50代までは実質的にほぼ全員がスマートフォン利用者…ガラケーとスマートフォンの利用率推移
この数年で携帯電話のメインとなる利用機種はガラケー(従来型携帯電話)からスマートフォンへとシフトし、勢力図も多様な変化を見せている。その実情を総務省情報通信政策研究所が2023年6月に発表した「令和4年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)などの調査結果を基に確認する。
次以降に示すのは主要なモバイル端末である従来型携帯電話、スマートフォン、そしてその両機種の動向と密接な関係があるタブレット型端末における利用率に関して、「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」において過去の分をさかのぼり、10年分の推移を記したもの。単純比較がしやすいよう、従来型携帯電話とスマートフォンの縦軸の区分は同一にしている。
まずは従来型携帯電話。なお調査票には「携帯電話(スマートフォンを除く。 PHSを含む)」とあり、厳密にはPHSも含まれる。また、スマートフォンやタブレット型端末とは別個選択肢で質問されており、複数回答形式であることから、複数種類の端末利用者の場合は、それぞれに対して「利用している」と回答するため、全項目を合わせると100%を超える属性は当然存在する。
2013年の時点では約5割の利用率を示した従来型携帯電話だが、その翌年には42.2%に下落。それ以降も漸次利用率は減少しつつある。男性よりは女性の方が、高齢層よりは若年層の方が下げ幅が大きい。従来型携帯電話からスマートフォンへのシフトが(両用からスマホ限定も合わせ)生じていることがうかがえる。
50~60代、特に60代の利用率減少は緩やかではあったが、2017年以降は小さからぬ下げ幅を示している。中年層まで加速度的に進んでいたスマートフォン化の波が、50代以降にも到来した感はある。それでも60代ではまだ16.2%の人が利用している。
続いてスマートフォン。
2013年の時点では52.8%でしかなかった利用率も、直近の2022年では97.1%と9割台後半にまで達している。男女の差はほとんど無く、年齢階層別では20代はもともと高く、2013年の時点ですでに9割近く。
興味深いのは学生・生徒における上昇率の変化。学生・生徒では2013年から2014年において24.6%ポイントもの上昇が確認できる。同時期において爆発的な普及を示したコミュニケーション系アプリLINEが、この伸びの一翼を担ったものと推測できる。
直近年では10代でここ数年のほぼ横ばいの流れから転じての伸びが確認できる。この伸びにより、「10~50代は実質的にほぼ全員がスマートフォン利用者」(95.0%以上を対象とする設定)と表現できるようになったことは注目に値する。
最後にタブレット型端末。こちらは上記2種端末とは縦軸の区切りを異にしている。調査票では「タブレット端末(iPad、 Nexus9、 GalaxyTab など)」とあり、また別項目では「電子書籍リーダー(Amazon の Kindle など)」の表記もあるため、回答者が誤認識しない限りは電子書籍リーダーの類は該当しない。
スマートフォンほど急速な伸び方ではないが(縦軸の区分が異なることに注意)、少しずつ増加の動きを示している。女性よりは男性の方が伸び方が大きかったが、2017年では女性が大きく伸び、男性を上回ってしまったのが興味深い。ただし2018年以降は男性の方が伸び、再び男性の方が大きな値となっている。直近の2022年では年齢階層別において、10代と30~40代が4割を超える利用率。60代でも3割を超えている。
今回精査した3種端末に関する値は、現時点では11年分の値が公開されている。グラフの体裁上、直近10年間分を検証の対象としたが、グラフに反映できなかった分も合わせ、非常に有意義なデータには違いない。
来年以降も継続して調査が実施され、各端末の値が取得されることを願いたいものだ。
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※令和4年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
今調査は2022年11月5日から11月11日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。
調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「経年での利用時間などの変化については、調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きを入れている。さらに2020年分の調査については「令和2年度調査は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う、11都府県を対象とした緊急事態宣言下で行われたものであることにも留意が必要」との補足があった。
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