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若手を切って本番に臨んだ西野前監督に、いまさらながら物申す

杉山茂樹スポーツライター
アジア大会決勝で日本を下し優勝した韓国チーム(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 試合の評価とは、結果と内容、それに絡む様々な要素を総合的に分析して下されるべきものだ。主観が入り込む余地も大いにある。

 アジア大会決勝で韓国に敗れた日本。延長の末1-2は一般的には惜敗だ。内容的に見たとき惜敗は妥当な評価と言えるのか。

 韓国の一方的な支配が強まると、実況アナ氏は両チームの年齢構成の違いを繰り返し説明した。日本がU−21で臨んでいるのに対し、韓国はオーバーエイジ3人を含むU−23。その中にはアジアナンバーワン選手の誉れ高いソン・フンミン(トッテナム)もいる。韓国は日本より年齢的にもメンバー的にも優位な立場にあった。その勝利は順当勝ちと言えるが、問われているのはその程度だ。日本から見た場合は惜敗の程度。それはどれほど惜しい敗戦なのか。

 日本側がアジア大会を2020年東京五輪に向けた強化の一環として捉えていることも実況アナは執拗に強調した。さらに、ファン・ヒチャンや交代で入ったイ・スンウにボールが渡ると、彼らがロシアW杯出場組であることも伝えた。漏れなくという感じで。優勝にこだわる韓国に対し、日本は今後を見据え、強化策を計画的に図ろうとしているのだと、その正当性を力説した。日本が劣勢に追い込まれる理由をそこに求めたがる様子だった。

 一方、ロシアW杯に臨んだ日韓両国立ち位置は大きく違っていた。先述のファン・ヒチャン(22歳)やイ・スンウ(20歳)がW杯メンバーに入っていた韓国に対し、日本は最年少が23歳の植田直通と中村航輔で、彼らを含む25歳以下の選手がわずか5人というベテラン主体のメンバーだった。

 ドイツに勝利しながらグループリーグで消えた韓国に対し、日本はベスト16入りを果たし、そこでベルギーと惜しい戦いを繰り広げた。

 両国はロシアW杯で対照的な姿を描いたのだった。

 代表チームに不可欠な選手の循環を怠り、結果至上主義に走り、そして考えられる最高の成績を収めた西野ジャパン。その姿と、アジア大会に考え得る限り最高のメンバーを送り込み、そして狙い通り優勝した韓国は共通する。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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