元新幹線保線職員が語るドクターイエローとの想い出!こんなに人気者になるとは思わなかった
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kurisushigeyuki/article/01802325/title-1718288135761.jpeg?exp=10800)
本日6月13日のニュースで、ドクターイエローが引退すると発表がありましたね。
見ると幸せになれるといわれ、子どもから大人まで幅広い人気を誇る黄色い新幹線ですが、実は新幹線が開業した国鉄時代の1964年から活躍してきました。
「お客さんは乗れない特別な新幹線ですよ」との意味合いも含めて、当時から色は黄色でした。
筆者は旧国鉄時代には保線職員であり、必要なときにドクターイエローに乗車して、軌道検査に立ち会っていたので、とても寂しい気持ちがあります。
そこで、旧国鉄時代におけるドクターイエローとの想い出を伝えしましょう。
国鉄当時は「高速軌道検測車マヤ車」が正式名称だった
![出典:中日新聞](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kurisushigeyuki/article/01802325/image-1718288469395.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
筆者は1981年(昭和56年)4月に、旧国鉄の新幹線総局に入社し、新幹線の保線業務に約10年以上携わってきました。
当時はドクターイエローなんて洒落た愛称もなく「高速軌道検測車マヤ車」との名称で、今のように多くの熱狂的なファンがいた訳ではありません。
車両も新幹線当初の0系で、基本的に職員の間では「マヤ車」が愛称でした。
当時は現代のように、スマホはなくカメラもフィルムカメラでしたが、新幹線は旅行で利用する方が多かったので、ホームに止まっていると現代のように、多くの方がカメラで撮影していましたね。
もしかするとその中には、筆者が乗り込む様子が写った写真があるかもしれません。
基本的に線路の保守を行う車両は黄色となる
![出典:保線ウィキ](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kurisushigeyuki/article/01802325/image-1718289147839.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
鉄道における保守作業車は、基本的に車両の色は黄色です。この画像は新幹線の線路を最終確認する「確認車」です。
新幹線の線路保守作業は、終電が終わってから行われ午前3時~4時には完了します。その後に、確認車が線路を走行し正常な軌道状態になっているかを点検します。
この確認車によって最終的に線路に異常がないことを報告しないと、新幹線は走ることができないのです。
筆者は当時、確認車のオペレーターでした。この確認車はJRになってからの車両で、国鉄時代は全体が黄色でしたね。
交換用のレールを運搬する車両
![photo AC](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kurisushigeyuki/article/01802325/image-1718291658717.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
これは、線路交換をする際にレールを運搬する車両です。
新幹線では当時、1本200mのレールを現場に運搬していました。
ドクターイエローのダイヤを新幹線の職員は誰もが知っていた
![出典:マイナビニュース](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kurisushigeyuki/article/01802325/image-1718289577790.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
当時のドクターイエローも一般の時刻表には記載がありませんが、新幹線に携わる職員は誰もがドクターイエローのダイヤを知っていました。
上記のような翌月分のダイヤ表が月末に届き、所内に掲示されるのです。筆者たちは自分の管轄内で走行する、ドクターイエローのダイヤを強調して確認し時間を控えます。
そして、乗車立ち合い検査が必要なときに、時間を間違えずにホームで待機し車両に乗り込みます。
基本的にドクターイエローの停車時間は約1分と短いため、少しでも遅れると検査に立ち会えなくなります。
そのため、何回も時間を確認して約10分前からホームで待機し、素早くドクターイエローに乗り込むのです。
車両には大きなチャート台が設置
現代はICTによって、コンピューターで電子的にデータが記録されていますが、当時はパソコンもフロッピーディスク時代ですから、ドクターイエローでの検査も超アナログです。
トレーシングペーパーのロール紙がチャート台を流れていき、その上に何種類ものペンで波形が記録されていきます。
例えば、線路の継ぎ目の溶接部は凸凹ができやすく「ドン」と縦揺れを感じます。そのときには波形が大きくなるので、その場所を赤鉛筆でマーク。また、横揺れがあった場合も波形が大きく振れるので同じくマークします。
現場では数ミリの凹凸などですが、200キロ以上で走る新幹線にとっては、決して小さい衝撃ではありません。
当時は「コーヒーがこぼれない線路を目指す」がスローガン
現代の新幹線は線路も車両の性能もアップしているため、座席のトレイにコーヒーを置いていても、揺れでこぼれることはありません。
しかし、当時0系が活躍していたころは、横揺れが激しいとコーヒーがこぼれることも。そのため、筆者たち保線従事者は「コーヒーがこぼれない線路を目指す」がスローガンでした。
新幹線が快適に走れる線路を、ドクターイエローで取得したデータを解析して、点検・保守をしていたのです。
こんな超人気車両になるとは思ってもいなかった!
![photo AC](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/kurisushigeyuki/article/01802325/image-1718290985148.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
JR西日本では2027年でドクターイエローがなくなり、黄色い新幹線を見ることができなくなります。
自分が実際に乗車していたドクターイエローが、見られなくなるのは寂しい気持ちが大きいです。
しかし、国鉄時代からJRに移行した初期までは、マヤ車として現在と同じように仕事をしていたのに、現代ではドクターイエローとの愛称が付き、超人気者になるとは思いもよりませんでした。
今後も黄色ではありませんが、快適な新幹線の走行をサポートする軌道検査は継続されます。
黄色ではありませんが、新幹線の安全を守る車両が走っていることを、忘れないでくださいね。