オミクロン株の亜系統 BA.4とBA.5、BA2.12.1について 現時点で分かっていること
現在、南アフリカを中心にBA.4、BA.5という2つのオミクロン株の亜系統が、そしてアメリカではBA.2の亜系統であるBA.2.12.1が拡大しています。
これらの変異株について現時点で分かっていることについてまとめました。
南アフリカで新型コロナの新規感染者数が再増加
オミクロン株が世界で最初に拡大した南アフリカでは、2021年12月をピークとした第4波を迎え、その後新規感染者数は減少傾向にありました。
しかし、現在南アフリカでは再び新規感染者数が増加傾向となっています。
この感染者数の増加との関係については明らかではありませんが、現在南アフリカではオミクロン株の亜系統であるBA.4とBA.5という2つの変異株が広がっています。
南アフリカでは2021年12月まではBA.1というオミクロン株の流行初期に世界中で広がった亜系統が広がっていましたが、2022年に入りBA.1からBA.2に置き換わりが起こっていました。
そして、1月にBA.4、2月にBA.5という亜系統が南アフリカで見つかってから、現在は徐々にこの2つの変異株が占める割合が増加しています。
世界でこれらの変異株が報告されているのは、
BA.4:南アフリカ(395)、オーストリア(36)、イギリス(24)、アメリカ(20)、デンマーク(17)、ベルギー(9)、イスラエル(8)、ドイツ(5)、イタリア(4)、カナダ(3)、フランス(3)、オランダ(3)、オーストラリア(2)、スイス(2)、ボツワナ(1)
BA.5:南アフリカ (134)、ポルトガル (57)、ドイツ (52)、イギリス (17)、アメリカ (6)、デンマーク (3)、フランス (3)、オーストリア (2)、ベルギー (2)、香港 (2)、オーストラリア (1)、カナダ (1)、イスラエル (1)、ノルウェー (1)、パキスタン (1)、スペイン (1) 、スイス (1)
となっており、現時点では日本ではいずれも見つかっていません。
BA.4とBA.5の特徴は?
BA.4とBA.5はどちらもL452R、F486Vという2つのスパイク蛋白の変異を特徴としています。
まだこれらの亜系統については十分な情報がありませんが、いずれも南アフリカにおいてBA.2よりも徐々に割合が増加していることからBA.2よりも感染力が強い可能性が懸念されています。
またBA.4、BA.5は過去にBA.1に感染した人が持つ免疫からも逃れることができる可能性が指摘されています。
BA.1に過去に感染した人39人(24人がワクチン未接種、15人が接種済)から採取した血清を用いて、BA.4、BA5に対する中和抗体の量を評価した研究では、特にワクチン未接種者において、BA.4、BA.5に対する中和抗体はBA.1に対して7.5倍低下していました。
ワクチン接種者は、未接種者よりもBA.4とBA.5に対してよりよい免疫応答を示しましたが、BA.1と比較して中和抗体は2.6〜3.2倍に低下していました。
以上の結果は、オミクロン株のうちBA.1への過去の感染や、ワクチン接種によって得られた免疫が、BA.4、BA.5にはあまり有効ではない可能性を示唆しています。
ただし、このワクチン接種者15名のうち、3回接種をしていたのは1人のみですので、ブースター接種をした人でBA.1に感染した人のBA.4、BA.5に対する予防効果について評価するためにはさらなる研究が待たれます。
アメリカではBA.2の亜系統BA.2.12.1が増加
また、現在東海岸を中心に再度新規感染者数が増加しているアメリカ合衆国では、BA.2の中の亜系統である「BA.2.12.1」という変異株の占める割合が増加しています。
このBA.2.12.1は、BA.2よりも25%増加しやすいとされており、アメリカにおける再増加の原因となっている可能性が指摘されています。
またこのBA.2.12.1についても、BA.4やBA.5と同様に、BA.1に感染したことで得られる免疫から回避できる可能性が指摘されています。
基本的な感染対策とワクチン接種を
海外で新たな変異株が拡大しているとしても、私たち一人ひとりにできる感染対策は変わりません。
手洗いや3つの密を避ける、屋内ではマスクを着用する、などの感染対策をこれまで通りしっかりと続けることが重要です。
また、新たな変異株に対しても新型コロナワクチンは有効である可能性が高いことから、ワクチン接種は自身を感染や重症化から守るために引き続き重要です。
ただし、ワクチンだけで感染を防ぎ切ることは困難であり、ワクチン接種後もこれまで通りの基本的な感染対策は続けるようにしましょう。