Yahoo!ニュース

炎上リスクを逆転した「FNS歌謡祭」のKENZOさんに学ぶSNSの「神対応」

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:DA PUMP KENZOさん公式SNS)

年末ということで、テレビ局各局でさまざまな音楽特番が放送されていますが、12月6日にフジテレビで放映された「2023 FNS歌謡祭」でちょっとしたトラブルが起こっていたのをご存じでしょうか?

参考:ラウールがコラボ初参加、KENZOがヘッドスピン『FNS歌謡祭』ダンス共演に相葉雅紀も興奮 “映像の乱れ”トレンド入り

ただ、このトラブルをめぐるKENZOさんを含む関係者の対応が、非常にSNSにおける炎上リスクと、その回避方法についての示唆に満ちていますのでご紹介したいと思います。

生放送中に発生した映像トラブルがトレンド入り

そのトラブルが発生したのは、「FNS歌謡祭」で、最も注目されていた企画の一つだった、グループ横断の7人のアーティストによるダンスコラボ企画を披露したタイミング。

特に今回の「FNS歌謡祭」ダンスコラボ企画では、Snow Manのラウールさんが、初めてコラボ企画を披露するということもあり、Snow Manのファンを中心に大きな注目を集めていました。


しかし残念ながら、そのダンスコラボの終盤で、なぜか映像が乱れるハプニングが発生。

当然ながら見ていたファンの多くが驚いてSNSにも投稿した結果、「映像の乱れ」がXのトレンド入りする結果になってしまったわけです。

このトラブルは、冒頭に紹介したORICON NEWSが番組放送中の21時台に記事化しているように、複数のネットメディアがすぐに反応しています。

トラブルにガッカリしていたファンが少なくなかったことを考えると、この状態を放置していたら、翌日になって一部の過激なネットメディアが「映像の乱れに批判殺到」みたいな記事を作成するリスクがあった状態だったと言えます。

KENZOさんが放送中にウィットに富んだ投稿を実施

しかし、この様子を見た、DA PUMPのKENZOさんが、番組放送中の22時37分に見事なSNS投稿をおこないます。

「みんなのダンスが凄すぎて電波障害起きました。」とウィットに富んだ投稿を、7人の写真とともにXに投稿したのです。

なにしろ、今回のダンスコラボは、所属グループが異なる7人が、この「FNS歌謡祭」のためだけに多忙なスケジュールの合間をぬってレッスンを重ねて実現したものです。

そのパフォーマンスの一部が、映像トラブルによって完璧な状態で放送されなかったことを、一番無念に感じるべきはKENZOさんたち7人だったはず。
しかし、KENZOさんは、そうした無念さは1ミリも見せず、トラブル自体をポジティブなネタに昇華してしまったのです。

当然、この投稿を各メディアが拾って記事化。

「FNS歌謡祭」における映像トラブルは、見事にポジティブな話題に転換されていくことになります。

参考:『FNS歌謡祭』ダンス企画で映像の乱れ KENZO「みんなのダンスが凄すぎて電波障害起きました」

演出家のSNSでの謝罪もフォロー

さらには、番組放送後の12月7日午前1時には、番組総合演出家の浜崎さんがトラブルの説明と謝罪の投稿を連投されます。

テレビ番組におけるトラブルについて、ここまで丁寧に言葉を尽くして関係者が謝罪することは非常に珍しいと言うこともあり、当然ながらこの投稿も、翌日に様々なメディアで記事化されることになります。

しかも、KENZOさんは、この投稿にも夜の間に「申し訳ないって謝らないでください」というコメントを、引用ポストの形で投稿。

トラブルへの批判が、浜崎さん個人に向かないようにすぐにケアをされています。

こうした関係者のSNS上のコミュニケーションにより、「FNS歌謡祭」のダンスコラボにおける映像の乱れのトラブルは、翌日になって「批判殺到」の記事が書かれないどころか、「何この優しい世界」という美談としての記事が書かれる展開になるわけです。

参考:FNS歌謡祭「映像の乱れ」トラブル…プロデューサー謝罪に「DA PUMP」KENZOが神対応 「何この優しい世界」と反響

見逃し用の動画や、質問対応のライブ配信も実施

さらに、KENZOさんはコラボダンスの練習動画をYouTubeにもアップし、翌日にはラストダンスパートの動画をXにも投稿。

「FNS歌謡祭」のテレビでの生放送を見逃した人も、映像トラブル部分のダンスのフルバージョンを見たい人にも見られるように、動画でのフォローもされています。

さらには、7日の夕方には、疑問や問い合わせに対応するYouTubeのライブ配信も実施。

生放送に関わられている関係者へのリスペクトを明確に言葉にし、多くの人の疑問やニーズに対応する、文字通りの「神対応」を連発されているのです。

小さな批判が炎上のネタになってしまう時代にすべきこと

このKENZOさんの一連のSNS対応から学ぶべきは、炎上につながりそうな批判やトラブルが発生したときにも、関係者がSNSなどでコミュニケーションや意思表明をすることで、そのネガティブなエネルギーをポジティブに逆転することができるという事実です。

最近では、残念ながら一部メディアが、たいして炎上していない状況においても、一部ユーザーの投稿を軸に過激な見出しの記事を書くことで、炎上を実体化させてしまうというケースが多発しています。

参考:鬼滅の刃「物議」報道で考える、炎上や対立をあおるメディアとポータルサイトの構造問題

また、関係者の説明が不足していることで、ファンや関係者の混乱が深くなり、ファンによる批判をメディアが取り上げて、炎上に発展するケースも散見されます。

最近でも、日本テレビが放映した音楽特番「ベストアーティスト 2023」において、事前にテレビ初出演と宣伝されていた「IMP.」の放映が、ファンの期待とは異なる1分間のVTR出演に変更になって批判の声が多く出ていたことが、例としてあげられるでしょう。

参考:「扱いがひどい」「忖度残っている」と不満の声も…IMP.のTV初出演はわずか1分の“紹介”のみ

テレビ放映におけるトラブルや、構成の変更は、当然関係者の努力が尽くされた結果でも発生してしまうものですが、その背景や意図を説明しないことが、誤解や炎上の種になってしまう時代でもあります。

今回のトラブルでKENZOさんや浜崎さんが見せてくれたような、関係者をリスペクトし、言葉を尽くして説明する姿勢こそが、そうした不要な炎上や衝突を避ける意味でも非常に重要だと思います。

我々からすれば「神対応」であるKENZOさんのSNS投稿ですが、おそらくKENZOさんに聞けば、「神対応」ではなく、必要だと思ったから当然のことを表明しただけだと答えられるでしょう。

SNSの投稿が炎上のきっかけになることがあるのも事実ですが、今回のようにSNSの投稿が炎上につながりそうな種をポジティブに逆転し、優しい世界線に導くことができることもまた事実です。

是非、多くのテレビ関係者や出演者の方々にも、KENZOさんの「神対応」を参考にして頂き、ファンの不要な衝突や炎上を避ける努力をしていただければと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

徳力基彦の最近の記事