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偽の警察手帳を見せられて、見破れますか?新手なゲリラ詐欺も発生!特殊詐欺をめぐる警察と詐欺犯の攻防。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:ペイレスイメージズ/アフロイメージマート)

警察手帳を見せられて、それを偽物と見破れますか?

それができなければ、あなたも新手なゲリラ的詐欺に騙されるかもしれません。

今の特殊詐欺における“警察”対“詐欺犯”の戦いは、まさに“人類”対“ウイルス”の攻防を見ているようです。

警察が総力をあげて詐欺集団を摘発し、被害者を増やさないためのクラスターつぶしに取りかかる一方で、騙す側も「俺、PCR検査で陽性反応が出た」「市役所の者ですが、このままでは給付金が受け取れません」と嘘の電話をかけるなど、手口を変異させながら応戦しています。

今年に入っての特殊詐欺は、まさに新型コロナが蔓延する世相を反映するような状況になっています。

現段階では、警察の取り締まりが断然、優位です。警察庁による令和2年の上半期の特殊詐欺の被害件数をみても6861件、被害額も約128億5700万円と、いずれも前年度に比べて14~15%代の減少になっています。しかし、安心できない事情も潜んでいます。

詐欺は騙しの出入り口に工夫を凝らしてくるものですが、巧みさが際立ってきています。

このところ、急増しているのが、“切り込みカード詐取”です。

これは、家を訪れた詐欺犯がキャッシュカードにハサミで切り込みを入れて「これでもう使えませんので、回収します」とカードを騙し取っていく手口です。磁気の部分やICチップに傷をつけなければ、ATMからお金を引き出せるのですが、それを知らない高齢者が騙されてしまいます。この手口は昨年より発生していますが、ここにきて、かなり増えてきています。

すでに逮捕された受け子のスマホには、ハサミで切り込みを入れて良い箇所、ダメな部分が図解で詳細に指示されており、用意周到に詐欺を行っています。

これまでは、カードを封筒に入れさせて本人に保管するように促し、目を離した隙に偽の封筒とすり替える手口が多く発生してました。

この「本人の手元にカードがある」(すり替え)にしても、「もう使えないと思わせる」(切り込み)も、相手に安心感を抱かせて、カードを騙し取ります。

都内では、8月までで185件、4億を超える被害が出ており、今後、すり替えの手口と双璧をなすものになっていく恐れがあります。

ゲリラ的なアポなし訪問詐欺も発生中!

突然に、家を訪問するゲリラ詐欺も出てきています。先ほどの”切り込みカード詐取”を出口戦略とすれば、こちらは入口戦略になります。

通常はアポ電といわれる、詐欺の事前電話をかけ探りを入れてから、警察や銀行員を騙る人物が、家を訪れてキャッシュカードを騙し取ります。

しかし今は、アポ電なしで、いきなり、偽の警察手帳を見せた警察官が家を訪問してくるのです。

そして「あなたの銀行口座が詐欺事件に使用されている」「あなたは、知らないうちに詐欺被害に巻き込まれている」などと嘘をついて、焦る相手に携帯電話を渡し、詐欺の電話をかける”掛け子”と話をさせて、キャッシュカードを騙し取っていきます。

なぜこの手口が出てきたのでしょうか。

この背景には、職務質問による詐欺犯の逮捕が続いていることが大きいと考えます。もし名簿をもとにアポ電を地域に一斉にかけると、そこから不審電話の通報が警察に行きます。すると、警察はその辺りに職務質問をかけて、カードを受け取りにきた詐欺犯らを洗い出していくことになります。職質が詐欺発覚の一番のリスクになると考えている犯人らが、これを回避するために、ゲリラ的な手法に出ているといってよいでしょう。

この手口は、6月頃から群馬でみられていましたが、今、徐々に地方へ広がってきており、最近では宮城などでも発生しています。

この手口の巧妙な点は、これまでの詐欺の順序を入れ替えていることです。

今、詐欺への警戒感から、知らない番号からの電話を取らない人が増えています。それに対して、警察を名乗り訪問すれば、たいがいの人はその人物を家に招き入れます。そこで相手に電話を渡して会話をさせ、カードを騙し取るわけです。

これまでの”電話→訪問”の構図を、”訪問→電話”に変えることで、電話を取らない人にも詐欺が行えるというわけです。被害が減っているとはいえ、安心できない事情がここにあります。

 点ではなく、線でみる防犯対策を

上半期、被害が減っているところを見てみると、東京、神奈川、埼玉の首都圏です。一方で、北海道、奈良、福島、兵庫などは、前年度に比べて、被害が増えてきています。詐欺犯が、大都市から地方に狙いの中心を変えている節もみられます。

 

そこで詐欺を防ぐために知っておいてほしいのは、物事を点ではなく、線で見る防犯です。

滋賀県のタクシー会社のファインプレーを見てみたいと思います。配車係の男性はタクシーの手配の依頼を受けました。その後、同じ人物から、何度か電話あり、配車係の方はある違和感を覚えました。「“吉身”という地名が読めないので、地元の人間ではない」「平日の昼間に、6時間も住宅街にいることはおかしい」と。

先ほど被害を防ぐには、点でなく線で考えることを話しましたが、

男性は、こうした怪しい点をつなぎ合わせて、その先にある詐欺を疑い、この情報を警察に伝えて、逮捕につなげました。

詐欺が多様化して、高齢者だけでは防ぎ切れない状況のなか、こうした周りの人たちによる見守りが強く求められています。

最後になりますが、どうしたら偽の警察手帳を見破れるのでしょうか。

確かに本物の手帳を見たこともない私たちが、即座に嘘と見抜くのは難しいでしょう。

しかし警察を騙る人物の怪しさを一つ一つ、つないでいけば、その先にある詐欺に気づき、あの警察手帳は偽物かもしれないと思うことは可能です。実際に、詐欺を見抜いた人の多くは、相手の服装や言動のおかしさから見破っています。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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