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東方神起・ユンホ入隊から見るK-POPと兵役

松谷創一郎ジャーナリスト
東方神起の新曲「サクラミチ」

ユンホの入隊期間は?

 4月2日、東方神起がライブツアー最終日の東京ドームで活動休止を匂わせる発言をしました。ユンホが「これをいつ言うかずっと悩んでいたんですけど、実は東方神起の単独ライブツアーでは、しばらく会えないと思うんです」と話したのです。

 さまざまな報道のとおり、この発言は徴兵によるユンホの入隊を意味しています。国民皆兵義務(徴兵制)のある韓国では、男性はだれでも数え年で30歳までに軍隊に入隊し、約2年間服務することになっています。東方神起のユンホは現在29歳、数え年で30歳なので、入隊はほぼ間違いないと思われます。

 所属事務所のSMエンタテインメントも、「今年中に現役で入隊予定」だと明かしました(※)。「現役」とは、陸・海・空軍、海兵隊に入ることを指します。芸能人は陸軍に入隊するケースが多く、その場合は1年9ヶ月間の兵役となります。

 具体的にどのタイミングで入隊になるかは不明ですが、3日に発表された7月に東京と大阪で行われる所属事務所の合同ライブ・SMTOWN LIVEの公式ホームページには、東方神起の出演は明記されてあるものの「一部アーティストの兵役日程により、出演者変更の可能性がございます」とも付記されてもいます。入隊がいつになるか、まだ具体的には決定していないのかもしれません。

 一方、現在27歳(数え年28歳)のチャンミンがいつ入隊するのかは不明です。同時期に入隊すれば、それだけ東方神起の活動休止期間も最短になるので、今後の注目ポイントはそこでしょうか。

神話が作り上げた前例

 K-POPに限らず韓国芸能界において、兵役は大きな関門です。人気最盛期の20代に2年間活動できなくなるわけですから、それは大きなダメージになりかねません。

 そうしたなか、韓国芸能界は兵役対策もとってきました。真っ先に思いつくのはSUPER JUNIORのケースでしょう。メンバーは現在11人ですが、うち3人は既に除隊、現在は3人が入隊中です。5月にひとり除隊予定で、今年の下半期は9人で活動する予定です。SUPER JUNIORはあえてグループの人数を多くし、メンバーが順番に入隊・除隊することで活動休止することなく継続しているのです。

 しかし、SUPER JUNIORのように大所帯でなければ、やはり兵役は大きなダメージをもたらします。そこで思い出されるのは、90年代後半から2000年代前半のK-POPシーンをリードした神話のケースでしょう。

 1998年にデビューした神話(シンファ)は、SMエンタテイメントからデビューした(現在は移籍)6人組のグループです。2007年まで活動したものの、メンバーが20代後半に差しかかる2008年から次々と兵役に就き、2012年までに全員が除隊しました。約4年間のブランクを置いて活動を再開したのです。結局、20代後半から30代前半までの期間を兵役で活動することができなかったのです(それと前後するかのようにデビューしたのがSHINeeでした)。

 現在、メンバーが30代半ばにさしかかった神話は「最長寿アイドルグループ」と呼ばれています。30代になって同じグループで活動再開したのは、それまでの韓国芸能界では考えられないことでした。神話は新たな前例を作り上げたという点で、韓国芸能界に大きな貢献をしたと言えるでしょう。それを踏まえると、東方神起が2~5年後にちゃんと復活することは、十分に考えられます。

東方神起の活動再開は2017~2020年

 東方神起は、20代後半から30代前半にかけて活動休止を余儀なくされます。避けられないことではありますが、次にふたり揃った東方神起を観ることができるのは、最短でも2017年になるでしょう。ただ、それもチャンミンの入隊のタイミングしだいですから2018~2020年にずれ込むと考えられます。

 話は変わるようですが、5月16日に日本でも公開される映画『国際市場で逢いましょう』には、東方神起のユンホが俳優として出演しています。この映画は、韓国では歴代2位の1425万人・興行収入1108億ウォン(121億円)の大ヒット作です。

 私は既に観ましたが、内容は朝鮮戦争後のひとりの男・ドクス(ファン・ジョンミン)の人生を軸に、韓国の現代史を描くという内容です。韓国版『ALWAYS 三丁目の夕日』とも言われますが、中高年層だけでなく全世代でヒットしました。

 そこでユンホが演じているのは、なんと軍人です。登場した当初は、その演技があまりにもナチュラルなので気づかなかったほど。俳優としての潜在能力の高さがうかがえました。ファンとしては、この映画を観て入隊中のユンホを想像してもいいのかもしれません。

 また、ユンホが兵役に就いてからチャンミンがどうするのかはまだわかりませんが、音楽のソロ活動だけでなく俳優業を活性化させる可能性があります。実際、すでにドラマ『夜を歩く士』への出演をオファーされているようです。また、映画などへの出演もあるかもしれません。チャンミンは日本映画『黄金を抱いて翔べ』などにも出演しており、実績もありますからね。

 JYJとの分裂もありましたが、2人になってからのこの5年間の東方神起は、非常に順調な活動を続けてきました。今後、活動休止やソロ活動がありながらも、そこで期待されるのはやはり神話のような息の長い活躍です。

※……『テンアジア』2015年4月3日「SM側『東方神起ユンホ、年内入隊予定』」(韓国語)

ジャーナリスト

まつたにそういちろう/1974年生まれ、広島市出身。専門は文化社会学、社会情報学。映画、音楽、テレビ、ファッション、スポーツ、社会現象、ネットなど、文化やメディアについて執筆。著書に『ギャルと不思議ちゃん論:女の子たちの三十年戦争』(2012年)、『SMAPはなぜ解散したのか』(2017年)、共著に『ポスト〈カワイイ〉の文化社会学』(2017年)、『文化社会学の視座』(2008年)、『どこか〈問題化〉される若者たち』(2008年)など。現在、NHKラジオ第1『Nらじ』にレギュラー出演中。中央大学大学院文学研究科社会情報学専攻博士後期課程単位取得退学。 trickflesh@gmail.com

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