<働き方改革>4月1日から施行される制度は何?ポイントは?
昨年、国会で働き方改革関連法(正式名は「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」)が成立しました。
この働き方改革関連法は、いくつもの法律の改正が含まれるもので、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法、パート法、派遣法などの法律が対象となり、改正内容も多岐にわたるものです。
そして、一部は明日(4月1日)から施行されるので、要注意です!
何が、どう変わった?
この法律による主な改正のポイントは次の通りです。
労働時間関係では、
- 残業時間についての法的上限の設定
- 使用者に労働者の労働時間の把握義務があると法律上に明記
- インターバル規制の努力義務化
有給休暇においても、大きな変更があります。
- 10日以上の有給休暇が付与される労働者に対する使用者の5日についての時季指定義務
均等・均衡待遇に関する法整備もされました。
- 労働契約法(有期雇用)とパート労働について統合
- 派遣については配慮義務から義務へ規制強化
働き方に関しては、以下のものがあります。
- 「高度プロフェッショナル制度」の創設
- フレックスタイム制の期間を1か月から3か月へ拡大
いつから変わる?
これらがいつからスタートするかは、制度によってばらつきがありますので、注意が必要です。
労働時間上限規制
労働時間上限規制については、
大企業は明日(2019年4月1日)から!!
中小企業は、来年(2020年)の4月1日から!
となります。
大企業は明日からですので、要注意です。
ちなみに、中小企業とは、次の(1)または(2)に該当する企業を言います。
(1)資本金
・小売り・サービス業は5000万円以下
・卸売業は1億円以下
・その他は3億円以下
(2)常時使用する労働者
・小売業は50人以下
・サービス・卸売業は100人以下
・その他は300人以下
この(1)と(2)のどちらにも当たらなければ大企業で、どちらかでも当たれば中小企業です。
均等均衡待遇
次に、これも影響が大きそうな均等均衡待遇ですが、これは、
大企業は来年(2020年)の4月1日から!
中小企業は、再来年(2021年)の4月1日から!
となります。
少し余裕がありますが、それはそれだけ準備が必要だということですので、「どうせ来年のことだし」「うちは中小だから2年もあらぁ」と思っていると、あっという間にその日が訪れるので要注意です。
その他は?
その他の労働時間把握義務、インターバル規制努力義務、有給休暇の5日義務化、高度プロフェッショナル制度、フレックスタイム制の最大3か月化は、いつでしょうか?
これらはすべて
明日(2019年4月1日)から!
企業の大小、関係なし!
です。
なんと、全部明日(4月1日)からなんですね。
まとめると、明日(4月1日)から施行される制度は、
- 大企業の労働時間上限規制
- 労働時間把握義務
- インターバル規制努力義務
- 有給休暇の5日義務化
- 高度プロフェッショナル制度
- フレックスタイム制の最大3か月化
となります。
内容についてのポイント
では、明日(4月1日)から施行される制度の内容についてポイントを解説していきます。
労働時間上限規制について
まず、大企業には明日から施行される労働時間上限規制ですが、これは36協定に関する改正となります。
やや詳しい内容については下記記事をご覧ください。
ポイントは次の点です。
- 残業時間の上限の原則は1か月45時間、年間360時間とされた
- これの例外としては以下の3つをクリアすれば年6回まで可能
- 年間での最大時間は720時間(時間外労働のみ・休日労働は含まず)
- 単月における最大時間数は100時間未満(時間外労働+休日労働時間)
- 2~6か月の平均で80時間以内(時間外労働+休日労働時間)
- 違反すると刑事罰あり
ただ、例外の要件1については、時間外労働は年間720時間までですが、別途休日労働をさせることができるため、それを含めると年間の最大は960時間まで可能となります。
ちなみに過労死ラインと言われる残業時間は、脳・心臓疾患の場合、発症前1か月間に100時間、発症前2~6か月間にわたって1か月当たり80時間となると発症との関連性が強いとされます。
ですので、上限が設けられたと言っても、上限いっぱい働かせることは過労死ラインとなりますので、そのようなことのない運用が必要です。
労働時間把握義務について
これについてのやや詳しい解説は以下の記事をご覧ください。
ポイントは次の通りです。
- 使用者は、医師による面接指導を実施するために、労働者の労働時間の状況を把握しなければならないとされた
- 具体的な時間把握の方法は、タイムカード、パソコン等の使用時間記録など客観的な方法
- 自己申告制についてはやむを得ない場合だけ
勤務間インターバル規制について
これについてのやや詳しい解説は以下の記事をご覧ください。
勤務間インターバル規制は、終業時刻から次の労働日の始業時刻まで〇〇時間の休息時間を設定する、という制度です。
努力義務なので企業に導入義務はありませんが、労働時間の短縮化を目指す企業では、既に導入しているところも出てきています。
有休義務化について
有休義務化については、以下の記事をご覧ください。
ポイントは次の通りです。
- 10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して5日を1年以内に与えなければならない
- 労働者が自主的に有休を取れば義務はその分減る
- 使用者は労働者の意見を聴いて、その意見を尊重するよう努めなければならない
- パート社員やアルバイト社員も対象
- 違反したら刑事罰
違反すると刑事罰ですから、経営者にとっては強い規制となります。
また、さっさと刑事罰を逃れたい経営者と、好きな時に有休を取得したい労働者との軋轢がでる可能性もあります。
穏当なやり方としては、最初の半年は労働者の自発的な有給休暇の取得を促して、半年時点で5日未満の消化である労働者については、個別に声かけをし、残り3~4カ月でも5日未満の消化である労働者には意見を聴いて、有給の時季を具体的に指定していくのがいいかと思われます。
高度プロフェッショナル制度について
悪名高き高度プロフェッショナル制度(高プロ)は以下の記事をご覧ください。
高プロは、その対象労働者について、労働基準法に基づく労働時間規制の全てが外れるという強烈な制度です。
労働時間、休憩、休日、深夜労働の割増賃金に関する規定は適用されません。
一部マスコミ(特に日本経済新聞)で「成果に応じて賃金が支払われる」制度と誤った内容で報じられていましたが、そのような内容を含みませんので、注意してください。
フレックスタイムについて
フレックスタイムについては、次の記事をご覧ください。
ポイントは、
- フレックスタイムの清算期間が最大3か月に
- 清算期間が1カ月を超える場合は平均して週当たりの労働時間は50時間まで
- この50時間を超えたらその月に残業代を支払う
- 清算期間の最後に週当たり40時間超の残業代を支払う
- 使用者は対象労働者に各月の労働時間数の実績を通知することが望ましい
フレックスタイムでも残業があれば、使用者には残業代支払義務があります。
1か月単位の場合は、総労働時間から週40時間換算の月の法定労働時間を引けば簡単に算出できたのですが、3か月になると、かなり計算が面倒なことになります。
ですので、労使とも、よほどのニーズがない限り、あえて3か月にするメリットはあまりありませんので、要注意です。
おかしな運用があった場合は相談を!
この働き方改革関連法ですが、高プロを除き、労働者にとってもメリットのある制度もありますので、法律を正しく運用しているか見ていく必要があります。
おかしな運用が行われている場合は、労働基準監督署、労働組合、弁護士等へご相談ください。