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BCリーグを「黒」に染めれるか?滋賀ブラックスの挑戦【ルートインBCリーグプレーオフ】

阿佐智ベースボールジャーナリスト
21日に行われた滋賀対埼玉武蔵のBCリーグプレーオフ第2戦

 先日、ルートインBCリーグからの「独立」を宣言した西地区4球団。新リーグの盟主的存在にあるオセアン滋賀ブラックスは、西地区のペナントレースを制し、東地区を勝ち抜いた埼玉武蔵ヒートアーズと準決勝プレーオフに臨んでいる。

 19日の第1戦は、延長12回、両者5対5で譲らず引き分けに終わった。3戦2勝制のこのステージでは、1勝1敗1分に終わった場合、得失点差、つづいてレギュラーシーズンの成績で勝ち抜けが決まる。シーズン勝率では埼玉武蔵を上回る滋賀としては2戦目をなんとかして取りたいところだ。

ドラフト候補のエース・菅原を立てた滋賀だったが
ドラフト候補のエース・菅原を立てた滋賀だったが

 ともに12勝で最多勝に輝いた「ダブルエース」菅原誠也、吉村大佑を擁する滋賀としては、この2人で一気に勝ち抜けを決めるべく、まずはサブマリンエース吉村を立てたが、埼玉武蔵も、NPBでその速球で名を馳せたエース、佐藤由規(元ヤクルト、楽天)を第1戦に立て、結局勝負はつかなかった。滋賀は、昨日の第2戦、満を持して最多勝だけでなく最多奪三振のタイトルを獲った菅原誠也を先発マウンドに送ってきた。対する埼玉武蔵は、規定投球回数不足ながら防御率0.90の小野寺賢人をマウンドに送り出してきた。

埼玉武蔵先発の小野寺
埼玉武蔵先発の小野寺

 試合は予想通り両投手による投手戦となったが、勝利の女神はいくぶん埼玉武蔵に肩入れしたようだった。

 先制点は、3回表。この回先頭の押川魁人が右中間へツーベースを放つと、大量点は見込めないと考えたのか、埼玉武蔵ベンチはこれを手堅く送った。そして、2番の樋口正修が叩きつけるバッティングで高いバウンドのゴロをセカンドに放ち、1点をもぎ取った。

3回表、樋口はサードランナーを返すべく、渋くゴロを転がす
3回表、樋口はサードランナーを返すべく、渋くゴロを転がす

 そして5回表。マウンドに上がった菅原が急遽降板するというハプニングが起こる。急遽交代となった2番手岩田隼冬は、この回先頭の山口寛貴をライトフライにうちとったものの、その後2連続フォアボールを出してしまう。それでも続く打者をショートゴロに抑えたのだが、2アウト1、2塁から力なくショートに転がったゴロが内野安打となり、ここで一挙に2点が埼玉武蔵に入ってしまう。

 6回裏にエラーで出塁した盗塁のリーグ新記録を打ち立てた池田陵太が盗塁死するなど、好投を続ける小野寺の前にこのまま終わってしまうのかと思われたが、滋賀打線は7回1アウトから4連続安打で2点を返す。ここで一挙に逆転かとも思われたが、後続が倒れ、「あと1点」が奪えない。

 滋賀は、ダブルエースに次ぐ103回1/3を投げた古屋剛を19日に続いて9回のマウンドに送り出すが、ここでショート小原駿太の守備が乱れる。先頭打者の高いバウンドのゴロを弾いた上(記録は内野安打)、続く打者のゴロもエラー。ここで更に1点を失った滋賀は、9回裏の攻撃も三者凡退に終わり、最後はキャッチャーの7番太田尚哉が三振に終わってゲームセットとなった。

試合後のお立ち台に立つ小野寺
試合後のお立ち台に立つ小野寺

 決勝プレーオフに王手をかけた埼玉武蔵のヒーローは、先発の小野寺。7回2失点の好投に、この大一番で「今年1番の出来」と自画自賛のピッチングだった。

 この2シーズン、BCリーグ西地区と東地区は対戦がなかった。それゆえ、滋賀、埼玉武蔵とも「未知の相手」との対戦となったが、試合後の両軍監督のコメントは対照的だった。

埼玉武蔵・角監督

「正直やりにくさはありました。もちろん動画なんかはみたんですけど、実際、生で対戦しないとわからないことも多いので。対戦してみて簡単には勝たせてもらえないなとは感じました。今日も、9回2アウトでもまだわからないと思っていました。最後も、我々が警戒しているキャッチャーの太田君の打席だったので、彼が出ればひっくり返されるかもとは感じていました。9回は、(得失点差を考えると、)本当はもっと点を取りたかったんですが、滋賀の投手陣が崩れませんでしたね。レギュラーシーズンでは、だいたいああいうケースで崩れていくんですが、そのあたりがプレーオフで、いつもの力以上のものがでるんでしょうね。そういう意味では、ベンチにいて、どこで勝負をかけるか、そこを意識してやっています」。

滋賀・柳川監督

「まったくやりにくいことはなかったですよ。いつもの野球をすれば道は開けると思っていたんで。そういう意味では、うちの攻撃ができなかったですね。昨日、今日とあと1本がでなかったので。埼玉武蔵は走ってくるチームというイメージはありましたが、うちの太田(捕手)の肩なら十分にアウトにできますから、あまりそのへんにこだわることなくやっています。

(微妙な判定でアウトになった、今シーズン盗塁のリーグ新記録を打ち立てた池田のスチールアウトについて)判定は判定なんでしかたがない。でも、彼にはいけると思ったらいつでも行けと言っている中でのことで、こっちとしては全然問題ないプレーです」。

 滋賀は、リーグ最多勝コンビ、サブマリンの吉村とドラフト候補の菅原のダブルエースでペナントを制したチームだ。ライバルチーム曰く、「その2人で勝っている」状態だ。つまり、その2人を先発に立てた2戦で勝ちを拾えなかったのは非常に痛い。そのことに話を向けると、柳川監督はきっぱりと言った。

「2本柱じゃなく、3本目の古屋もつぎ込みましたから。明日は総力戦ですよ。菅原の降板は、指のマメが潰れたんです。もう明日は無理ですね。でも、(19日に150球近く投げた)吉村には行ってもらいますよ。いろいろ言われるかもしれませんが、ここで投げれないと上(NPB)なんて行けません。疲れは当然あるかもしれませんが、こういうところでマウンドに立てるよう、この1年鍛えてきたつもりです」

 吉村投手自身に話を聞いたところ、22日のマウンドに立つことはまだ聞いていないが、行けと言われれば、いくつもりで準備していると言う。

 滋賀ブラックスは、ラストシーズン、BCリーグを黒に染め上げることはできるのか。プレーオフ第3戦は、今日1時、オセアンBCスタジアム彦根でその戦いの火蓋が切られる。

(文中の写真は筆者撮影)

ベースボールジャーナリスト

これまで、190か国を訪ね歩き、23か国で野球を取材した経験をもつ。各国リーグともパイプをもち、これまで、多数の媒体に執筆のほか、NPB侍ジャパンのウェブサイト記事も担当した。プロからメジャーリーグ、独立リーグ、社会人野球まで広くカバー。数多くの雑誌に寄稿の他、NTT東日本の20周年記念誌作成に際しては野球について担当するなどしている。2011、2012アジアシリーズ、2018アジア大会、2019侍ジャパンシリーズ、2020、24カリビアンシリーズなど国際大会取材経験も豊富。2024年春の侍ジャパンシリーズではヨーロッパ代表のリエゾンスタッフとして帯同した。

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