メルカリで「ビットコイン」売買可能に 注意点は?
3月9日、メルカリがアプリでビットコインの売買を可能にするサービスを発表しました。同日より、段階的に展開していくとのことです。
メルカリといってもフリマで取引するのではなく、一般的な暗号資産の業者と基本的な仕組みは同じです。他の業者との違いや注意点を解説します。
申し込み、本人確認済みなら「最短30秒」
メルカリが提供するビットコインの売買機能は、一般的な暗号資産交換業者の「販売所」と同じサービスといえます。
すでに国内に多くの業者が存在している中で、あえてメルカリを使うメリットはあるのでしょうか。
理由の1つとしてメルカリは、フリマの売上金やポイントを用いて、ビットコインを1円から購入できる点を挙げています。
不要品を売って得たお金は「お小遣い」の感覚で、気軽に使いやすいとされています。ビットコインのような新しい金融商品にも手を出しやすいというわけです。
次に、口座開設のハードルの低さが挙げられます。メルカリによれば、本人確認が済んでいる場合、申し込みは最短30秒で完了するとのことです。
暗号資産の業者にとってはここが大きなハードルで、著名人を起用したCMなど多大なコストをかけて顧客を獲得しています。その点、メルカリなら、買いたくなったときにすぐ買えるというわけです。
現時点でアプリからできることは限られており、ビットコインの売りと買いは可能ですが、他のアドレスに送金したり、受け取ったりすることはできません。
ビットコインの価格はメルカリが独自に決めています。一般的な暗号資産業者と同様に、売買の手数料などは発生しませんが、売りと買いの価格差(スプレッド)に、業者の利益やコストが乗せられています。
このスプレッドは片側1%、両側2%を想定しているとのこと。発表会のデモでは、1ビットコインあたり購入時は306万5065円、売却時は300万796円と表示されていました。
ざっくり言えば、ビットコインを買った直後に売ると、2%の損失となります。もし2%を超えて値上がりすれば、含み益が発生する計算です。
国内の業者による販売所としてはスプレッドが狭く、利用者に有利という印象です。しかし、ユーザー同士の売買をマッチングする「取引所」ほど低コストではなさそうです。
このように、暗号資産の取引を始めるハードルは低いものの、機能としては限定的で、メルカリは「ライト層向け」と位置付けています。より多くの機能を求めるなら、他の暗号資産業者に目を向けることになるでしょう。
メルカリの月間アクティブユーザー数は2153万人、メルペイ利用者数は1458万人で、これは国内の暗号資産口座数である640万を大きく上回っているといいます(いずれも2022年12月末の数値)。
この膨大な数の人が暗号資産市場になだれ込むことになれば、業界の活性化につながることが期待できます。
値動きや税金にも注意
残念ながら暗号資産を取り巻く状況は良いものとはいえず、2022年にビットコイン価格は1年で約3分の1に下落しています。
メルカリは「アプリを見て頻繁に値動きを楽しんでほしい」とは言うものの、海外でのネガティブなニュースが続き、昨日からビットコイン価格は7〜8%下落。さっそく厳しい現実を突きつける結果になりました。
もし値上がりした場合でも、売却して利益を確定すれば「雑所得」となり、総合課税の対象になります。確定申告の際には、アプリ上で発行される取引報告書を用いて、自分で計算する必要があるようです。
株式や投資信託の場合、証券会社が損益を計算してくれる特定口座や、売却益や配当金に対する源泉徴収があります。これらに慣れている人にとって、暗号資産の煩雑さは悩ましい問題です。
この点はメルカリ側も認めており、「これから多くのお客様が課税や申告の対象となる場合、ペインがあると我々も認識しているので、サービスとしても対応を考えていきたい」(メルコイン CPOの中村奎太氏)と説明しています。
最近では暗号資産業者の口座と連携し、自動的に損益を計算してくれるサービスが人気を博しています。暗号資産に初心者を呼び込むのであれば、ぜひこの点についても画期的なサービスを期待したいところです。
追記:
4月3日、メルカリはビットコイン取引サービスの口座開設者数が10万人を突破したことを発表しました。