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アップル、不況下でもスマホ増収 インドに期待

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
インド初のアップル直営販売店がオープン(写真:ロイター/アフロ)

アップルの今年1〜3月期の決算は、売上高が948億3600万ドル(約12兆7900億円)で、前年同期から2.5%減少した。前四半期(22年10〜12月期)の同5.5%減に続く減収で、2四半期連続の減収は約4年ぶりだ。

スマホ市場14.6%減、iPhoneは1.5%増

しかし、主力「iPhone」の売上高は同1.5%増の513億3400万ドル(約6兆9200億円)で、1〜3月期として過去最高を更新。全売上高の半分以上を占めるiPhoneが増収となり、底堅さを見せた。

米調査会社のIDCによると、23年1〜3月期の世界スマホ出荷台数は同14.6%減で、7四半期連続の前年割れを記録した。

世界的な景気減速の影響でスマホ需要は冷え込んだが、iPhoneは対照的で、投資家は驚きを持って受け止めたとロイター通信などは報じている。

インド事業、2桁増記録

直営店「Apple Store」がある国。このほどインドでオープンし、世界23カ国になった(出所:独Statista)
直営店「Apple Store」がある国。このほどインドでオープンし、世界23カ国になった(出所:独Statista)

アップルのティム・クックCEO(最高経営責任者)は決算説明会で、「iPhoneの販売はインドなどの新興国市場で好調だ」と語った。同氏によると、インド事業は四半期ベースで過去最高を更新した。売上高は前年同期比2桁増を記録した。

アップルはサプライチェーン(供給網)の中国依存を減らし、生産をインドなどの新興国に移そうとしている。加えて、インドではアップル製品に対する需要が急増している。こうした状況を受け、同社は国際事業の経営体制を刷新し、インドに一段と比重を置く。

23年4月18日には同社初のインド直営店「Apple BKC」を商都ムンバイでオープンし、続いて4月20日に首都ニューデリーで2号店「Apple Saket」をオープンした。

米ディープウォーター・アセット・マネジメントのマネージングパートナー、ジーン・マンスター氏によれば、アップルの全売上高に占めるインド事業売上高は約3%にとどまる。だが投資家は、アップルのインドにおける潜在的な可能性に期待していると、米CNBCは報じている

インドのスマホ市場は、韓国サムスン電子や中国・小米(シャオミ)、中国・OPPO(オッポ)などが販売する低価格Android端末が主流だ。だが最近は中間層の拡大にともない、高価格帯端末を購入する消費者が増えている。

香港の調査会社カウンターポイントリサーチによると、インドでは価格が400米ドル(約5万5000円)以上の端末の全出荷台数に占める比率が19年時点で4%だった。だが、現在は10%を占めている。一方、この価格帯の端末売上高は、同国のスマホ全売上高の35%を占めている。

クックCEO「インドは転換点、中間層増加」

クック氏は決算説明会で、「多くの人が中間層に移っており、インドは転換点にある。インドにいることは素晴しい」とも述べた。ジーン・マンスター氏によればクック氏は「インド市場は中国以上に大きくなる可能性があり、今、その土台を作っている」と語ったという。

また、ロイターは、アップルにとってiPhoneの販売は1台の端末を売る以上の意味を持つ、と報じている。アップル製の他の端末やサービスに顧客を引き付けられる可能性があるからだ。iPhoneを購入した顧客は次に腕時計端末「Apple Watch」やワイヤレスイヤホン「AirPods」を追加購入したり、サブスクリプション(定額課金)サービスに加入したりする可能性があるという。

アップルは23年2月、アクティブデバイスの数が20億台を突破したと明らかにした。これはiPhoneやApple Watch、パソコン「Mac」、タブレット端末「iPad」など世界で稼働中のアップル製機器の数だ。22年1月時点の18億台から11%増加した。

CNBCによると、これはアップルの顧客基盤を示すもので、投資家にとって重要な数値となる。これを基に製品やサービスを通じて一層の収益化が期待できるという。

  • (本コラム記事は「JBpress」2023年5月10日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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