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なぜバルサはD・オルモを狙っているのか?カンテラーノの復帰…戦力アップの必要性。

森田泰史スポーツライター
スペイン代表で活躍したダニ・オルモ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

復帰は簡単ではない。ただ、可能性は残されている。

バルセロナは昨季、無冠でシーズンを終えた。2024−25シーズンにおいてはタイトル獲得が期待され、戦力アップの必要性に駆られている。

ゴールを喜ぶバルセロナの選手たち
ゴールを喜ぶバルセロナの選手たち写真:なかしまだいすけ/アフロ

「以前に比べたら、我々の財政は、かなり良くなった。まずは、危機的な経済状況から、クラブを救わないといけなかった。そして、いま、普通の状態を取り戻そうとしている」

「こんにち、我々は、話題にされているような選手の獲得に着手できる。さまざまなオペレーションに、取り組むことが可能だ。必要があれば、スカッドを向上させるために、動くつもりだ。しかし、クラブのストラクチャーを不安定にするような決断はしない。安定性を意識しながら動く」

これはジョアン・ラポルタ会長の言葉だ。

■トップターゲットと照準

バルセロナのトップターゲットは2人だ。ニコ・ウィリアムスとダニ・オルモである。

ニコに関しては、バルセロナとパリ・サンジェルマンが強い関心を示している。また、選手側にアトレティック・クラブ残留の意思があり、交渉は難航している。

そして、ダニ・オルモだ。

ダニ・オルモは、先のEURO2024にスペイン代表の選手として出場し、優勝に大きく貢献した。7試合で3得点を挙げ、ハリー・ケイン、イバン・シュクランツ、ジョージス・ミカウターゼ、ジャマル・ムシアラ、コディー・ガクポと同得点数で、ゴールデンブーツ(得点王)に輝いた。

スペイン代表で一緒にプレーしたダニ・オルモとヤマル
スペイン代表で一緒にプレーしたダニ・オルモとヤマル写真:Maurizio Borsari/アフロ

2023−24シーズン、ダニ・オルモは苦しんでいた。度重なる負傷で、29試合で欠場を余儀なくされた。EURO2024に向けても、コンディションが不安視されていた。

しかしながら、ルイス・デ・ラ・フエンテ監督はダニ・オルモを信頼し続けた。大会の終盤にペドリ・ゴンサレスが負傷すると、ダニ・オルモの重要性は増した。結果、大会得点王とUEFAが選出するベストイレブンに選ばれ、ラ・ロハの選手としてビッグタイトルを獲得している。

■バルサのカンテラーノ

ダニ・オルモは、スペインとクロアチアにルーツを持つ。バルセロナのカンテラーノだが、16歳の時にディナモ・ザグレブからオファーが届き、移籍を決断した。

ルカ・モドリッチ、マルセロ・ブロゾビッチ、マリオ・マンジュキッチ、マテオ・コバチッチ…。ディナモ・ザグレブからは、素晴らしいタレントが若くして活躍し、世界に羽ばたいている。そのオファーは、ダニ・オルモにとって、非常に魅力的だった。

そして、21歳の時、ライプツィヒからオファーが届く。当時、ユリアン・ナーゲルスマン監督とマルクス・クレシェSD(スポーツディレクター)が、直々にコンタクトを取り、ダニ・オルモの獲得を決めた。

「21歳の頃、僕が重視していたのは、試合に出ることだった」とはダニ・オルモの弁だ。

「ビッグクラブに移籍して、ベンチで過ごす、というのは嫌だった。自分を本当に欲してくれているクラブに移籍しようと思っていた」

シュートを打つダニ・オルモ
シュートを打つダニ・オルモ写真:ロイター/アフロ

これまで、ビッグクラブでプレーした経験はない。それでも、ダニ・オルモのクオリティに疑いの余地はない。

ダニ・オルモは、EURO2024で、【4−2−3−1】のトップ下でプレーした。ただ、ポジションはトップ下、左右インテリオール、左右ウィングとアタッカーとしてなら、どの位置でもプレーできる。ポリバレントで、賢い選手だ。

テクニック、ドリブル、パス、シュート、全ての面で高いレベルを備えている。ライン間でボールを受けるのが上手く、なおかつ決定力がある。26歳とキャリアの円熟期を迎えようとしているが、これまでビッグチームが触手を伸ばしてこなかったのが不思議なくらいだ。

■ハンジ・フリックのシステムで

バルセロナは今夏、ハンジ・フリック監督を新たに迎えて、再スタートを切っている。バイエルン・ミュンヘンとドイツ代表で指揮を執った経験のあるハンジ・フリック監督としては、ブンデスリーガで長くプレーしてきたダニ・オルモは頼れる選手になるはずだ。

バルセロナの【4−3−3】で、ダニ・オルモに与えられるのは左WGのポジションだろう。中盤には、負傷明けのガビ、イルカイ・ギュンドアン、フレンキー・デヨング、ペドリとタレントが揃っている。右WGにはラミン・ヤマルがいて、バルセロナはその逆サイドのアタッカーを欲している。

ダニ・オルモは技術が高く、連携力があり、かつ判断力にも優れている。左の大外レーンをアレッハンドロ・バルデに任せながら、ハーフレーンでガビやペドリ、CFのロベルト・レヴァンドフスキとコンビネーションしながら崩していくこともできる選手だ。

ドリブルするフェルミン
ドリブルするフェルミン写真:ロイター/アフロ

ダニ・オルモは、2027年夏までライプツィヒとの契約を残している。契約解除金は6000万ユーロ(約98億円)に設定されていたが、それは今年7月20日をもって、有効性を失った。

マンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッド、リヴァプール、バイエルン・ミュンヘン…。複数クラブが、ダニ・オルモを狙っている。

そして、無論、バルセロナだ。ラ・マシア出身の選手を、再び手元にーー。様々な思惑が、複雑に絡み始めている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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