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ラマダン期間中のパキスタン 気温52℃を観測

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
6日、ラマダンに入ったパキスタン・ラーワルピンディーの町(写真:ロイター/アフロ)

今週パキスタンは、猛暑ならぬ、激暑に見舞われています。

7日(火曜)パキスタン中部の町・シビでは、日中気温が52℃に達しました。その他ジャコババードでは51℃、遺跡で有名なモヘンジョダロでも49℃を記録。ちなみにジャコババードでは翌日8日もまた50.5℃となり、2日連続の50℃台となりました。これはこの時期の平均よりも5℃以上も高い気温です。

パキスタン気象局によると、この異常な暑さは9日(木曜)も続き、再び50℃以上の気温が観測される可能性もあるということです。その後一旦は落ち着くものの、モンスーン(雨季)が始まる7月までは、高温に注意する必要があります。

ラマダンと熱波

懸念されるのは、6月6日から始まったラマダンです。イスラム教徒の人たちは、ラマダン期間中、日の出から日の入りまでの最も暑い時間帯に一切の飲食が禁じられています。水すら口にすることはできないのです。50℃を超える激暑の中では、当然のことながら、熱中症や脱水症状などのリスクが高まり、命の危険が伴います。

実際、去年の6月下旬もまた、熱波とラマダンの時期が重なり、パキスタン南部で1,500人もの人々が亡くなっています。停電も起き、冷房が使用できなかったことなども被害を大きくした原因となりました。

今年は被害が広がる可能性がある

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パキスタンの例年のモンスーン入りは、東部で7月上旬頃、中部で7月中旬頃です。つまり、その直前である6月は、太陽の日差しが強くなる一方で、雨がほとんどないことから、一年で最も暑い時期なのです。この時期にラマダンが重なると、多数の犠牲者が出る可能性が高まります。

ラマダンの時期は年によって変わるのですが、今年の期間は6/6~7/5で、最暑期と重なってしまっています。今年は例年以上に厳しい暑さが続いていることを鑑みると、被害者が増える可能性も否定できないのです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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