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台風15号が日本のはるか東で温帯低気圧化 同じ勢力なのに「海上台風警報」から「海上暴風警報」に

饒村曜気象予報士
日本のはるか東を北上中の台風15号の雲(10月14日15時)

台風15号が温帯低気圧に

 令和5年(2023年)10月7日15時にトラック諸島近海で発生した台風15号は、発達しながら北西に進み、大型で猛烈な勢力となってマリアナ諸島に達し、その後、北上しました(図1)。

図1 小笠原近海を北上中の台風15号の眼(10月12日15時、中心気圧は900ヘクトパスカル)
図1 小笠原近海を北上中の台風15号の眼(10月12日15時、中心気圧は900ヘクトパスカル)

 そして、進路を北東に変え、次第に勢力を弱めながら小笠原諸島の東海上を通って日本のはるか東に達し10月14日21時に温帯低気圧に変わりました(図2)。

図2 台風15号の進路予報(10月14日18時)と10月14日21時に温帯低気圧に変わった海域
図2 台風15号の進路予報(10月14日18時)と10月14日21時に温帯低気圧に変わった海域

強い台風から発達した低気圧へ

 気象庁は船舶向けに海上警報を発表し、安全な航海を支援しています。

 この海上警報には、日本近海に対して発表する地方海上警報と、北太平洋西部(南シナ海を含む)に対して発表する全般海上警報の2種類があり、表1の定義に従って発表されています。

表1 主な全般海上警報の種類(表の現象が発生しているか24時間に以内に発生すると予想される場合に海上警報を発表)
表1 主な全般海上警報の種類(表の現象が発生しているか24時間に以内に発生すると予想される場合に海上警報を発表)

 台風15号が温帯低気圧に変わる6時間前の、14日15時には、中心気圧950ヘクトパスカル、最大風速は75ノット(約40メートル毎秒)で、海上台風警報が発表されていました(タイトル画像、表2)。

表2 台風15号に関して発表された全般海上警報
表2 台風15号に関して発表された全般海上警報

 また、中心付近まで温暖前線と寒冷前線がのびており、温帯低気圧になりかかっていましたが、最大風速が50ノット(約25メートル毎秒)の範囲は南東側150カイリ(280キロ)、北西側120カイリ(220キロ)でした(図3)。

図3 船舶向け地上天気図(左は10月14日15時、右は10月14日 21時)
図3 船舶向け地上天気図(左は10月14日15時、右は10月14日 21時)

 台風15号は、10月14日21時に温帯低気圧に変わり、中心から閉塞前線ができ、温暖前線と寒冷前線とつながりましたが、中心気圧950ヘクトパスカルのままでした。

 最大風速は70ノット(約35メートル毎秒)と5ノット(5メートル単位でいうと約5メートル毎秒)小さくなりましたが、台風であれば海上台風警報のランクのままです。

 ただ、低気圧に変わりましたので、海上暴風警報の発表となりました。

 最大風速が64ノット(約33メートル毎秒)に満たなくなった(衰えた)ための海上暴風警報の発表ではありません。

 台風の中心付近で風が非常に強いという構造から、温帯低気圧の広い範囲で非常に強い風が吹くことがあるという構造に変わったために海上警報の変更です。

 最大風速が30ノット(約15メートル毎秒)から70ノット(約35メートル毎秒)の範囲は、低気圧中心の南東側800カイリ(1500キロ)以内と、北西側500カイリ(950キロ)以内になりました。つまり、温帯低気圧に変わったことで、台風の暴風域よりもはるかに広い海域で暴風が吹く可能性が高まったのです。

 これは、船舶にとって非常に危険なことであり、気象庁では、このことを北太平洋西部を航行中の船舶に対して警戒するように呼びかけているのです。

タイトル画像、図1の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。

図3、表1、表2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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