富裕層から富豪をターゲットに 都心の超高額マンションが未知の領域に踏み込む必然性
8月29日、「2024年度 三菱地所レジデンス 社長懇談会」が開かれた。
これは、報道関係者を集め、三菱地所レジデンスの宮島正治社長と直接話ができる場となるもの。前半は宮島社長からの市況説明で、後半が報道関係者との懇談会。そこで明かされた同社のこれからの方針で、いくつか興味深い話があった。
なかでも思わず目を見開いてしまったのは「これからは、富豪をターゲットにした高額マンションを開発する」という主旨の発言だ。
高額マンションを分譲されるとき、従来、主たるターゲットとなっていたのは日本の富裕層で、一部不動産会社はリピーター(繰り返し高額物件を購入するお得意様)に対し、優先的に販売の案内を行う……その販売手法は、すでに一般の人にも広く知られている。リピーターを優先するのはイタリアの高級スポーツカーでも、スイスの高級時計でも普通に行われるやり方だ。
その販売手法を進め、富豪と呼ばれる世界でも一握りの人たちのためのマンション開発を始めるというのだ。
金額でいえば、安くても50億円以上。広さによっては100億円以上となるマンション住戸を手がけることが想像された(金額についての言及はなかったので、筆者の推測)。
といっても、三菱地所レジデンスの都心高額マンションがすべて50億円とか100億円という水準になるわけではない。一部に富豪と呼ばれる人しか手を出せない商品もラインナップする。これからは、そのような領域に踏み込むという意思が表示されたと理解すべきだろう。
同社がこれまで分譲してきた高額マンションのひとつとして宮島社長により紹介されたのが、「ザ・パークハウス 京都鴨川御所東」。2017年に竣工した京都中心地のマンションだった。
このマンションは、鴨川に面した高額住戸棟と、鴨川から離れる分、そこまで値段が高くない住棟に分かれていた。その際、高額住戸を購入した人の約半数が外国人だったと明かされた。といっても、中国の人ではない。イタリア、フランス、アメリカの人が京都の高額マンションを購入した。これは、三菱地所レジデンスにとっても予想外の出来事だったという。
日本人には「高すぎる」といわれた京都のマンションを欧米のお金持ちは迷いなく購入したからだ。
世界には、純粋に住宅の価値を認めて大金を投じる人たちがいる。
富豪向けに分譲マンションをつくる、という動きはその延長線上にあるようだ。
では、富豪向けとしてどんなマンションをつくるのか。
その第1号事例となりそうなのが、英国大使館跡地に建設される予定のあのマンション……都心高額物件にどんな動きが予想されるのか、三菱地所レジデンスの社長懇談会から得た情報を基に、さらなる検証を試みたい。
京都・鴨川のマンションは、当時西日本最高額だった
欧米人が高額住戸の約半数を購入した「ザ・パークハウス 京都鴨川御所東」は全85戸の規模。その販売が行われた2015年暮れに私が新聞に書いた記事を読み返すと、全85戸のうち、鴨川に面した住棟は「別館」と名付けられ、4階建て16戸の構成。その半数が超高額となり、最高金額は約287平米の住戸で7億4900万円だった。
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