難民申請者の権利を守れ、ノルウェー各地でデモ行進 11才の少女が国会前で政府に問いかける
難民申請者の受け入れに対して、公には歓迎しない姿勢が明確になったノルウェー。政府は難民申請者にとって非魅力的な国になるべく、滞在許可証の申請基準などを厳格にするなど、次々と規制を強めている。
ノルウェー北部では、申請許可がおりなかった者がロシアへ強制送還されている。警察官に追われながら、必死に逃走する子持ちの親や妊婦の姿などが報道されており、生々しい映像は視聴者に衝撃を与えた。ロシアを安全だと主張するノルウェー政府の一連の手続きは、国連や人権活動団体などから批判を受けている。
当初の歓迎ムードは、まるで幻だったかのような現状だが、27日はノルウェー各地で難民申請者の権利を求めるデモが開催された。その批判の矛先は、移民・社会統合大臣のシルヴィ・リストハウグ氏(進歩党)と首相(保守党)の現政権に向けられたものだった。
オスロでは、中央駅から参加者が国会議事堂まで行進。昨年、懸命に難民申請者のためにボランティアとして手伝おうとする国内の雰囲気を、移民・社会統合大臣は「善意の暴政」と表現し、「難民申請者のためになにかしたい」と考えていた人々に衝撃を与えた。
「善意の暴政」はその後も否定的な意味でよく使用されるようになったが、それを逆手にとって、「もっと、善意の暴政を!」と人々は声をあげながら行進した。
野党や人権団体の代表が、国会前でスピーチをおこなったが、11才の少女サラ・カーンさんの言葉が特に大きな拍手に包まれていた。
「学校では、互いに優しくするようにと教わりました。ママからは、助けを必要としている人には手を差し伸べるのだと言われました。でも、今はそれが本当かわかりません。私の国、ノルウェーは違うことをしています。私は怒り、落ち込み、困惑しています。こんなに寒い時に、どうして子どもたちを他の場所へ送りこんでいるのですか。普通の暮らしがしたいと思っている人たちを、みんなで助け合えるようになってほしいと、私は願います」。
27日には国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の北ヨーロッパ責任者が現地の視察に訪れ、記者会見でロシアは安全だとする政府の姿勢を批判。しかし、ノルウェーの移民・社会統合大臣は、「すべての国が国連の助言に従っているわけではない」と、時に国連に従わないことに問題はないとの見解を示した(国営放送局)。移民大臣とデモ参加者の間の距離は、縮まる気配をみせない。
Text&Photo:Asaki Abumi