竜巻テネシー州都市圏を直撃、被害拡大の3つの理由
「複数の家屋は、まるでこれまで存在しなかったかのように、破壊されている。」
現地時間3日(火)未明、アメリカ・テネシー州で複数の竜巻が発生、少なくとも25人が死亡したもようです。
上の発言は、18人の犠牲者が出たパットナム郡市長のものです。同郡では、多数の建物が損壊し、死体が道路に転がるなど悲惨な光景も見られたと言います。いまだ地下シェルターなどに閉じ込められている人もいるとみられ、多数の行方不明者が出ている状況です。
竜巻はテネシーの州都ナッシュビルの町も襲い、少なくとも2人の死者が出ています。
市内は瓦礫で散乱、車は積み重なり、市最大のミュージックホールや学校も被害に遭いました。
また民主党候補の代表を決めるスーパーチューズデーの15か所の投票所も被害を受けたと報じられています。
さらにJohn C. Tune空港では、航空機がぶつかり合ってもみくちゃになっている様子が映されています。カントリーミュージックのスター、ダークス=ベントリーは、竜巻が発生する数時間前に、プライベートジェットで同空港に着陸、危機一髪難を逃れたといいます。
被害拡大の3つの理由
被害が拡大した理由は、竜巻の強さ、時間帯、場所が関連していたと考えられます。
【竜巻の強さ】
気象局によると、3日テネシー州には少なくとも4つの竜巻が発生し、その強さは竜巻の指標である「改良型藤田スケール(EFスケール)」で2と3(※)のレベルに相当するとのことです。
推測される風速は最大74m/sです。これは北海道や九州新幹線の最高速度とほぼ同じ速さと言えます。一般にEF3の竜巻は、「頑丈に建てられた家屋のすべての階が壊れるなど深刻な被害が出る」レベルの強さです。
【時間帯】
竜巻の発生時間は午前2時頃と、多数の人々が就寝中の時間帯でした。
一般に竜巻の発生時間で多いのは15時から19時です。それは日中、空気が温められて上昇気流が起きるからです。しかし湿度が十分に高かったり、気温が下がらなかったりすると、夜間でも発生します。夜間の竜巻は、昼間の竜巻に比べて2倍死に至る危険が高くなるというデータがあります。
【都市を直撃】
ナッシュビル一帯は190万人が住んでいる、いわゆる人口密集地です。
都会の風は高層ビルなどによって乱れやすいことなどから、都市で竜巻が起きることは多くないともいわれています。ただ発生することはあって、2008年には500万人が暮らすジョージア州アトランタでEF2の竜巻が起きて、高層ビルの窓のガラスが割れるなど被害が出ました。
まだ残る竜巻のおそれ
テネシー州に竜巻を発生させた寒冷前線は、ゆっくりと東に進んでいます。5日(木)にかけてルイジアナ州やアラバマ州といったアメリカ南東部で竜巻発生のおそれがあります。
3月から5月は、アメリカ南部で竜巻が多く発生する期間です。今は竜巻シーズンが始まったばかりなのです。
※その後の検証で、パットナム郡の竜巻の強度は、推定風速78メートルのEF4となりました。これはテネシー州としては2009年以来もっとも強い竜巻です。