「日本政府はミャンマーの人々の声を無視しません」丸山大使が大使館前でデモ参加者とビルマ語で直接対話
丸山市郎・駐ミャンマー日本大使は2月20日、ミャンマー最大都市ヤンゴンの日本大使館前に訪れたデモ参加者との直接対話に応じ、「日本政府はミャンマーの人々の声を無視していません」と述べた。
現地投稿のツイッターやフェイスブックなどSNSでは、丸山大使が20日、日本大使館前に集まるデモ参加者とビルマ語で対話する様子が映し出されている。日本の支援を求める多くのデモ参加者のほか、テレビカメラやスマートフォンを手にする大勢のメディア関係者に囲まれながら、丸山大使はデモ参加者が持参した要請文を受け取った後、2分余りにわたってビルマ語で挨拶をした。
現地メディアによると、丸山大使は「皆様の要請文は責任を持って日本政府に提出する」と述べ、「私たちが軍隊に求めているのは、ミャンマーの指導者、アウン・サン・スー・チー氏の釈放です。ウィン・ミン大統領を含む逮捕されたすべての政治家は、直ちに釈放されるべきです。私たちは、あらゆる問題に対する平和的かつ民主的な解決策を求めています」とデモ参加者に訴えた。
ミャンマーのデモ参加者が持参した要請書には、日本が軍事独裁者に投資しないことや、デモ参加者に対するミャンマー治安当局の暴力を監視し、必要な支援を提供することを求める内容が記されている。デモ参加者を代表して1人の女性が丸山大使の前で日本語で要請書を読み上げた。
宮城県出身の丸山大使は1978年に外務省に入省した。ノンキャリアと呼ばれる外務省特別専門官として2018年3月に異例の大使抜擢となった。ビルマ語専門職として初めての大使となる。ミャンマー勤務は語学研修時を含めて5回目となり、豊富な駐在歴からスー・チー氏側と国軍の双方に人脈を築いているとされる。
SNS上では、デモ参加者との直接対話に応じた丸山大使の行動を称えるコメントが相次いで投稿されている。
●米バイデン政権はすでに経済制裁を実施
米国のバイデン新政権は、ミャンマーの民衆の声に応じるかのごとく、人権や民主主義重視の観点からミャンマーへの制裁を実施した。
これに対し、日本政府はミャンマー国軍とは軍政時代から関係を築いてきたことや、国際的に孤立したミャンマーの軍指導部が中国へ傾斜しかねないとの懸念から、経済制裁に及び腰になっている。そして、対話を通じての民政復帰を促す方針を示している。しかし、軍に対するミャンマー民衆のデモが日に日に全土で広がり、治安当局の弾圧も強まっている。
現地の報道によると、ミャンマー第2の都市マンダレーでは20日、治安当局がデモ参加者2人をその場で射殺した。治安当局は、救急車で救助に駆け付けた救急隊員ら医療従事者に対しても発砲したと伝えられている。医療スタッフへの攻撃は、国際人道法違反の可能性がある。
日本政府をはじめ、国際社会はミャンマー軍指導部にぐっと強い圧力姿勢を見せる必要があるだろう。丸山大使のミャンマー人脈を通じて、同国の民政復帰のために日本の外交力を大いに発揮していただきたいものだ。
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