5月の台風 3つのなぜ
台風6号、沖縄から本州にかけ影響か
台風6号は強い勢力を保ったまま、沖縄に近づく見込みで、沖縄近海では10日昼前から波が高くなるでしょう。その後、台風は上空の強い西風に流され、本州に近づくおそれがあります。
台風の勢力に影響を与える海面水温は、本州に近づくほど低くなるため、台風の雲は次第に衰える可能性が高いです。しかし、12日(火)から13日(水)にかけては低気圧が発達しながら日本海を北東へ進むタイミングと重なるため、天気の崩れが広範囲に広がるおそれがあり、油断は禁物です。
雲からみた台風6号の強さ
台風6号は9日午前9時、フィリピンの東海上を一時間に15キロの速さで北西へ進んでいます。気象庁の観測によると、中心気圧は950ヘクトパスカル、中心付近の最大風速は45メートルで非常に強い勢力です。
また、アメリカ・ハワイの米軍合同台風警報センター(JTWC)によると、気象衛星画像の解析から推測される熱帯低気圧の強度(T数)は5.0で、今が最盛期とみられます。
なお、台風の強さを示すT数はT1.0からT8.0まで、0.5きざみで15階級に分けられています。
表紙の写真は台風6号の雲(9日朝)を捉えたものですが、台風としてかなり発達した段階にあり、中心を示唆する低気圧性曲率を持った雲バンドに、中心を取り巻く円形の濃密な雲域が形成されています。
今年の台風 3つのなぜ
1.なぜ、台風の発生が多い?
台風のシーズン入りは例年、6月からですが、今年は早くも発生数が6個と平年の倍以上です。1951年以降の統計では1971年の9個、1965年の7個に次いで3番目に多くなっています。なぜ、今年はハイペースで台風が発生しているのか?その答えは台風の発生場所にありそうです。
2.なぜ、台風の発生場所が南東に?
この図は今年これまでに発生した台風の発生場所を示したものです。台風が多く発生する海域(オレンジで囲った海域)と比べると、南に、そして東にずれていることが分かります。
台風の発生条件は1.海面水温が26度から27度以上であること。2.風速が水平方向で大きく変化していること。3.風速が高さ方向にあまり変化していないこと。4.コリオリ・パラメータ(地球の回転)がある程度大きいこと。です。
これまでのところ、台風の発生場所が東経150度よりも東側で多いことは、太平洋東部で海面水温が高くなっていること(エルニーニョ現象が再び、明瞭になっていること)に要因のひとつがあると思います。
3.なぜ、5月に台風が?
例年、5月の台風はフィリピン付近を西進するか、小笠原諸島付近を北東へ進むことが多く、本州に影響する例は少ないです。それでも、沖縄・奄美地方への接近は平均すると2年に一度程度あり、大雨や強風をもたらすことがあります。
今回は5月としては2011年以来、4年ぶりに沖縄接近台風となる見通し。また、台風が北上する背景には、日本の南海上で夏の高気圧(太平洋高気圧)が強まっていることがあります。今後は、より一層、湿った空気の影響を受けやすくなるため、このところの好天が一転して、大雨になる可能性があると思っています。
【参考資料】
アメリカ・ハワイの米軍合同台風警報センター: Joint Typhoon Warning Center (JTWC)
気象庁(JMA):台風情報
台風,2005:日本気象学会関西支部第7回夏季大学テキスト
新しい気象学 台風・集中豪雨,2005:第39回夏季大学テキスト,日本気象学会