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高プロは「導入しない・させない・同意しない」

佐々木亮弁護士・日本労働弁護団幹事長
3人のサラリーマン(写真:アフロ)

 だいぶ時間がたってしまいましたが、6月29日、日本のほとんどの労働組合や過労死を考える家族の会などの市民団体の反対にもかかわらず、『高度プロフェッショナル(高プロ)』制度の創設を含む働き方改革関連法が成立してしまいました。

 国会での審議過程において、大臣や官僚の不誠実な答弁があり、また、立法事実(法律を作る社会状況の存在)がないことが明らかとなりながらも、とにかく成立ありきで突き進み、最後はまともな議論にもならずに、押し切られた印象です。

 では、成立してしまった高プロにどう対応すればいいでしょうか?

経営者の方へ~高プロは導入しない方がいい

 まず、使用者は、高プロを導入しないようにしましょう。

 はっきり言って、制度としてあまりに矛盾点が多い上、できの悪い制度です。

 加えて、これだけ悪評な制度をあえて導入するのは、企業としての名声を落とすことになります。

 この点、日本労働弁護団の声明の一節が、ほんの少し話題となったので、改めてここで紹介しておきます。

今後、もし、高プロ制度を導入する企業があるならば、当該企業は『ブラック企業』の烙印を押され、社会的な批判・非難の対象となることを免れ得ないであろう。

出典:働き方改革関連法案の採決強行に対する抗議声明

 成果で評価したいとしても、高プロの導入は不要です。

 あえて企業のブランドを落とす必要はないでしょう。

労働組合の方へ~高プロを導入させない動きを

 次に、高プロに反対してきたすべての労働組合は、企業が高プロを導入する動きを見せた場合は、じゃんじゃん告発していき、導入させない包囲網を張りましょう!

 法制度上、今は高プロの適用対象は少ないかもしれませんが、今後、広げていく動きが出ることは確実です。

 その前に、導入させず、「使えない制度」ということで、事実上廃止状態にしてしまう動きが必要です。

 成立を喜ぶ企業の機先を制し、導入を阻止しましょう。

 職場で過半数を組織している労働組合であれば、高プロの導入のために設置される労使委員会に、半数の委員を送り込めます。

 そして、高プロをスタートするにはその委員会で5分の4の賛成が必要なので、みんなで反対すれば高プロを導入阻止が可能です。

 また、過半数を組織していない労働組合であっても、労働者代表選挙に立候補することで、労使委員会に委員を送り込めます。

 そこで5分の1以上の委員の席をとれば導入阻止が可能です。

労働者の方へ~同意しないようにしましょう

 それでも高プロが導入されてしまった場合は、対象労働者は同意をしないようにしましょう。

 働く現場では、同意しないということは現実的には難しいのですが、踏ん張ってみてください。

 もし同意するよう圧力をかけられているような場合には、労働組合や労基署、弁護士などへ相談してください。

廃止を目指そう

 法律になろうと、悪い制度は悪い制度ですので、ならされてしまってはいけません。

 労働法制の難しい点は、一度規制を緩和すると、その労働者層が生まれてしまうので、規制を再強化しようとすると、その層とのハレーションが起きるというところです。

 ですので、拡大される前に、拡大させないし、使わせないことが大事です。

 長時間労働を少なくしようとする流れに明らかに逆行する高プロ制度は、一日も早く制度廃止をする必要があります。

 そのためにも、高プロの導入は、しない・させない・同意しない、の「3ない」が大事です。

弁護士・日本労働弁護団幹事長

弁護士(東京弁護士会)。旬報法律事務所所属。日本労働弁護団幹事長(2022年11月に就任しました)。ブラック企業被害対策弁護団顧問(2021年11月に代表退任しました)。民事事件を中心に仕事をしています。労働事件は労働者側のみ。労働組合の顧問もやってますので、気軽にご相談ください! ここでは、労働問題に絡んだニュースや、一番身近な法律問題である「労働」について、できるだけ分かりやすく解説していきます!2021年3月、KADOKAWAから「武器としての労働法」を出版しました。

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