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意外だった? 鹿児島でさくら一番乗り

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
3月21日 さくら前線は鹿児島からスタートした

鹿児島一番乗りは21年ぶり

今年もさくらの季節がやってきました。3月21日午前、全国のトップを切って、鹿児島でさくらが開花、平年よりも5日早いです。午後は名古屋と熊本でも開花の発表がありました。

各地の気象台ではさくらの開花と満開の観測を行っていますが、1月から咲き始める沖縄のさくらはヒカンザクラと言って、本州のソメイヨシノとは違う品種のため、実質的なさくら前線のスタートは沖縄県以外でさくらが開花した日となります。

さくら前線のスタート地点 高知が一番多い
さくら前線のスタート地点 高知が一番多い

左表は全国で最初にさくらが開花した場所を調べたものです。1953年から2014年までの62年間、現在でもさくらの観測が行われている気象台を対象とし、一度に複数の場所で開花した場合も含んでいます。

全国でさくらの開花が最も早いのは「高知」です。過去17回を数え、昨年(2014年)もそうでした。2位は熊本(7回)、3位は福岡と鹿児島(6回)、4位は長崎と宮崎(5回)、5位は東京(4回)です。

これをみると、たしかに暖かい地域ばかりですが、そのなかでも鹿児島よりも高知の方が圧倒的に多いとは!、少し意外に思いませんか?

寒い冬ほどさくらに好都合

実際、鹿児島からサクラ前線がスタートしたのは1994年以来、21年ぶりのことです。さくらについて詳しい人ならば、冬の気温が関係しているとピンとくるでしょう。この冬の鹿児島は寒さが厳しく、冬の平均気温は平年を下回りました。寒い冬だったからこそ、さくらが早く開花したのです。

さくらは昨秋のうちに花芽の準備をして、休眠に入ります。休眠している冬のあいだ、一定期間、寒さにさらされると目が覚めて、花芽が成長を始めます。つまり、さくらが開花するためにはある程度の寒さが必要で、暖かい地域では目覚めが遅れてしまいます。

高知と鹿児島の冬の平均気温(平年値)を比べてみると、高知の方が鹿児島よりも2度以上も低い。さくらにとって鹿児島の冬は暖かすぎて、花芽の目覚めが遅れる年が多くなるのです。

ウェザーマップさくら開花予想担当者いわく、鹿児島は暖かすぎて予想が難しい。つい、暖かい冬ほどさくらにとって好都合と思ってしまいますが、植物の季節の感じ方は人間とは違う。当たり前のことなのだけれど、さくら前線のスタート場所を眺めるとおもしろいです。

【2015年3月21日 さくらが開花した地点】

鹿児島(平年より5日早い)、名古屋(平年より5日早い)、熊本(平年より2日早い)

【参考資料】

温暖化桜も戸惑う 東京早咲き傾向、九州南部は遅く 2008年4月18日日本経済新聞夕刊

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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