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低迷球団のエースのトレードが実現しなかったのは、ポストシーズンで登板拒否の可能性があるから!?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ギャレット・クローシェイ(シカゴ・ホワイトソックス)Jul 28, 2024(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 この夏、ギャレット・クローシェイ(シカゴ・ホワイトソックス)のトレードは、実現しなかった。

 今シーズン、クローシェイは、開幕投手を務めた。7月28日までの22登板で114.1イニングを投げ、奪三振率12.59と与四球率2.05、防御率3.23を記録している。25歳と若く、今シーズンの年俸は80万ドルと安い。FAになるのは、2026年のオフ。そして、左投手だ。ポストシーズン進出、あるいはその先をめざす球団が欲しがる要素は、すべて備えていたように見える。

 一方、昨シーズンまでのクローシェイは、リリーバーとして投げていた。ホワイトソックスが3月にディラン・シースをサンディエゴ・パドレスへ放出しなければ、その前にクローシェイの先発転向は決まっていたものの、開幕戦で投げることはなかっただろう。

 怪我とも、無縁ではない。2022年は、開幕直前にトミー・ジョン手術を受けて全休。5月中旬に復帰した昨シーズンは、肩を痛め、6月から3ヵ月以上にわたって離脱した。こちらは、懸念材料だ。

 プラスとマイナスが交錯し、ホワイトソックスと獲得に動いた球団の間で、交換条件の折り合いがつかなかっただけかもしれない。

 さらに、7月26日には、ニューヨーク・ポストのジョン・ヘイマンやESPNのジェフ・パッサンらにより、クローシェイのこんな「プラン」が報じられた。クローシェイは、レギュラーシーズンが終わるまで先発投手として投げ続けたいと思っていて、トレードで移籍した場合、延長契約の合意に達しない限り、ポストシーズンで投げるつもりはない――。

 そのとおりであれば、欲しがっていた球団が手を引いたとしても、おかしくない。

 いずれにせよ、今年のポストシーズンで、クローシェイが投げることはない。ホワイトソックスは、ここまで27勝84敗。すでに負け越しが確定していて、地区首位とワイルドカードの3番手のどちらからも、30ゲーム以上離れている。

 夏のトレード市場において、売り手に回ったホワイトソックスは、先発投手のエリック・フェディー(→セントルイス・カーディナルス)、リリーバーのマイケル・コペック(→ロサンゼルス・ドジャース)とタナー・バンクス(→フィラデルフィア・フィリーズ)、遊撃手のポール・デヨング(→カンザスシティ・ロイヤルズ)、外野手のイーロイ・ヒメネス(→ボルティモア・オリオールズ)とトミー・ファム(→カーディナルス)を放出した。

 クローシェイは、今オフもトレードの可能性はありそうだが、獲得しようとする球団が現れるかどうかは、まだわからない。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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