飲食店での総額表示の会話に違和感 「980円(税抜価格)」や「980円+税」がダメな理由
総額表示
飲食店に訪れた際に、メニューに消費税やサービス料が別になった値段だけが記載されていたことはありませんか。会計の際に、消費税やサービス料が加算されて、思ったよりも値段が高かったという人は少なからずいるかと思います。
先日Threads(スレッズ)で、気になるポストを拝見しました。
投稿者が、税抜きで総額表示している飲食店に問いかけたところ「商品の価値を記載している」と回答され、「納得しすぎた」とポストしています。特定の誰かをターゲットにしたいわけではないので、あえてリンクは張りません。
飲食店の総額表示について考察していきましょう。
飲食店の料金
飲食店の料金について説明します。
料理はコースおよびアラカルトに大別されており、コースでは、アップグレードすれば値段が上がりますが、ボリュームの調整では、基本的に値段は変わりません。アラカルトではハーフサイズが用意されている場合があり、値段も通常ポーションよりも安いです。
ビバレッジは、ペアリングか個別オーダーで注文します。ペアリングでは、客が飲む分量によってある程度の調整はありますが、料金は変わりません。個別オーダーであれば、一合ではなく半合、1グラスではなくハーフグラスで対応してもらえることもあり、料金は安くなります。
他には、テーブルを専有する席料、席料にパンも付いたコペルト、生演奏を聴けるカバーチャージ、個室料金、窓際確約料金などが加わることは珍しくありません。店によっては、週末料金やピークタイム料金が設けられています。
これらを含めた上で、消費税やサービス料が上乗せされるという仕組みです。
総額表示の義務
2021年4月1日から、総額表示が義務化されました。
事業者が消費者に対して行う価格表示が対象であり、店頭の値札、棚札などのほか、チラシ、カタログ、広告など、どのような表示媒体でも、対象となります。
・令和3年4月1日より、税込価格の表示(総額表示)が必要になります!/財務省
財務省や国税庁によると、総額表示とは、消費税を含めた税込価格を表示すること。その理由は、本体価格の表示だけでは会計するまで実際に支払う金額がわかりづらい上、お店によって税抜と税込が混在しており、同一商品の価格の比較がしづらいからです。
総額表示義務は、実のところ、2004年4月1日から実施されていました。ただ、2度の消費税率の引上げに際して特別措置法が設けられており、その期間が終了したので、緩和が解消されたと考えてよいでしょう。
表示例
では、どのように表示すればよいのでしょうか。
たとえば、本体価格が980円である場合を考えてみます。
以前であれば「980円(税抜価格)」「980円(本体価格)」「980円+税」などの形で、税抜価格のみの表示も認められていましたが、これでは不十分となりました。
「1,078円(税込)」「1,078円(うち税98円)」「1,078円(税抜価格980円)」「1,078円(税抜価格980円、税98円)」「980円(税込1,078円)」など、はっきりと“総額”が提示されなければなりません。
これによって、消費者はいくら支払えば、その商品やサービスが購入できるか一目で分かるようになり、同一商品の価格の比較も容易になります。
ちなみに、サービス料については総額表示の対象となっていません。ただ、ホテルのレストランなどでは、サービス料も含めた金額を表示しているところもあります。
違反するとどうなるのか
では、違反するとどうなるのでしょうか。
実際のところ、「総額表示義務」に違反した際の罰則は、具体的に定められていません。そのため、価格を総額表示しなくても、消費税法違反で処罰はされないのが現状。
ただ、総額表示は国が定めた義務です。
多くの飲食店が総額表示をしている中で、総額表示をしていないとなると、その飲食店は「不親切だ」と思われたり、税抜価格を総額だと勘違いした客とトラブルになるかもしれません。消費者庁に苦情が入ることも考えられます。
ほとんどの飲食店が総額を表示している中で、あえて総額表示を許否することに、メリットを見出すことは難しいです。
消費者のため
そもそものところ、総額表示は消費者のためです。
前述したように、総額表示の方が本体価格だけの表示よりも、いくら支払えばよいのか圧倒的にわかりやすく、消費者に寄り添っています。
消費者のために定められたものなので、あえてしたがわない飲食店は、消費者のためを考えているとは思えません。実際よりも安く見せ、気付かれないように総額を上げようとしていると見なされても仕方ないでしょう。
消費者の誤解を生まず、明朗会計となるように、飲食店には是非とも総額表示の義務にしたがっていただきたいと思います。