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東京の高校サッカーから豪州・北朝鮮のU-19代表へ。アジア舞台で活躍見せる

川端暁彦サッカーライター/編集者
U-19オーストラリア代表コナー(左)と同北朝鮮代表の梁賢柱(写真:佐藤博之)

成立学園高校出身のDFが大一番に出場

タジキスタン戦のコナー。左からの攻撃参加でチャンスを作っていたが……
タジキスタン戦のコナー。左からの攻撃参加でチャンスを作っていたが……

10月13日から開催中の19歳以下のアジア王者を決める戦い、AFC・U-19選手権。来年のU-20ワールドカップ予選を兼ねて開催されているこの大会にはU-19日本代表チームが出場しているが、彼ら以外にも日本の高校サッカーで育った選手たちがピッチに立っている。

一人は成立学園高校を経て、オーストラリアのアデレードのアカデミーチームへ加入。新シーズンからブリスベン・ロアーとの契約を勝ち取った、DFオトゥール・コナーである。日本人の母を持ち、高校の3年間を日本で過ごした左サイドバック。20日に行われたグループステージ最終節のタジキスタン戦は、「勝てば準々決勝の日本戦へ進出」というビッグゲーム。以前「間違いなく日本に来て成長できた」と胸を張っていた男は、この大一番で初先発を飾った。

立ち上がりから攻撃の意欲は十分で、プレーは悪くなかった。「100%、日本と対戦したかった!」と振り返るとおりのモチベーションも彼の背中を押していたのだろう。持ち味であるオーバーラップからのクロスを連発。最大のビッグチャンスだったPKを奪ったのも、彼の左足からのキックが起点だった。

最後は足がつりそうになりながらも、日本の高校サッカーで鍛えた「頑張って頑張って」(コナー)の精神で走り続けたが、結果は無情。スコアは0-0のまま最後まで動かず、オーストラリアはまさかのグループステージ敗退となってしまった。コナーは「これだけチャンスを作ったのに、『それ決めないと!』というのが入らなかった。自分も、もっといいクロスを出せたはず」と、ガックリ肩を落とした。

とはいえ、監督が交代し、一次予選からメンバーも刷新される中で生き残り、この大一番で起用されたことは彼のこの1年での進歩の証明のようなものだろう。ブリスベン・ロアーという強豪との契約を2週間のトライアルの末に勝ち取ったことも、それを裏付けている。1次予選のラオスで会って話したときも素敵な笑顔で締めくくってくれたが、今回もそれは同じ。こちらが「次は東京五輪で取材させてね」と言うと、ニコリと笑ってうなずきながら、力強く握手を交わしてくれた。

在日選手2名は「選手権」に切り替え

敗色濃厚となった第3戦後半のベンチ。左から2人目が金、右端が粱
敗色濃厚となった第3戦後半のベンチ。左から2人目が金、右端が粱

またこちらもグループステージ敗退となってしまったU-19北朝鮮代表にも、二人の高校サッカープレーヤーがエントリーしていた。東京朝高のFW梁賢柱(リャン・ヒョンジュ)とDF金泰ウク(キム・テウク)である。在日の選手がこうして代表チームに名を連ねること自体はもはや珍しくない。特に梁は昨年のU-17ワールドカップでも活躍した選手であり、今大会もチームの主力選手として3試合すべてに出場を果たしている。

無念の敗退という結果が残ったが、梁は「個人としては自分の長所であるドリブルからのシュートの形は通用していたと思うし、得点も決めることができた」と一定の手ごたえをつかんだ様子だった。もっとも、「守備の部分で自分は劣っていたし、けがからの復帰だったので体の動かない部分があった」と課題も感じつつの終幕だった。チームとしても、欧州留学から帰国して合流した選手が多く、連係を作る時間が足りず、噛み合わなかったのが敗因となった。

一方、金はイラクとの第2戦のみに先発フル出場したが、優勝候補を相手にしての結果は0-4の大敗。「普段やっている場所とは環境がまるで違う中で、自分の力を出せる部分もあったけれど、ずっと足りないと感じさせられた」と、うなだれた。期待の大型DFだけに、この悔しい経験を今後に活かせるかどうかだろう。

二人にはもう一つ、分かりやすい目標も残っている。高校サッカー選手権大会の東京都予選で、彼らの在籍する東京朝高はBブロックのベスト4に残っているからだ。11月6日から再開となるこの予選を制して「選手権」のピッチに立つことは大目標となる。粱は「U-19日本代表の(堂安)律や原(輝綺)によろしく伝えてください」と言った上で、「しっかり勝って選手権(の本大会)へ行く」と意欲を語り、帰りのバスに乗り込んでいった。

日本の高校サッカーから育った3人の選手が他国の代表としてエントリーしていたAFC U-19選手権。彼らの存在が日本サッカー界の育成能力の一端を証明するものであることは確かだが、もちろん日本代表チームの結果という形でも証明したいところ。日本代表の世界切符を懸けての戦いは、日本時間24日の22時15分に幕を開ける。

サッカーライター/編集者

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカークリニック』『Footballista』『サッカー批評』『サッカーマガジン』『ゲキサカ』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。著書『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソルメディア)ほか。

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