南スーダンへ日本から最悪の「クリスマスプレゼント」―国連の武器禁輸制裁案否決、安倍政権の責任
内戦が激化し、大規模な虐殺が懸念されている南スーダンに対し、武器輸出を制限するとした国連安保理決議案は、23日、中国やロシア等に加え、日本が棄権したため、必要な賛成数を得られず否決された。安倍政権は、武器禁輸制裁で南スーダン政府との関係が悪化することがPKO部隊として派遣している自衛隊の活動に支障が出ることを恐れていた。だが、南スーダンの人々の平和と安全のためという、PKO本来の目的からも逸脱した安倍政権の振る舞いに、米国のサマンサ・パワー国連大使も不快感と失望をあらわにした。正に、安倍政権からの南スーダンへの最悪のクリスマス・プレゼントだろう。
◯米パワー国連大使が批判
大統領派と反大領領派の戦闘が続き、近く大規模な軍事作戦も行われるとされる南スーダン。潘基文・国連事務総長も「即座に行動を取らない限り、南スーダンで大量虐殺が始まる可能性がある」と、武器禁輸制裁を急ぐよう安保理に繰り返し求めていた。だが、23日に武器禁輸制裁案は否決されてしまった。憤懣やるせないのは、日本などに賛成するよう求めてきた米国だ。米国のパワー国連大使は、会見で日本や中ロなどを強く批判した。
実際、対南スーダン武器禁輸制裁案が決議されるか否かの鍵を握っていたのが、日本であった。制裁案が米国主導ということもあり、またこの種の決議案に中国やロシアは反対することが多いが、それでも今回は拒否権を発動しなかった。当初、日本が賛成すれば可決すると観られていたが、日本は安倍政権の強い意向もあり、早々と「棄権」を表明。結局、賛成すると見られていたセネガルも採決時に態度を翻したが、同国へ2014年までに約1106億円の無償支援、さらに今年夏に海水淡水化事業に約274億円の円借款を決めた日本が賛成を表明していれば、また違った結果となっただろう。
◯国内でも失望、批判の声
対南スーダン武器禁輸制裁案について、国内ではNGO関係者らが賛成するよう訴えていた。その中の一人、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」の日本支部の土井香苗・事務局長は、失望感を隠さない。「これで堂々と南スーダン政府や反政府勢力へ武器を売り続けられることになってしまう。今年7月の首都ジュバ周辺での大規模戦闘でも、南スーダン国外から輸入された軍用ヘリや戦車が、病院や難民キャンプなどを攻撃しています。日本政府の今回の動きは、平和を望んでいた南スーダンの人々への裏切りです」。
米国の反発を買ってまで、日本が南スーダン政府に配慮せざる得なかったのは、やはり自衛隊を同国に派遣しているからだろう。市民団体「武器輸出反対ネットワーク」も24日に出した声明の中で、以下のように批判している。
◯安倍政権や日本の有権者の責任
南スーダンに派遣された350人あまりの自衛隊では、当然、現地での混乱を収めることはできない。現地情勢を改善するための国際的な動きの妨げになるならば、自衛隊は撤退させるべきだろう'。何より、今後、南スーダンで起きうることに、安倍政権は責任を取るべきだ。前出の土井さんは「もう、『外交努力をしている』だけではすまされません」と言う。「日本は言葉だけではなく本当に、南スーダンの平和を実現させる責任があると思います」。今回、安倍政権は外交的に越えてはいけないラインを越えてしまったといえる。まるで、ダルフール紛争での中国や、最近で言うとシリア情勢でのロシアのような振る舞いだ。それが、国際社会において、いかに日本の地位を貶めるものなのか、日本の有権者らも、危機感を抱いた方が良いだろう。
(了)