20年前のブラックホーク・ダウンの雪辱を果たしたアメリカ
10月5日、アメリカ軍はソマリア及びリビアで作戦を開始し、テロリストグループの重要人物を逮捕したとの報道がなされています。
1998年に224人が死亡したケニアとタンザニアでの米国大使館爆破容疑で手配されていた、アルカイダの重要人物アブ・アナス・リビ容疑者は、今回の米軍の作戦により逮捕されたとの報道がなされています。
リビ容疑者はアメリカ政府から、逮捕につながる情報の提供者に500万ドルの報奨金を与えるとされるほどの重要人物で、昨年の9月にリビアのトリポリに潜伏していたと報道されていました。リビ容疑者は今回の作戦により逮捕され、現在は既にリビア国外で拘束されているとのことです。しかし、今回の急襲は、リビア政府の了承なしに実行したとされ、リビア政府はイスラム主義者の反発を警戒し、自国民の”誘拐”についてアメリカに説明を求めています。
ソマリアでは、先月に発生したケニアのショッピングモール襲撃に関与したとされるテロ組織、アル・シャバーブ関連人物の逮捕を目的とした作戦が海軍特殊部隊ネイビー・シールズにより行われました。しかし、ソマリアでの作戦においては、ターゲットが誰かは明らかにされておらず、逮捕者は無し、確実に殺害したかの確認もなされていません。ロイター通信がソマリア関係者のコメントとして伝えているところによれば、チェチェン過激派の司令官を狙ったなどの情報も流れていますが、現在のところ目立った成果は確認できていない模様です。
折しも今回のソマリアでの作戦が実行されたのは、1993年10月3日に18人の米軍兵士が死亡した”モガディシュの戦闘”(映画「ブラックホーク・ダウン」の基となった戦闘)から20年目を迎えたばかりでした。20年前の戦闘では、民兵指導者のアイディード将軍の副官の逮捕に向かった米軍特殊部隊のMH-60ブラック・ホークヘリが墜落し、その乗員救出を巡って想定外の市街戦が展開されました。戦死者の遺体が引きずられる様がテレビ報道された事はアメリカ世論に衝撃を与え、翌年のソマリア平和維持活動からの米軍撤退に繋がります。
現在のソマリアの混乱の大本となった事件から20年の節目に行われた今回の作戦は、未達成な部分はあるものの、過去のテロ事件の容疑者を逮捕する成果を挙げ、アメリカは20年前の雪辱を果たしたといえるでしょう。