厳戒態勢の井上尚弥「ロドリゲスは対戦したボクサーの中で一番」と警戒
今月18日に(日本時間19日)イギリスのグラスゴーで、WBSS(ワールドボクシングスーパーシリーズ)の準決勝が行われる。
WBA世界バンタム級王者の井上尚弥(26)と、IBF世界同級王者のエマヌエル・ロドリゲス(26)の統一戦となる。
井上の公開練習は、報道陣をシャットアウトして、厳戒態勢のなか行われた。
この試合の勝者は、決勝戦で5階級王者のノニト・ドネアと対戦する。
試合まで2週間 万全の体制をつくる
私も経験があるが、試合が近づくと、減量やコンディション調整に過敏になる。疲労と減量のピークとなるこの時期に、コンディションを崩したくない。
通常この時期になると、ハードな練習は抑え、体調管理や減量の最終調整に入っていく。
試合の1ヶ月ぐらい前に練習のピークを持っていき、徐々に練習量を落として疲労を抜いていく。
今回は、海外での調整を見越し、当初の予定よりも5日早く、スパーリングを打ち上げている。
この時期で一番気にするのは、練習での怪我や、体調管理だ。そのため、選手や陣営にとっても一番ピリピリしている時期になるだろう。
何かひとつでも不安材料があると、それがリング場での戦いに影響する。
不安材料を一切無くして万全の体制で試合に望みたいのが、選手の本音だ。
ここからの一日、一日の積み重ねが、試合当日でのパフォーマンスに繋がっていく。
海外と日本での調整の違い
海外での調整は、日本と大きく異なる。今回は、初のイギリス遠征となり、慣れている日本とは大きく違ってくるだろう。
そのため、想定外の事態に対応できるように、調整を早めに進めているようだ。
私も海外での試合経験があるが、環境が大きく変わると、それが大きなストレスとなる。
気候や湿度、食べ物が変わる事によって、体重の落ち具合も変わってくる。
日本であれば、普段と同じルーティーンで調整が可能だが、少し環境が変わるだけで、大きく変わってくる。
例えば、ボクサーは通常最後の一週間程で、水分を一気に落として体重を落としていく。
通称水抜きという減量方法になるが、湿度や気温が違うだけで、体重の落ち幅も大きく変わってくる。
また、今の時期のイギリスは日本より寒い。気温の変化で体調も変わってくるので、日本での調整で万全にしておきたいのだろう。
井上は、今月8日に渡英するようだ。「海外で1度試合をしているけど、現地の環境が分からないので」と本人の強い希望で、試合10日前に現地入りする予定だ。
陣営も今回の大一番に向けて細心の注意を払っている。
ロドリゲスを最も警戒
井上の対戦相手のエマヌエル・ロドリゲスは、プエルトリコ出身で、将来を期待されているホープだ。
アマチュアでの経験も豊富で、ユースオリンピックでは金メダルを獲得している。ここまで、テクニックをベースに無敗で勝ち続けてきた。
大方の予想では井上が有利だが、決して楽な試合にはならないだろう。
井上自身も、「過去の対戦したボクサーの中で一番(強い)」と、ロドリゲスを警戒しているようだ。
ボクシングには相性があるため、実際に試合になって対戦してみないと、どうなるかはわからない。
優勝候補のテテが、怪我で離脱し、第1シードのライアン・バーネットバーもドネアに敗れた。
ここまできたら、どれだけ良いコンディションで試合に臨めるかが重要だろう。
その辺り、抜かりはないだろうが、井上がこの試合にかける意気込みも大きい。
世界的に注目の試合
今回の試合は井上にとって、今までのキャリアの中で、最も大きな意味を持つ試合となるだろう。
海外での注目度も上がり、パウンド・フォー・パウンドランキング(全階級を通じて最も強い)でも、日本人最高位の6位にランクインしている。
圧倒的な強さを持ち、これまで他を寄せ付けないパフォーマンスを見せてきた。
今回は当初予定されていた日程から、二転三転して、もどかしい思いもあっただろうが、その思いを試合にぶつけてほしい。
試合まであと残り僅かだが、世界をあっと言わせるパフォーマンスに期待したい。そして、ドネアとの対戦を日本で観たいものだ。