黒く塗装されたB-1B爆撃機を「死の白鳥」と呼ぶメディアのチェック機能の無さ
北朝鮮に関する報道で度々話題になるアメリカのB-1B爆撃機に対して、各メディアは「死の白鳥とも呼ばれている」と紹介しています。しかし、どうして黒く塗装されているB-1B爆撃機が「白鳥」なのか疑問に思わないのでしょうか? 結論から言えばこれはある韓国メディアの思い込みによる勘違いを発端とし、途中で誰も間違いを指摘しないまま多数の韓国メディアが呼び方を真似し始め、日本メディアにまで伝わってしまった誤報なのです。
韓国のナムWiki(木のWiki)では発端となった経緯が調べられて掲載されています。
なにしろB-1B爆撃機の運用当事者であるアメリカで「死の白鳥」とは一切呼ばれていません。B-1Bの公式ニックネームは「ランサー」(槍兵)であり、非公式のニックネームはB-1からB-ONEを連想した「ボーン(BONE)」という別名があるだけです。しかもB-1Bは夜間進入用に黒く塗装され、とても白鳥とは呼べません。核攻撃能力も外されているので死のイメージも薄れています。なお核攻撃用に熱線対策で白く塗装されていたB-1A時代にも白鳥というようなニックネームは一切使われていませんでした。韓国メディアが最近になって黒いB-1Bを突然、死の白鳥と呼び出したのです。
混同した理由として推測できるのは二つです。一つはナムWikiで指摘されているようにロシアのTu-160爆撃機との混同です。Tu-160は白く塗装されていて形状もB-1とよく似ており、こちらは非公式ニックネームとして「白鳥」と呼ばれています。もう一つ考えられる理由は1980年代に大ヒットした新谷かおる先生の漫画「エリア88」で、白いB-1A爆撃機が登場した話数のタイトルが「死を運ぶ白鳥」でした。ここから連想して思い込んだ可能性が有り得ます。
「死の白鳥とも呼ばれている」とは誰もそんな風に呼んでいなかったのに、メディアが実体の無い「呼ばれている」を繰り返して報道していった結果、どんどん広まってしまって実際にそう呼ばれ出す「嘘も100万回言えば真実になる」という捏造がリアルタイムで行われている様子が目の当たりとなりました。今回の件は単なる思い込みによる勘違いが発端で悪意がある捏造とは言えませんが、もしこれが悪意のある捏造が仕掛けられたらと想像すると、伝聞で報道を繰り返し続ける事は時に危ういものだと感じざるを得ません・・・
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