日本協会新執行部の船出。強化委員会の3名体制などについての問答は?【ラグビー旬な一問一答】
日本ラグビー協会が7月17日、現執行部発足後初の理事会をおこない、森重隆会長と岩渕健輔専務理事が会見した。
現体制は、2019年6月下旬の理事改選時に発足。一時は従来の顔ぶれの続投が既定路線とされたが、森喜朗前名誉会長が喝を入れるなどした結果、若返りなどを求めて体制を刷新していた。
前副会長で人望の厚い森会長は、ヤマハなどで監督を歴任した清宮克幸氏を副会長に任命し、国内リーグ改革を期待。実質的なかじ取り役にあたる専務理事には、日本ラグビー界きっての国際派で男子7人制日本代表のヘッドコーチでもある岩渕氏に白羽の矢を立てた。
会見では理事会中に承認された新たな会の説明、特に清宮新副会長が先頭に立つ「イノベーションプロジェクトチーム」の概要、今後の代表強化の方針などについて語られた。
今秋、ワールドカップ日本大会へ挑む日本代表に関し、清宮副会長は本番を終えてからもジェイミー・ジョセフ現ヘッドコーチの続投を奨励。一方で岩渕専務理事は各種メディアに慎重論を語っている。
以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
岩渕
「(この日は)今回の24名の理事がどういう経緯で選ばれたかを、会長と私のほうでいたしました。推進体制をしっかりして、透明性を確保してガバナンスをしっかりする、と。理事の担務について説明しますと、強化委員会は土田雅人さん、藤井雄一郎さん、渡瀬裕司さんの3名です。独立した立場として技術(委員会)に中竹竜二さん、山本巧さん。副会長の清宮が推進するイノベーションプロジェクトは清宮、境田正樹さん、谷口真由美さんの3名。それ以外ではワールドカップ地域担当理事として九木元孝行さん、浜本剛士さん、松原忠利さん。
他には新しい会の設置の承認を得ました。3つあります。ガバナンスの検討会議。会長が部長となり、新任理事の境田さん、石井淳子さん、日本ラグビー協会の幹事の坂井秀行さん、袖山裕行さん、弁護士の先生も入りました。
それ以外の中長期計画推進会議。ラグビー協会の目指すビジョンや検討課題について議論し合います。議長は中竹さん、浅見敬子さんを筆頭に。その他のメンバーは中竹さんが選考します。
そしてイノベーションプロジェクトチーム。国内リーグのあり方をもう一度検討します。それを検討するチームの発足を審議し、承認されました。
日本代表の強化体制は強化担当理事が中心に議論をスタートさせるということです。以上です」
――日本代表の強化委員会について。土田さん、藤井さん、渡瀬さんの間での序列や担当分担は。
岩渕
「特にございません。ただ、渡瀬理事はサンウルブズ(スーパーラグビーの日本チーム。日本代表と連携)のCEOでもありますので、サンウルブズとの連携をどうするかは渡瀬がリードする形になると思います」
――「強化委員長が必要かどうかも含めて」の議論は必要なのか。
岩渕
「私、専務理事の立場で言えば(強化委員長は)必要だと思っています。ただ、強化委員会としてワールドカップ前までの強化体制を見(返し)て…と。強化委員が多くいるのもそういうところ(現体制の評価)から見直す必要があるからです。ワールドカップに臨むチームについてはベストなパフォーマンスを発揮してもらう体制を作るよう考えてもらいたいと伝えています。今後の強化体制については全てのカテゴリーを網羅する形がいいのか、これまでの4年間のような形でいいのか、もう1回、提案してもらいます」
――代表強化体制について。強化委員長は設置しないのか。
岩渕
「先ほどお伝えした3名(渡瀬氏、土田氏、藤井氏)が強化担当理事になります。いまの段階で強化委員長が必要かどうかも含めて速やかに話をしていただきます。今後の体制についても検討していただく必要もある。それを含め、審議し、提案していただきます」
――次期代表ヘッドコーチの選定について。
森
「清宮から出た話ですが、『これまでは強化委員と言いながら誰も責任を取らなかった』と。誰かを長にして、『(もし次期代表ヘッドコーチを擁立するなら)俺が連れて来た』という責任をはっきりさせたい。それが清宮の意見。そういう強化委員にしなきゃいけない。僕もそう思うなと。(実際には)外国人か日本人かも決まっていないし、お金のこともある」
――現在、強化委員長(薫田真広氏)は存在していないのか。
岩渕
「正式な退任はまだなので、現在の薫田強化委員長は強化委員会内で評価をし、退任なら退任という形にしています」
――サンウルブズは2020年限りでスーパーラグビーから除外されます。森会長は、再度スーパーラグビーへ戻れないかを模索したいと話していたが、きょうはどんな話題が出たか。
岩渕
「それについては審議があったというより――本日は新しい理事の方もいましたので――サンウルブズ発足の経緯、現状、どういう存在か(を伝えた)。サンウルブズは新しい可能性と新しいファン層を見せてくれている存在。前向きな話になっていると思います。きょうは脱退(現状では2020年限りでスーパーラグビーから除外される)をどうするかという話には至っていなくて、現状を理解いただき、決まった強化委員会でも話をしていただきながら、(今後の)理事会で議論していくことになります」
現強化副委員長でもある藤井氏は、ジョセフ現ヘッドコーチと親交が深いことなどから2018年より現職。当時あった強化委員会と代表首脳とのコミュニケーション不全の修復に尽力した。サンウルブズのゼネラルマネージャーも兼ねており、前体制時から渡瀬氏と同クラブのスーパーラグビー参戦継続を願っていた。
前体制時から強化委員会に名を連ねていた土田氏は、サントリーの監督などを歴任し、現在は同部シニアディレクターでもある。かつてサントリーの監督だった清宮氏は土田氏が同部のゼネラルマネージャーを務めていた時代も指揮を執っているが、2009年度限りで同職を辞している。
――イノベーションプロジェクトチームは10名程度になると言われているが。
岩渕
「きょう決まったのは同プロジェクトが何をするか、そのメンバー、予算、です。初期のメンバーは9名ですが、協会内の職員を含め早急にチームを作るようになります。しかるべきタイミングで公表はしていきたいです」
――「何をするか」について、改めて。新規のプロリーグ発足も視野に入っていそうですが。
岩渕
「国内リーグのあり方、トップリーグで積み上げたものについても検討していく。トップリーグと連携しながら進めていくということで、チームもそのために発足させました。きょうについては具体的なスタディもできていない。詳しい中身についてはできていません」
――具体化はいつごろか。
岩渕
「副会長(清宮氏)からは『ワールドカップ期間中までに方向性を』と。ただ、かなり大きな話ですので、他のプロジェクトメンバーからは『しっかり時間をかけた方が』という話もありました。まずしっかりスタディをして、そのうえで方向性を出すことになります」
――既存の国内トップリーグについて。ワールドカップ後のシーズンについてはどんな話をしたか。
岩渕
「シーズンが2020年の1~5月となるのは公表させていただいている。どうカードを組み、いつリリースするかという方向性について審議されました。それ以降については、まだ議論がされておりません。先ほどのイノベーションプロジェクトもトップリーグと連動することになります。
イノベーションプロジェクトを動かす清宮副会長は、トップリーグの担当にもなっています」
――2021年のトップリーグについて、前執行部が「8チームのカンファレンスを3つ」という案を出しています。
岩渕
「この間のトップリーグの代表者会議で提案をさせていただいたところでとどまっています。早い段階でトップリーグの方に集まっていただき、方針を説明しなくてはならないということで今日の話は終わりました」
――ガバナンス検討会議とは。
岩渕
「外部から入っていただいた理事の方から話していただき、改選のタイミングなどを含め、検討し、進めていきたいです」
――中長期計画推進会議とは。
岩渕
「(日本協会は)2020年までのビジョンを出していますが、2021年以降について検討する(必要がある)。評議員の方(現執行部選考に関わった)からも『目指す方向性が見えてこない』と伝えられています。ビジョン、課題、収支計画を組め、こちらの会で検討していただきたい」
――これまで月に1回だった理事会。回数を増やす案を出していたが。
森
「皆が集まるのは難しいですが、10人ぐらいでパッと集まってもらって何かを決めてもらう体制を作りたい。決めることって、たくさんあるので」
ちなみに、この日は「会長特別補佐」の新設も発表された。
元副会長の河野一郎氏ら退任した幹部が名を連ねているが、森新会長はくだけた口調で「名誉職では」という意味合いを語る。岩渕専務理事が「坂田好弘さん(前副会長)、大畑大介さんはワールドカップの殿堂入りもされていますのでワールドカップについて。水谷眞さん(前副会長)、河野さんはこれまでラグビー協会にいろんな形で貢献していただいていますので、今後へアドバイスをいただく。理事会に出席するというより、その名の通り会長にご助言いただく形です」と付け足した。
関係者曰く「まるでオールスター」の新執行部。スピーディーかつオープンな議論がなされるか、経過観察されたい。