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津軽線末端区間 豪雨被害からの復旧を断念し廃線 バス・タクシー転換へ

清水要鉄道ライター
三厩駅で発車を待つキハ40 運用車両は令和3年にGV-E400に替わった

令和4(2022)年8月の豪雨により被害を受け、運休が続いている津軽線蟹田~三厩(みんまや)間について、23日、沿線自治体や青森県、JR東日本が鉄道による復旧を断念し、バス・タクシーへの転換に合意した。具体的な廃止時期はまだ決定していないものの、路線廃止となる見通しだ。

蟹田で並ぶ701系(左)とキハ40(右)
蟹田で並ぶ701系(左)とキハ40(右)

津軽線は青森駅と三厩駅を結ぶローカル線で、昭和33(1958)年10月21日に全通した。昭和63(1988)年3月13日、途中の新中小国(しん-なかおぐに)信号場から分岐する海峡線が開業し、これに合わせて青森~新中小国(信)間が交流電化されている。海峡線開業後は本州と北海道を結ぶ大動脈の一部として特急や貨物列車などが多数行き交うようになった一方で、非電化のまま残された末端区間は過疎化等による利用者減が著しい。中小国~三厩間の平均通過人員(輸送密度)は海峡線開業前年の昭和62(1987)年度には415人/日あったのが、被災前年の令和3(2021)年度には97人/日まで減少した。

三厩駅に停車するキハ40と増川岳
三厩駅に停車するキハ40と増川岳

そんな路線にとどめを刺す形になったのが令和4(2022)年8月3日および9日に東北地方を襲った記録的豪雨だ。復旧には最低でも6億円がかかることから、JR東日本は廃線も視野に入れて沿線自治体(外ヶ浜町・今別町・蓬田村・青森市・青森県)と協議を行い、バス・タクシー転換への合意にこぎつけた。今後、具体的な廃止時期や廃止後の交通手段についての協議を行うものとみられる。

今別駅に停車するキハ40
今別駅に停車するキハ40

結果的には災害から復旧できずに廃止という形であったが、輸送密度を見るに、被災しなくても存廃が問題になっていたであろうことは間違いない。沿線の人口は東津軽郡外ヶ浜町が4733人(4月1日統計)、東津軽郡今別町が1979人と両町合わせても1万人に満たない上に、今別市街や三厩市街といった沿線の人口密集地が駅から離れていて使いづらいという問題があるのだ。龍飛岬などの観光地が駅から遠く、観光客の利用もさほど望めないという事情も輸送密度の低さに関係しているだろう。

海峡線の分岐点 新中小国信号場
海峡線の分岐点 新中小国信号場

廃止時期は早ければ来春の令和7(2025)年4月1日になると思われる。旅客列車の運休が続いているのは蟹田~三厩間だが、蟹田~新中小国(信)間は海峡線に繋がっていて貨物列車も走っていることから、実際に廃止となるのは新中小国(信)~三厩間だ。ここで気になるのがJR東日本とJR北海道の営業上の境界となっている中小国駅の存廃である。中小国駅自体は被災からの廃止を免れた区間にあるものの停車する津軽線の列車は廃止となってしまい、もし存続するのであれば「旅客列車が停車しない駅」だけが残る形になってしまうのだ。かといって、廃止してしまえば運賃計算システムを改修する必要が生じ、多額の費用と手間が生じてしまう。この問題がどのような形で落ち着くのかも注目だ。

津軽二股駅に到着するキハ40 右は海峡線津軽今別駅(現:北海道新幹線奥津軽いまべつ駅)
津軽二股駅に到着するキハ40 右は海峡線津軽今別駅(現:北海道新幹線奥津軽いまべつ駅)

また、北海道新幹線奥津軽いまべつ駅に隣接した津軽線津軽二股駅との間で乗り換えることを前提にしている青春18きっぷオプション券にもなんらかの変化があるのは間違いない。オプション券自体の廃止か、それとも値上げして新青森駅発着に変更されるのか。

復旧断念からのバス・タクシー転換という結末を辿ることになってしまった津軽線。今後もその動向から目を離せそうにない。

鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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