
いつのまにかどこかに外れてしまって、どこに行ったか分からない場合は、自覚症状が乏しくても眼科を受診して確認してもらった方がよいと思います。
執筆:市川衛 ツイッターやってます。良かったらフォローくださいませ
【取材協力】
諸星計さん(もろほし・けい)
諸星眼科クリニック(西荻窪)院長・医学博士・東京医科歯科大学眼科非常勤講師