「廃棄1時間前に入ってきたパン捨てた」賞味期限・消費期限の手前の販売期限を柔軟にし食品ロスを最小限に
自然災害は100%防げない
2017年7月5日の九州北部豪雨から2年、2018年7月6日の西日本豪雨から1年が経つ。
そして2019年6月末から7月にかけて、九州地方で記録的な豪雨となっている。
2010年以降、異常気象がデフォルト(基本)のようになり、毎年のように自然災害が訪れる。
「防災」「減災」はできる。でも、自然災害を完璧に防ぐことは困難だ。
食品が不足する非常時だからこそ「販売期限」を柔軟にできないか?
2018年7月の西日本豪雨では、被災地のコンビニオーナーさんから、「販売期限の1時間前にトラックが着くので、ほとんど売る時間なく捨てなければならなかった」という声を聞いた。
道路が寸断されたため、普段通りの時間にトラックが着かない。どう頑張っても遅れてしまう。
消費期限の手前に設定されている「販売期限」の直前にトラックが着くため、納品されて棚に並べても、すぐに撤去の時間が来てしまい、泣く泣く捨てたという。
コンビニの店舗では、販売期限で棚から撤去された食品のことを「廃棄」と呼ばれることが多い。取材したオーナーも「廃棄の1時間前に入ってきたパンを捨てた」と答えていた。
消費者にとって、期限表示は、日持ちが5日以内の弁当などにつけられる「消費期限」、もしくは美味しさの目安である「賞味期限」しか関係がない。
でも、食品業界の関係者にとっては、その手前に「販売期限」がある。販売期限で商品棚から撤去し、返品もしくは廃棄してしまう。
自然災害時に交通網が乱れるのは必至だ。食品が不足する自然災害時、消費期限は守るにしても、せめて業界の商慣習に過ぎない「販売期限」は柔軟にとらえ、限られた食品を有効に活用できないものだろうか。
カツ丼のご飯は塩むすびに、幕の内弁当はおかず一品足りなくてもいいじゃないか
2018年9月には、震度7を記録した北海道地震が発生した。
このとき、同じコンビニエンスストアでも対応が分かれた。
北海道に拠点を置くセイコーマートは、カツ丼にするはずだったご飯を塩むすびにし、より多くの顧客にご飯が行き渡るような臨機応変な対応を見せた。
一方、大手コンビニでは、幕の内弁当のおかずのうち、たった一品が製造できないから「規格外」という理由で、ベンダー(納品者)の出荷を受け付けなかった。
自然災害は、いつ、どこででも起こり得る。起こるのが普通と考え、臨機応変に対応できないものだろうか。
家庭では「ローリングストック法」を
家庭では、「ローリングストック法」を活用したい。
ローリングストック法とは、レトルトご飯など、まとめて買っておく常備食を、使っては買い足し、使っては買い足すを繰り返す方法のこと。
非常袋に入れっぱなしよりも、食材の賞味期限や在庫の種類・数が認識しやすく、東日本大震災以降、注目されるようになった。
豪雨や地震などで外に行けないとき、家の中だけで食事作りが完結できる。
日本気象協会は、2010年以降、異常気象が常態化していると取材で語っている。
食品事業者も消費者も、自然災害は起きるという前提に立つ必要がある。自然災害時に不足しがちな食料品を、杓子定規な規則や商慣習で食品ロスにすることなく、できる限り有効活用していきたい。
(「ローリングストック法」については新著『「食品ロス」をなくしたら1ヶ月5,000円の得!』のp108-109を参考にした)