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相模原事件から3年。共同通信の調査が示した「風化」の現実が胸に刺さった

篠田博之月刊『創』編集長
2018年時点の津久井やまゆり園(筆者撮影)

 津久井やまゆり園に植松聖被告が押し入って大量殺傷を行った相模原事件から3年。報道も含めていろいろ思うところがあった。

 この2カ月ほど、植松被告への接見に「こんな夜更けにバナナかよ」の著者・渡辺一史さんと一緒に行くことが何度かあった。渡辺さんはその接見報告を共同通信などに書いていて、私もその報告に登場したりしている。

 全体としてみると、昨年の「事件から2年目」の報道に比べて、報道量が圧倒的に少なくなった。それ自体はしかたないとはいえ、一方で、川崎殺傷事件や京都アニメーション放火事件など、無差別殺傷事件が続いている。そうした事件と相模原事件は通底しているような気がして、何とも不気味としか言いようがない。

 今回の「事件から3年」のマスコミ報道の中で、私が胸に刺さったのは、共同通信が障害者の家族に実施したアンケート調査だ。こういうアンケートを取ればたぶんこういう結果が出るだろうという予測通りではあるのだが、実際に見てみると、何とも重たい気持ちになった。

 そのアンケ―トについては、7月26日付の東京新聞が紙面で大きく掲載し、ネットでも見られる。下記にアクセスしてぜひ読んでほしいと思う。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201907/CK2019072602000153.html

 この調査結果で胸に刺さったというのは、例えばこういう部分だ。

《「障害者団体などでは事件に関して話し合われているが、社会の関心は薄れてしまっている」を選んだ人が二百十三家族(76%)に上った。 次いで「事件は風化し、結局何も変わらなかった」が31%》

 事件がどんどん風化していることへの危惧は私も何度も書いてきたが、それを感じ取り、「社会の関心は薄れている」という障害者家族が76%もいるというのだ。次に多かったのが「事件は風化し、結局何も変わらなかった」31%だ。

 この社会は、あの衝撃的な事件に直面しながら、結局3年たっても何らの手も打てずにいる。そればかりか大量殺傷事件が次々と起きているのが現実だ。これは相当深刻に受け止めるべきではないのだろうか。

 

 この3年間、相模原事件の背景に何があったのかという社会的掘り下げも不十分だ。例えば障害者施設をめぐる社会的議論も深まったとは言い難い。

 月刊『創』8月号で「相模原事件から3年」の特集を組み、その中で上記の渡辺さんや、この間この問題で接してきた金沢大学名誉教授の井上英夫さんらの座談会を掲載した。そしてそれを多くの人の議論に供するためにヤフーニュース雑誌に公開することにした。

下記からアクセスすれば全文が読めるので、ぜひ読んでいただきたい。

 https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190729-00010000-tsukuru-soci

 議論すべきことはたくさん残されたままだ。秋以降、私も相模原事件をめぐるいろいろなシンポジウムなどに招かれている。この事件を風化させないためにも、ぜひ多くの人と議論していきたいと思う。

月刊『創』編集長

月刊『創』編集長・篠田博之1951年茨城県生まれ。一橋大卒。1981年より月刊『創』(つくる)編集長。82年に創出版を設立、現在、代表も兼務。東京新聞にコラム「週刊誌を読む」を十数年にわたり連載。北海道新聞、中国新聞などにも転載されている。日本ペンクラブ言論表現委員会副委員長。東京経済大学大学院講師。著書は『増補版 ドキュメント死刑囚』(ちくま新書)、『生涯編集者』(創出版)他共著多数。専門はメディア批評だが、宮崎勤死刑囚(既に執行)と12年間関わり、和歌山カレー事件の林眞須美死刑囚とも10年以上にわたり接触。その他、元オウム麻原教祖の三女など、多くの事件当事者の手記を『創』に掲載してきた。

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