芸人と医師。その二つをやり続けてきたからこそ、しゅんしゅんクリニックPが今感じること
芸人と現役医師という二つの顔を持つしゅんしゅんクリニックPさん(40)。4月23日にエッセイ「40歳を過ぎるとなぜ健康の話ばかりしてしまうのか?」(ヨシモトブックス)を上梓するなど独自の活動を展開しています。オンリーワンの道を歩むからこそ痛感する世の中の変化とは。
視線の変化
今、医者と芸人の仕事の割合で言うと50:50くらいだと思います。医者としては火曜、水曜、木曜に病院に勤務して、それ以外の曜日に芸人の仕事をする。これが基本的な動きになっています。
芸歴としてはこの春で14年目に入りました。医者と芸人、二つのことをそれだけの年月やってきて、世の中の変化みたいなところも感じています。
以前は医者の同僚に芸人をやっていることを言いにくい空気がありました。医者は医者の仕事に従事するのが当然で、それ以外のことをやるなんてもってのほか。
ただ、今は医者も増えているし、AIの発達で医者が求められなくなる分野も想定される。医者だけをやっているのではなく、プラスアルファの要素を持っておくことも意味のあることだ。そういう雰囲気が醸成されているのも感じます。
芸人の仕事においても、以前だったら芸人以外のことをしていたら周りから「本当にやる気あるの?」という視線をひしひしと感じました。でも、今は吉本興業の社員さんの中にも「芸人以外のことをやっていたほうが武器になる」という意識があるので、以前よりも引け目を感じなくはなったと思います。
今でも良くはないんですけど、以前だったら医者の仕事が長引いて劇場の入り時間に遅れるなんて、完全にありえないことでした。ただ、今の空気なら、場合によっては相談をすることもできる。それくらい変化はしているのかなと。
そこに甘えたらまた別の空気が出てしまうんでしょうけど、それぞれの生き方を認める。一つのことだけを貫くことだけが正解ではない。そういう社会になっていることを感じてはいます。
目指すもの
二つの仕事をやってきたからこそ感じることも多々あるんですけど、個人的には医者芸人というよりも、シンプルに一人の芸人として世に出たい。それがベースにあることではあるんです。有吉弘行さんやカズレーザーさんのようにMCをする。そんなことができるのが理想です。
ただ、年齢的なものとか、現実を見据えると難しいかとは思いますし、リアルなことを考えると、医療コメンテーターとか、そういうところも見据えてやるのが得策なのかなとも思います。ただ、やっぱり本来目指していたものを目指したい。そう今は考えています。
なので「М-1グランプリ」と「R-1グランプリ」。ここは常に狙っています。2カ月に一回は単独ライブをやってピンの新ネタを披露する。77歳のピン芸人・おばあちゃんとユニット「医者とおばあちゃん」を組んで「М-1」用の新ネタも作っています。ネタという本筋ででもなんとか注目してもらえるように動いています。
それをしっかりやりつつ、今月「40歳を過ぎるとなぜ健康の話ばかりしてしまうのか?」という本を出しました。事実として、医者の自分も大きな武器なので、ここはここできちんと生かしていければと思っています。
今回、40歳という年齢を本のタイトルに入れたのは、自分自身も40歳になってリアルに体調の変化を感じるようになりましたし、多くの方のターニングポイントになっている年齢でもあるんだろうなと。そこに医者としてアプローチできれば、少しでも楽になる方がいらっしゃるかもしれない。
そう考える自分がいるのは事実だし、医者だからこそ本にしてくださる方がいらっしゃるのも事実だと思いますし、そんな自分と向き合いながら、これからも先を目指していこうと思っています。
医者として、芸人として、そして40歳の一人の男としても、いろいろと感じることが多くなってきました。
朝に電車の窓に映る自分の顔が老けていたり、睡眠時間が短いと翌日動けないとか、駅まで全力で走ると肺機能がなかなか戻らないとか(笑)。
それも今の自分ですし、そういう自分とも向き合いつつ目標に向けて積み重ねを続けていきたいと思っています。
(撮影・中西正男)
■しゅんしゅんクリニックP
1983年7月2日生まれ。群馬県出身。群馬大学医学部卒業後、医師免許を取得。研修医期間を終えて、NSC東京校に16期生として入学する。芸人と医師を両立しながら、2018年にはフジテレビ「さんまのお笑い向上委員会」の“モニター横芸人”に選ばれる。ダンスに乗せて医師のあるあるネタを言う「ヘイ!ヘイ!ドクター!」が注目を集める。2020年、元「NMB48」の三秋里歩と結婚。エッセイ「40歳を過ぎるとなぜ健康の話ばかりしてしまうのか?」(ヨシモトブックス)を4月23日に上梓した。